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君が生きやすい場所①

「うそでしょう……」

 キッチンから戻ったミアは、紅茶を載せたトレイを持ったまま立ち尽くす。

 部屋の窓は全開。

 テーブルに置いてあったはずのお金は、紙袋ごと消えていた。

 ――エディだ!

 突然、遊びに来た年下のお幼馴染みの顔を浮かべ、ミアは混乱する。

 しかし、すぐに思い直し、壁掛け時計を確認した。

 午前十時二十七分。

 ジャスティンにお金を支払う期限まで、あと 十三時間三十三分。





 ミアは一も二もなく、ロザリンのもとへと駆け込んだ。

 ロザリンは、最近ミアとの間で流行っている小顔体操をしていたようで、ヘアバンドで前髪をあげていた。

 顔の筋肉をあれこれ動かすのだが「百年の恋も冷める」とロザリンが言うように、かなり変な顔になる。

「つまり、エディって男の子が、わたしとあなたの努力の結晶をネコババしたのね」

「ネコ……。まぁ、そうだと思う」

「彼は、あなたの幼馴染のリックの弟なのね」

 ミアは頷く。リックには年の離れた弟と妹がいる。その弟がエディだ。

「エディの年は19歳よ。仕事が休みだから遊びに来たって言ったんだけど」

「彼、あなたが貸金をしているのは知ってるの?」

「この間、母から手紙が来たの。私、ずっと自分がどんな仕事をしているか伏せていたんだけれど、つい書いてしまって」

 ミアなりに貸金の仕事への気持ちの整理がついたので、母にも報せたのだ。

「お母さま、それを言いふらしたのかしら。不用心ね」

「そうだとしても、悪気はないと思うの」

「これだから、世間知らずの箱入り娘は困るのよ。あのね、迷惑行為をする人のほとんどが『悪気はなかった』って言うものなの」

 ロザリンは大きな体を揺らし「わたしもふくめてね」と、ウインクしてきた。

 ロザリンはチャーミングだ。

 ミアは、ロザリンのおおらかさに憧れる。

 ロザリンとは年が離れているけれど、彼女の存在は仕事のパートナーだけでなく、ミアにとってすでに家族に近い、大切な友人となっていた。

 ロザリンが水晶玉に手をかざす。

 もやもやとした黒い影が徐々に鮮明になる。

 そして、見えてきた先は――。

「わたしの家だわ!」

「ミアの家?」

「家というか、両親が運営している施設よ」

 これは、どういうことだろう?

 お金を持って逃げた先が、よりによってそこ?

 ミアとロザリンは顔を見合わせた。



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