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明日に繋がる道

二人のシアワセ《後編》

作者: minoarei

二人のシアワセ《中編》から続く物語です。

俺は、白岩涼子に呼び出されて、河川敷で白岩の過去を聞かされて、俺は声をかけようとしたが、色々と言われて、走って何処かへ行ってしまった。俺は、その場に立ち続けたままだった。どのくらいの時間そうしていたのだろうか、自分でも覚えていない。その後どうやって家まで帰ったのか覚えていない。俺は、家に帰って、部屋のベッドで横になった。俺は、そのまま寝てしまっていた。目が覚めたが、構わずにそのまま眠りにつく。翌朝の目覚めは、最悪だった。目は、充血し髪の毛は乱れて服は汗で少し濡れていた。俺は、一階に降りると、そのまま風呂場へ直行した。幸い誰も起きていなかった。俺は軽くシャワーを浴びた。俺は、脱衣所に出て用意しておいた制服に着替える。その後俺は、誰もいないリビングで、ぼーっとしていると、姉の莉沙がリビングに入ってきた。

「おはよう、健一。」

「ああ、おはよう。」

「どうした、目が充血してるけど?」

「ああ……。」

「ちゃんと寝たの?」

「ああ……。」

「健一、大丈夫?」

「ああ……。」

「本当にどうしたの?」

「何でもねぇ。」

「何でもないわけないでしょ。」

「本当に何でもねぇんだよ!」

「怒ることないでしょ。何があったのか言ってみなさい。お姉ちゃんに何でも話してみなさい。」

俺は、溜め息を吐き

「姉さん、その性格だと苦労するでしょ。誰に似たんだか。」

「健一だって人の事は言えないでしょ。」

「それもそうだ。」

俺と莉沙姉は、お互いの顔を見て笑った。莉沙姉は、いつでもどんな時も相手のことを考えて行動する人で、周りの人の憧れだったなぁ。俺も憧れたっけなぁ。俺もいつか莉沙姉みたいになりたいって思ってたなぁ。

莉沙姉なら話しても構わないだろうな。

「莉沙姉、相談に乗ってもらってもいいかな?」

「もちろん、弟のためなら、お姉ちゃんはいつでも相談に乗ってあげるわ。」

「いつでもってのは、困るけど…話すよ。」

俺は、そう言って昨日のことを話した。話しを聞いている間莉沙姉は、何も言わずに聞いてくれていた。話し終えると、莉沙姉は、溜め息を吐き

「健一、良く鈍感って言われない?」

「言われるけど、何で?」

莉沙姉はもう一度溜め息を吐くと、

「健一、お姉ちゃんから言えることは何もないわ。後は、あなた次第ってところね。」

「ちょっ、どういうこと、莉沙姉!」

莉沙姉は、そのまま二階に上がっていった。今考えれば莉沙姉の格好は、制服ではなく、パジャマ姿だった。俺は、莉沙姉と同じように、二階に上がっていった。


その後朝食を済ませて、玄関から出ると、莉沙姉と結香が居た。

「健一、遅いわよ。」

「お兄ちゃん遅いよ。」

どうやら、二人とも俺を待っててくれたらしい。莉沙姉は、山戸川高校で生徒会会長をしているのでいつもなら先に行っているのに、今日は待っててくれたらしい。結香は、俺と同じ中学だから、朝はいつも一緒になる。

「はいはい。二人とも悪いな。さてと、行きますか。」

「ええ。」

「うん。」

俺と結香と莉沙姉は学校へと歩みを進める途中の道で莉沙姉と別れて、結香と川嵜中に向かう。それから、校舎内に入ると、結香と別れて、三年生のフロアに向かう。三年二組の教室に入るといつも通り女子生徒に囲まれるという男子にとっては嬉しい内容だが、俺はそれどころではない。

「おはよう。」

俺がそう言っただけで、何人かの女子生徒は気絶してしまうという事にもう慣れている自分が恐ろしい。

「ところで、白岩はもう来てる?」

「ううん、まだ来てないよ。」

「そうか。」

「まぁ、でもいつもSHRの前には来てるから、そろそろ来ると思うよ。」

「そっか。ありがとな。」

俺は、礼を言って席につくと隣の席の赤城と神山が、俺に近付いてきて、

「今日はちょっと遅かったじゃないかにゃー?山やん。」

「今日は、どないしたんや?山やん。」

「お前らな、その山やんってのはやめろ。」

「いや、呼びやすいんだぜい。」

「そうなんや、ボクも呼びやすいからそう呼んでるんや。」

「……勝手に呼んでくれ。」

因みに、似非関西弁なのは、神山京介だ。一言で言うならば、ロリコンだ。ぜいとかにゃーとか言ってるのは、赤城浩一だ。一言で言うならば、シスコンだ。

「で、山やん、何で遅かったんだにゃー?」

「そうそう、どないしたんや?山やん。」

「遅かった理由ね、莉沙姉と結香と来たからな。」

「山やん、その話しは本当なのかにゃー?」

「ああ。本当だ。」

「ところで、お姉さんと妹さん美人な人かい?」

「うーん。莉沙姉は、美人かなぁ。結香は、可愛いと言ったところかな。」

「羨ましいぜい、山やん。」

「今度ボクに紹介してほしいんやけど?」

「はいはい、その内な。」

朝から他愛もない話しを終えると、SHRの時間になった。しかし、白岩涼子は来ていなかった。担任が言うには、体調不良で休みとのことだ。けれど、俺はそれだけではないと思った。昨日のことを考えると何かあったに違いない。


