③
ようやく、施設に降り立ったミアはそこにいる五人の男性に目を細めた。
彼らの羽は、黒?
つまり、悪魔?
珍しいなと思いつつ、交流が進んでいる現在、誰がどこにいようがとがめられない。
しかし、ミアは彼らの羽の色が妙に引っ掛かった。
たしかに、黒くはあるけれど、いつもジャスティンの羽に見慣れているミアにはどこか不自然に思えたのだ。
男性たちは、施設の服を着た職員――リックを囲んで大声を出している。
「どうしてくれるんだよ。あんたたちのバザーで買った石鹸で顔を洗ったら、顔に赤い湿疹ができたんだよ」
「石鹸だけじゃないぞ。クリームも酷いものだ。かゆくて、かきむしって血が出たぞ」
「責任者出せよ。噂によると、きたない金で儲けてるって話だぞ。ほら、出せ!」
「そうだ、この責任を取れ! 金払え!」
「なんなら、この施設、壊してもいいんだぞ!」
近くにいる人たちも、悪魔相手には不用意に手出しはできないと遠巻きに様子を伺っている。
天使と悪魔の友好は結ばれたけれど、実際のところはこうだ。
天使は悪魔を恐れ嫌っている。
悪魔が天使をどう見ているのかわからないけれど、多かれ少なかれ同じような感情はあるのだろうと想像できる。
なんだか、変だ。
こんな考え、不自由だ。