第五話:異世界の景色
モリスさんと別れて早数時間。
森の外までの道中は何事もなく、旅の初日は順調に進んでいた。
私は胸下で揺れる布の裾に、そっと触れた。
これは、モリスさんが編んでくれたケープ。
『寒くないように』と作ってくれたのだ。
(モリスさん、本当に……ありがとう)
胸の奥で込み上げる感謝の気持ちを呟きながら前を見据える。
——森の出口が見えてきた。
途中、森に生えている植物について、フィンが楽しそうに説明してくれた。
そうして町で売れそうな薬草を拾ったり、世間話に花を咲かせたりして歩いていたら、ここまで来るのはあっという間だった。
「そとだー!」
「あっ!フィン!」
「フィン!…音凪!?」
目の前の光に駆け出すフィンを、私は慌てて追いかける。
さらにその後ろから、透真も遅れてついてくる。
側から見ればまるで追いかけっこをしているかのように、三人で森の外へと向かう。
「フィンったら、急に走ったら…」
森の出口で立ち止まったフィンに、危ないと注意しようとしたとき——言葉を失った。
サァアア……。
柔らかな風が、頬を撫でた。
瞳に映る景色——
そこには、青々と澄み渡る大きな空が広がっていた。
その下には、黄金色の高原がどこまでも続いている。
(きれい……)
(この世界も、丸いんだ……)
絶景に息をのむ。——そして、元の世界との共通点を見つけて、心がほどけた。
今まで、この世界には不安ばかりが募っていた。
けれど、ここに来て初めて、
異世界への期待で胸が高鳴るのを感じた。
「あっ」
周囲を見回すと、下の方にはこれから向かう場所であろう町が見えて、
森が山の上に存在していることに気がついた。
(標高が高いから、涼しかったんだ……)
「ネナ!トーマ! はやく行こう〜」
私と透真の手を引っ張って先を急ぐフィンに、
くすりと笑いながら「うん、行こう」と答えた。
***
三人で並んで歩きながら、ふと疑問に思う。
こんなに視界が開けているのに、
相変わらず他の生物の姿が見えないのはどうしてだろう。
そんな事を考えていると、
見計らったかのように黒い影が地面から飛び出してきた。
「わっ」
小型犬くらいのサイズの動物。
モグラみたいな丸い胴体に、不釣り合いな一本角。短い二本脚で、二足歩行している。
長い鼻をぴくぴくと動かして、鋭い爪が伸びる手を高く上げた。
「ネナ!トーマ! 魔物だよ!」
フィンのその言葉を合図に、すかさず携えていた傘をその魔物に向かって振り下ろした。
——シュッ!
「***!!」
小さい体から、血飛沫が上がる。
傘によって真っ二つに切られた魔物。
初めはピクピクと動いていたけど、しばらくすると全く動かなくなった。
最初の魔物とは違って血が流れ、死体がそのまま残っている。
その姿は、この黄金の大地には異質だった。
「……」
前の私なら、
この姿を見て、気分が悪くなっていたかもしれない。
ふっと、昨晩のことを思い出す。
私は森を出る前に、
モリスさんにとある魔法をかけてもらっていた。
『今の君には耐えられないかもしれない…』
そう言ってかけてもらったのは、精神防衛の魔法。
視覚や匂いで受ける精神的な負担を軽くして、私の成長に合わせて少しずつ解けていくらしい。
(……どう思えば、いいんだろう……)
都合のいい魔法にありがたい気持ちと、