その日の放課後に俺は、白岩家にやって来ていた。一応今日の授業のノートをコピーしたものを持ってきていた。正確に言うと、コピーではなく授業中に二冊のノートに授業内容を書き写したものだ。一冊は自分の物でもう一冊は、白岩へと渡すためだ。要点を分かりやすく纏めてあるので、使いやすいと思う。俺は、IH(インターホン)を鳴らすと、白岩のお父さんが出てきた。

「……君は確か、山森さんのところの。」

「あっ、はい。山森健一です。」

「ところで、今日はどうしたんだね?」

「実は、今日白岩さんが休んでいたので、今日の授業内容を書き写したノートを持ってきました。」

「すまないね。良ければ、上がっていくかい?」

「い、いえ、今日はこれで。」

「まぁ、良いから遠慮せずに。」

「ちょっ、あの……。」

俺は、結局白岩家に上がることになってしまった。

「何か飲むかい?」

「お構い無く、本当に気を遣わなくて良いので。」

「遠慮しなくて構わないぞ。」

「いえ、本当にお構い無く。」

「あっ、お茶しかないが構わないかい?」

「本当にお構い無く。」

「まぁ、遠慮することはないぞ。はい、どうぞ。」

「用意が速すぎませんか?話しながら淹れてましたよね?」

「ははは………どうかな……。」

「何で明後日の方を向いてるんですか?怪しすぎますよ!」

「まぁ、そんなことは置いといて。」

「話しを逸らした。」

「すまないね、わざわざ、ノートを持ってきてくれて。」

「いえ、俺が好きでやってるので。」

「そうか。ところで、涼子のことをどう思ってるんだね?」

「ゴホッゴホッ、いきなり何ですか!?」

「いやね、昨日涼子がね、泣いて帰ってきたから、君と何かあったのかと思ってね。」

「………っ」

俺は、言葉に詰まってしまった。

「なるほどな、何かあったんだね。」

「……ええ。」

「おそらくだが、涼子の過去のことだろう。」

「………っ」

見事に言い当てられてしまった。

「やはりか。」

「ええ。」

「涼子から話しは聞いていると思うが、私と妻は、本当の親ではないからね。でも、涼子のことは本当の娘のように思ってるよ。」

「………っ」

俺は、何も言えなかった。白岩から聞いていたとはいえ、何も言えなかった。

「その……白岩さんは、どうしてます?」

「涼子は、部屋から一歩も出ようとしないんだ。まるで、人と会うのを避けてるみたいにね。」

「そうですか。」

「どうだい、少し涼子と話していくかい?」

「いえ、今日はこれで失礼します。」

俺は立ち上がり白岩のお父さんに挨拶をして、玄関で靴を履いて白岩家を後にする。


俺が家に帰ると、親父ではなく、莉沙姉が待ち受けていた。

「ただい──」

バシンッ!

俺は何が起きたのか一瞬わからなかった。

「何してたの。こんな遅くまで。遅くなるならなるで、ちゃんと連絡しなさいっていつも言われてるでしょ!」

「ごめん。」

バシンッ!

もう一度頬をぶたれた。今度は、左頬をぶたれていた。さっきは、右頬をぶたれたらしい。

「さっきのは、連絡しなかったことへのビンタ。今のは、姉としてのビンタ。そしてこれは。」

そう言って莉沙姉は、右手を振り上げてビンタすると思い目を瞑ったがいつまでたっても、衝撃は来ない。俺は恐る恐る目を開けると、莉沙姉が泣いていた。俺は、慌てて莉沙姉に近付くと、

ギュッ!

