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 ミアは施設の裏口に回り、そこから入った。

 すると、そこには探していたエディがいた。

 床に座ったエディはミアに背を向け、袋から出したお金をいくつかの小さな束にまとめていた。

「エディ! なにをやってるの!」

 はっとした彼が振り向き、ミアに渡さないとばかりにお金の上に大の字になった。まとめていたお札が床中に広がる。

「この金はおれのだ。ミアのじゃないぞ」

「馬鹿なことはやめて。ねぇ、表にいた人たちは誰?」

「悪魔だよ。悪魔が、因縁付けて金払わないとここ壊すって。昨日も来て、あいつら何時間も粘って。兄さんがなんとかなだめて返したけど、また来るって言ったから」

 どうにもきな臭い話だ。

「うちの両親や、ハイドさんたちはいないの?」

「ミアのお父さんとお母さんは、養子に行く子をその家まで送りに行っていない。うちの親は、親父が階段から落ちて骨を折って、母親が病院につきそってる」

「それは大変だったわね」

 ということは、悪魔たちへの対応はずっとリックが一人で負っているのだろう。

「あの人たち、バザーの品がどうのって言っていたけれど、変な品を売ったわけじゃないんでしょう? だったら、警察隊に連絡したら?」

「したさ。でも、まだ事件が起きたわけじゃないだろうって。悪魔が相手だと、警察隊も動きが鈍いんだよ」

「それで、お金を払って解決しようとしたの? わたしのところに来たのはその為ね」

「ミアのところになんか行ってないだろう? おれが行ったって証拠があるのか?」

 エディの無茶苦茶にミアは考える。

「あのね。私は、お客様から受け取ったお金のお札の端に、赤ペンで印をつけているの。だから、そこにあるお札を一枚渡してくれれば、それが私のところにあったかどうか、すぐにわかるのよ」

「うそだ!」

「ほんとよ。心配なら見てみたら?」

 エディが慌てて自分の体の下にある札を確認した。けれど、彼はすぐに、自分がしたその行動こそが自分の噓を認めることだったと気が付いたようで、顔を赤くした。

 ミアはしゃがんで、お札を拾い出した。

「おい、ミア、こんなに稼いでどうするんだ。少しくらい、もらってもいいだろう?」

「ダメよ。趣味や遊びのために稼いだお金じゃないのよ。この施設のために必要なお金よ。それに、これは、わたしと仕事のパートナーが力を合わせて稼いだお金なの。大切なのよ」

「仕事? 偉そうに、ただ金を貸しているだけだろう? そんなの仕事とは言えないって、みんな言ってるぞ」

 こればかりは、どこの世界でもかわらないなと、苦笑する。

「誰がどう言おうがかまわないわ。それに、そんなに軽蔑するのなら、なおさら、そのお金を使うなんておかしいでしょう?」

「違う。使うんじゃなくて、使ってやるんだよ。そんな穢れた金は、悪魔に払うのが一番なんだ」

 ミアはエディの言葉のチョイスに首を傾げる。どうも、エディらしくない。これが彼の考えなのだろうか?

「……ねぇ。それ、誰が言ってるの?」

 ミアがそう尋ねたとき、部屋の入口に立つ女性がいた。

 女性はミアと目が合うと、表情を強張らせた。

 リックの妻、イレインだ。


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