解けていくことの意味に、胸がざわついた。
「ネナすごーい!」
大はしゃぎするフィンに苦笑いをしながら、傘をモリスさんが作ってくれたホルダーに戻す。
こんなことには慣れたくないなと、
ぽつり心の中で本音が漏れた。
「練習の成果が出たな」
微笑みながら私の顔を覗き込んでくる透真。
「お疲れさん」と言いながら私の頭を撫でる手の温もりに、ほっと息がこぼれる。
……そう。
旅に出ると決めたあの日の翌日から、
私はこの傘を少しでも"分かるため"に、色々試していた。
この傘にできる事を探すことはもちろん、
素振りをして、傘を振るう体づくりも。
時には、モリスさんに手伝ってもらって実践練習もした。
モリスさんが放つ水球をいなしたり斬ったり……。
それらの練習を重ねて、段々と体の動かし方も分かってきた。
それに……
魔物の死体をツンツンと小枝で突いてるフィンと、
そんなフィンの脇に手を入れて持ち上げる透真の姿を見る。
そして、
ホルダーに掛かっている傘に、そっと触れた。
——この傘の、別の使い道も分かった。
その能力が発覚したのは、本当に偶然だった。
使う機会がないことを祈るばかりだけど、いざという時は——。
私は傘を見つめ、目を細めた。
(その時がきたら、よろしくね)
傘の柄を指先で撫でながら、心の中でそう語りかける。
(さて……)
ゆっくりと顔を上げて前を向く。
「フィン。小枝、危ないよ」
私はひとり気持ちを切り替えて、
魔物の死体を前に攻防する二人の元へと歩いて行った。
***
その後も時折現れる魔物を倒しながら、私たちは丘を下って行った。
そうしてしばらく歩き続けていると、
段々と他の生き物にも遭遇するようになってきた。
元の世界と同じようなウサギや馬。
羊を見つけた時には、フィンがお喋りを始めちゃって……。
"やっぱりヒツジの獣人なんだなぁ"と感心しながら、そっと笑みをこぼした。
やがて、町の活気づいた音が風に乗って聞こえてきたり、
旅人や猟師さんとすれ違うことも増えてくると、
この世界の……フィンたち以外の人の存在を、実感し始めてきた。
「もうすぐだよ!」
にこにこと笑顔のフィンが、
私の手を握りながら、町まであと少しだと教えてくれる。
(もう直ぐで着くんだ…)
胸が高鳴る。
緊張なのか、期待なのか……自分でもよく分からない。
「……わくわくしてる?」
横にいる透真が、何気ない調子で声を掛けてくる。
「……うん。少しだけ」
口元を緩めながら、そう答えた。
透真は一瞬だけ目を見張った。
けれど、すぐに笑みを浮かべて、
すぅっと町の方をまっすぐ見つめた。
***
町に入るにはまず、門を通らなくてはならない。
高くそびえ立つ石造りの門。
その両脇には屈強な門番が立ち、
行き交う人々は一人ひとり足を止めて、身分証を差し出していた。
商人らしき人々の荷車には、荷を改める検査も入っているらしい。
門の前にはわずか数組だけど、列ができていた。
「透真、どうしよう……」
当然、私たちは身分証なんて持っていない。
町に入れないかも、なんて透真とふたり顔を見合わせて困っていると、
「ふっふーん」
少し前を歩いていたフィンが、
得意げに鼻を鳴らして振り返った。
「おふたりさん、ぼくにまかせなさい」
にやっと笑って門番に駆け寄るフィン。
(! また急に駆け出して……!)
