二、パチンコ、公園、日雇い
義仁の唯一の趣味がパチンコである。
仕事が休みの日には、必ずと言っていい程、朝からパチンコ屋に入り浸っていた。
それでも、今までは給料はちゃんと貰っていたので、パチンコで借金をするようなことはなかった。
しかし、義仁の貯金はスズメの涙程度であった。
会社が倒産してから、今までよりも暇な時間が圧倒的に増えた。
義仁は、暇つぶしにと、パチンコ屋に通い詰めた。
そして、義仁がカプセルホテルに泊まるようになって、早一週間が経った。
スズメの涙程度だった貯金は、パチンコ代やカプセルホテル代に消え、あっという間になくなっていた。
その日の夜、義仁は仕方なく、公園で一晩を過ごすことにした。
所持金が、『ネカフェ』代すら払えない程度しかなかったからだ。
しかし、公園は『ネカフェ』以上に最悪だった。
寝やすい静かな場所は、既に先輩ホームレスによって占拠されていたし、やっと見つけた場所は、周囲の騒音が凄まじく、とても眠ることが出来なかったのだ。
それでも、何とか眠れそうな場所を確保したが、義仁が横になるとすぐに、同年代の若者が近づいてきた。
ホームレスを冷やかしに来たのだ。
義仁は、彼らがウザかったが、それでも所持金がなければどこにも行くことが出来ない。
義仁は我慢して、公園で一晩を過ごした。
次の日、義仁はケータイで仕事探しを始めた。
公園ではなく、せめて『ネカフェ』にでも泊まりたい。
そのためにはお金が必要だった。
そして、ようやく見つけた日雇いのアルバイトの仕事は、夕方から明け方まで働いて、手取り六千四百円。
これが義仁の給料だ。
もう、あれこれと言っている場合ではない。義仁は、その日仕事に汗を流した。
そして次の日の朝、仕事が終わった義仁は昨日働いて得た給料を握りしめて、パチンコ屋の前で並んでいた。
わずかな軍資金を元手に、パチンコで儲けるためだ。
そして、開店と同時に店内に入り、パチンコ台をじっくりと見て回った。
そして、台を一つ見定めると、その台でパチンコに興じた。
しかし、昼になる前に、義仁は店から出て来た。
残った所持金は二百円と少ししかなかった。
その頃になると、両親からの電話が、義仁のケータイにちょくちょく入っていた。
両親は、義仁の生活をとても案じていた。
しかし義仁は、農家を嫌だと言って飛び出した手前、むざむざと逃げ帰るのは自分のプライドが許さなかった。
特に父親には、しっぽを巻いて逃げてきた弱い姿を見られたくない、という思いが強かった。
義仁は、電話に一切出ずに、ホームレス生活を続けた。