と莉沙姉に抱き締められた。

「り、莉沙姉……。」

「バカ、お姉ちゃんに心配かけて…うっ…ぐっ… 」

「莉沙姉……ごめん……心配かけて。」

莉沙姉は、俺より身長が低いんだが、ある場所の発育が良すぎるために、男ならわかるだろ。ある場所を押し付けられたら色々と問題があるんですが、中々離してくれない莉沙姉を引き離すのは、少し骨がおれる。だから、そっと、莉沙姉の背中に手を回して抱き締めてそっと離す。

「………健一?」

「その、莉沙姉、抱き付いているところ悪いんだけど、色々と問題があるんですが。」

「えっ!?」

莉沙姉は、自分の状況を確認すると、顔を赤らめて、俺から離れる。内心ホッとしたというより、少し残念に思わなくもない。

「ごめん。急に抱き付いたりして。」

「………」

「健一何か言うことはないの?」

「………ただいま。」

「お帰りなさい。顔洗って、着替えてきたら、食卓に来なさい。夕食にするから。」

「わかった。」

俺は、莉沙姉に言われた通り顔を洗って、部屋で着替えて食卓に入る。


夕食を食べ終えると、部屋に戻りパジャマを持ち風呂場に向かう。


風呂から上がり脱衣所でパジャマに着替えると、部屋に入り明かりを消して就寝した。

翌朝は、早めに起きて、朝食を済ませると、いつもよりはやく、家を出ようとすると、

「健一様、今日はお早いですね。」

「うん、まあね。今日は、寄るところがあるからね。」

「そうですか。お気を付けて。」

「じゃあ、行ってくる。」

「行ってらっしゃいませ、健一様。」

俺は、家から、ある場所へと向かう。ある場所とは、白岩の家だ。急ぐこと5分。白岩の家に着いてIH(インターホン)を鳴らすと、白岩のお父さんが出てきて、

「山森君か、おはよう。」

「おはようございます。」

「今日は、どうしたんだい?」

「迎えに来ました。」

「えっ!?」

「白岩涼子さんを、迎えに来ました。」

ガタッ

白岩のお父さんが振り返った方に俺も目を向けると、

「山森君……?」

「白岩、学校行こうぜ。」

俺は、手を差しのべる。けれど、

「……行かない!私はもう学校には、行かない!行ったら、周りの皆が不幸になる。だから、行かない方がいい!」

「上がらせてもらいますよ。」

俺は靴を脱いで白岩家に上がり、白岩涼子の肩を掴み、

「ふざけんなよ!不幸になるからなんだ!今のお前は不幸なんかじゃねえだろ!ちゃんと、皆に支えてもらって、生きてるんだろ!だったら、お前の本当の家族の分まで生きろよ!そうでもなかったら、お前の本当の家族が浮かばれねえよ!それに、一人になったお前を支えてくれたのは、今の家族のおかげだろ!だから、白岩学校行こうぜ!」

「………うっ………ぐっ…………ひっ…………。」

「涼子、着替えてきなさい。」

白岩のお父さんがそう言うと、白岩涼子は、部屋に戻り制服に着替えて出てきた。

「お父さん、行ってきます。」

「行ってらっしゃい、涼子。」

俺と白岩は、学校へと向かう。

その後白岩涼子は、短い期間だけど、野球部のマネージャーとして川嵜中野球部に入部した。学総大で川嵜中は、一回戦から勝ち進み、決勝で完全試合をして、見事に優勝した。その後の県大会でも優勝し全国大会でも優勝して、俺たち三年生は、引退の日を迎えた。

皆は、泣いていた。

「泣くなよ。」

「山森だって泣いてるじゃねえか。」

「……こ、これは目から汗が……。」

「山やん、そのネタは古いぜい。」

「そうやで、山やん素直にならんかい。」

「まぁいい。最後に、部長として、新部長の任命と伝えたいことがある。新部長は、加藤龍。お前が、新部長として皆を引っ張るんだ。」

「いや、でも、部長。」

「俺は、もう部長じゃない。二年生、一年生の皆、お前らと会えて良かった。今度は、お前たちの番だ。大会頑張れよ。俺たちは、今日で野球部としての活動は終わりだ。けど、お前たちの先輩だ。いつでも、頼ってこい。俺は、お前たちと会えて本当に良かった。ありがとう。」


それから、月日は流れて卒業式を迎えた。全132名の俺たち三年生は今日卒業する。

俺は、卒業生代表として

「俺からは、一つだけ言いたいことがあります。夢を持ち、夢を諦めず、夢を追いかけて行くことを忘れず、今日川嵜中学校を卒業します。」

たった一言だけ言って降壇する。


そして、俺は、白岩涼子をあの日の河川敷に呼び出した。

「ごめん、待たせた?」

「いや、全然待ってないよ。」

「そっか。隣座っていい?」

「ああ。」

白岩は、俺の隣に腰を下ろす。

「で、話って何?」

「ああ。」

俺は、深呼吸をして、

「白岩、いや白岩涼子、俺と付き合ってくれませんか。」

「私で良いの?」

「ああ。」

「私と居たら不幸な目に合うかもしれないんだよ。それでも良いの?」

「ああ。」

「私は、山森君のことが私を助けてくれた時から、好きです。私で良ければ、お願いします。」

「白岩………。」

「山森君……。」

俺と白岩は互いに見つめ合い顔を近付けてそっとお互いの唇を重ねる。

俺と白岩は、今日から恋人同士になったのと二人の想いが今日遂に繋がった。

終編或いは新編と呼ぶべきものに続く

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