私は慌てて、その小さな背中を追った。
「おじちゃん、こんにちは!」
眉間に皺を寄せ、険しい表情を浮かべる門番さんに元気よく挨拶をするフィン。
門番さんは鋭い目つきをフィンに向けて——
フィンを見るや否や、その険しい眉がゆるんだ。
「おおっ!」
相手がフィンだと分かり、目を見開いて声を上げた門番さんは表情を明るくする。
「フィンじゃないか!久しぶりだなあ」
フィンの頭を豪快にわしゃわしゃと撫でるその人は、どうやらフィンと顔見知りらしい。
「今日は一人でどうしたんだ?」
門番さんはフィンの周りをきょろきょろと見ながら問いかける。
きっと、モリスさんやフィンのお兄さんの姿を探したのだろう。
「ひとりじゃないよっ! 今日からネナとトーマとぼうけんなの!」
そう胸を張って後ろを向いたフィン。
門番さんはフィンの視線の先を追う。
「……んん?」
私たちの存在に気づいた門番さんは、表情を再び険しくさせた。
怪しまれているのが、全身にひしひしと伝わってくる。
フィンもそれに気づいたらしい。
あわあわとしながら、リュックからある物を取り出す。
「おじちゃん、これ! おじいちゃんから!」
フィンの手には、折り畳まれた樹皮紙が握られている。
門番さんはその樹皮紙を開いて中をじっと見ると、「ああ、そういうことかい」と呟いた。
「お二人さん、睨んじまってすまんね」
謝る門番さんに「いえ…」と返す。
あの状況なら、睨まれても文句は言えない。
「ようこそ、ラウハの町へ。
えーっと……おまえさんがネナで、あんたがトーマかい?」
紙に書かれた内容と見合わせながら確認する門番さんに「はい」と頷く。
「おーけー、おーけー。…はい、これ」
甲冑の隙間から紙とペンを取り出してササっと何かを書いたかと思えば、それを私たち二人にそれぞれ渡してくる。
これは何だろうと首を傾げていると、
「それを教会かギルドに持って行けば、身分証を発行してくれるから」
そう説明してくれた門番さんはフィンの頭をもう一度撫でると、
「んじゃ、楽しんでいってくれよ」と言って、私たちを門の中へと通してくれた。
「おじちゃん、またねー!」
「ありがとうございました」
大きく手を振るフィンと、頭をぺこりと下げる私と透真。
門番さんは私たちにニカっと笑って、そのまま門番のお仕事に戻った。
(よかった……)
モリスさんとフィンのお陰で、
何事もなく町に入れたことに安堵する。
門番さんもいい人だったと、町に対する期待感がより高まるのを感じた。
(うわぁ……)
前を見渡すと、整備された舗装やレンガ造りの建物、
行き交う大勢の人々が目に飛び込んできた。
町を歩く人々は人間だけでなく、
フィンと同じように耳や角を生やした獣人であろう人々もいて、
この世界の多様性に感動する。
風に運ばれてくる香りは食べ物のいい匂いがして、
その香ばしい匂いに、どんな料理の香りなんだろうと想像する。
(お腹、すいたなぁ……)
ぐううう。
うねるような音。
横でフィンがお腹を抑えた。
「おなか、すいちゃったぁ」
えへへと笑うフィンに、
フィンも自分と同じ気持ちだったんだと、自然と笑みがこぼれる。
「ずっと歩きっぱなしだったもんなぁ」
「先にフィンの兄ちゃんのいるご飯屋さんに行こうか」
透真がフィンの手を引いて、
フィンも「うん!」と笑って大きく頷く。
フィンの反対側の手を握る私も一緒に引かれるようにして、
次の目的地へと足を踏み出した。
周りからは商人の呼び声や大道芸人に贈る拍手の音、
吟遊詩人の奏でる楽器の音が聞こえてくる。
私はお祭りのような賑やかさに胸を躍らせながら、
人混みへと姿を消していった——。
***
「えーーー!!おにいちゃん、いないの〜?!」
そう叫ぶのは、カウンターに手を伸ばして、この店の女主人を見上げるフィン。
フィンのお兄ちゃんがいるというご飯屋さんに着いて中に入ると、
フィンはトテトテとカウンターに駆け寄り、
「おじちゃん、おばちゃん、こんにちは!」と声を掛けた。
その声に、目の前にいた五十代くらいの女性は「おや、フィンじゃないかい」と驚くと、
続けて、「今日の明け方にテオが帰って行ったってのに、どうしたんだい?」と尋ねた。
その言葉にショックを受けたフィンの反応が、先ほどの叫び声だった。
「かえっちゃったんだあ……」
大きな耳を垂らして、しょぼんと項垂れるフィン。
そんなフィンを励ますように、肩をポン、ポンと叩いた。
「あら、初めて見る顔だね」
私たちの存在に気付いた女性が「どちらさんだい?」と声を掛けた。
「はじめまして。フィンとモリスさんにお世話になってます、音凪と申します」
「透真です」
軽くお辞儀をして自己紹介をする。
さっきの門番さんには最初、疑いの目を向けられてしまったけど、大丈夫かな……。
恐る恐る視線をちらりと上に向けると、
「あー!そういうことね」
女性はそう声を上げて、カラッと笑った。
門番さんと違って、この女性はモリスさんからの手紙を見ていない。
それなのに、すべてを察したかのように頷いている。
どうやらここの人は、モリスさんたちの役割を知っているようだ。
「大変だったろう。 ゆっくりご飯でも食べていきなさい」
そう言ってテーブル席に案内してくれる女性。
私は「ありがとうございます」とお礼を言いながら、その後を着いていった。
「そういえば、あたしたちの紹介をしていなかったね。 あたしはラミア」
「そしてあっちにいるのが、旦那のデミドア」
後ろ手に、親指で厨房を指しながら紹介するラミアさん。
ラミアさんに紹介されたデミドアさんは「…おう」と小さく応えると、
すぐに調理に戻って行った。
(寡黙な人みたい)
「おばちゃん、ぼくいつもの〜」
席に着いて注文を始めたフィンに、
待たせちゃいけないと私も慌てて席に着く。
すばやくメニュー表に目を滑らせていると、
パッと目に入ってきたとある料理名に目を奪われた。
(こんなところで、出会えるなんて……!)
私はうれしさのあまり、自然と頬がほどけるのを感じた。
かすかに震える指先をそっとその料理名に添えて、ゆっくりと口を開いた。
「この——
『サラマンダーも火を噴く 激辛スープパスタ』を、ひとつお願いします」
フィンとラミアさんが、ギョッとした目で私を見つめてくる。
「俺はこのカツ丼でお願いします」
いつものことだと、二人の様子なんて気にも留めず、呑気に注文をする透真。
ラミアさんは驚きつつも、そんな透真の注文をちゃんとメモしている。
(ラミアさん……プロだぁ)
ラミアさんの動きに、
ぼーっと感心していると、
「ネナ……ほんとうに、これたべるの?」
「用意しているあたしが言うのも何だが、あまりおすすめはしないよ?」
"やめときなよ"と止める二人に、
「大丈夫です」と笑顔で答える。
「そこまで言うなら…」
ラミアさんは渋々といった様子で、注文内容をデミドアさんに伝えに厨房へと向かった。
「ネナ〜!ほんとうに、だいじょうぶ?」
目を潤ませ心配そうに見上げてくるフィンに笑いかける。
「大丈夫だよ」
「辛いの、大好きなの。 ふふっ」
期待で胸を弾ませ頬を綻ばせている私とは対極的に、
フィンは信じられないという顔をして固まってしまった。
透真がフィンの頬をツンツンするがぴくりともしない。
しばらく待っていると、
まずはフィンのハンバーグと、透真のカツ丼が運ばれてきた。
ハンバーグはじゅわあっと肉汁が滲み出ていて、
デミグラスの酸味の効いた香りが鼻をくすぐる。
カツ丼は香ばしい揚げ物の匂いと、
艶やかな黄身と白身が食欲をそそる。
おいしそうな料理の前では、
フィンも固まり続けてはいられない。
目の前に置かれたハンバーグに目を輝かせて、
垂れそうになる涎を、ごくりと飲み込む音がした。
「いただきます」と言ってさっさと食べはじめた透真。
そんな透真と私の顔を、ブンブンと交互に見ながら様子を窺うフィン。
「先に食べていいよ」
私がフィンにそう言うと、横から透真が、
「むしろ先に食べないと、食べれなくなるぞ」
真剣な面持ちでフィンに助言する。
フィンは慌てて「い、いただきます!」と言って、
フォークをハンバーグに突き刺した。
ぱくっ!
「ん〜!」
目を輝かせて、感嘆の声を上げるフィン。
そのままおいしそうに、ハンバーグをパクパクと食べはじめた。
二人が食べ終わる頃、
ラミアさんが神妙な面持ちで、テーブルへとやって来た。
「…まずは、これを着けるんだ」
手渡されたのは三人分のゴーグルと、二人分のマスク。
(どのくらい辛いんだろう)
大袈裟なほどの対策に、辛さへの期待が高まって口元がほどけていく。
そんな私とは裏腹に、フィンと透真の顔は真っ青になっていった。
「音凪……いくらお前でも、さすがにやばいんじゃ……」
「? 透真まで、どうしたの?」
うきうきとゴーグルを着けて準備万端な私。
透真は"これ以上何も言うまい…"と、
自身もゴーグルとマスクを装着する。
フィンは受け取って早々に装着していた。
三人が装備したことを確認して、
ラミアさんは厨房へと戻る。
少しして、私たちと同じくゴーグルとマスクを装着したラミアさんが、
ついに私の料理を運んできてくれた。
「……無理はするんじゃないよ」
言葉に続くように、コトンと置かれたスープパスタ。
その見た目は、料理名に劣らない"赤"だった。
マグマのように真っ赤に染まるスープはまさに原色の赤。
鼻を刺激する強烈な辛さに、胸がとくとくと鳴っているのを感じる。
私はそっと、両手を合わせた。
「いただきます」
(まずはスープを…)
ふうふうと熱を冷ましながら、
煮えたぎるような真っ赤なスープをすくったスプーンを口に運ぶ。
その様子を、透真とフィンが戦々恐々と見ている。
「はわわ……」
「……」
スプーンが口に触れる。
誰かがごくりと、息を呑む音がした。
静かにスプーンを傾ける。
「——!!」
スープを口に入れた瞬間の、衝撃。
「音凪!吐き出せ!」
「ネナ〜!」
固まった私に、透真とフィンが椅子から立ち上がって焦り出す。けれど、
ごっくん。
「おいしい……!」
すぐに目を輝かせてパクパクと食べはじめた私に、呆然とする二人。
そんな二人はゆっくりと顔を見合わせた後、心配して損したと言わんばかりの顔で、力なく椅子に沈んでいった——。
***
「ご馳走様でした」
激辛スープパスタを食べ終えて、そっと手を合わせた。
目の前に置かれたお皿には、ひとすくい分のスープも残っていない。
(スープまで飲みきっちゃった)
まだ感じる口の中の余韻に、そっと目を細めた。
「あれを食べきっちまうなんてねぇ」
ラミアさんが感心しながら笑顔で呟く。
厨房から覗くデミドアさんも、心なしかうれしそう。
「おいしかったです」
「ネナ……あれ、ほんとうにすごいんだよ?」
眉を垂らすフィンに、私は首を傾げた。
横で透真とラミアさんが苦笑いをしている。
「ところで、今夜はどこに泊まるんだい?」
ふと、ラミアさんが尋ねた。
「これから探そうかと」
透真がそう答えるとラミアさんは、
「それならうちに泊まってきな!」と、
この建物の二階を指差した。
「ちょうどテオが家に戻ったからね。部屋は足りる」
「それなら宿泊代を……」
私がそう言いながら、モリスさんに頂いた旅資金を取り出そうとすると、
「いいっていいって!良いもん見せてもらったお礼さ」
ラミアさんは豪快に笑って、
ポケットに入れようとした私の手を止めた。
そんなラミアさんにフィンは飛びついて、
「おばちゃんたちの家にお泊まり、やった〜!」とはしゃいでいる。
"良いもん"が何かは分からないけど、
ここまで言ってくれていることだし、旅の資金も節約できる。
フィンもここに泊まれることを喜んでいて、これ以上断る理由はなかった。
「ありがとうございます」
私はラミアさんとデミドアさんに深く頭を下げた。
「ゆっくりしていきな!」
にかっと笑うラミアさん。
デミドアさんもわずかに口端を上げて、小さく頷いた。
(あたたかいなぁ……)
二人の笑顔につられて、気づけば私も頬が緩んでいた。
そうして、思いがけず今日の宿泊先も決まり、
私たちは旅の初日を、ここで締めくくることになった。
第五話
はじまりの町-異世界の景色- 完




