閑話①:見守る者
※四話直後のこと。
森の中へと入っていく三人の背を、モリスは静かに見送っていた。
彼らの姿が木々の影に完全に消えたのを確かめると、その灰色の瞳をスッと細めた。
「声を掛けなくて良かったのかい……テオ」
その問いかけに応えるように、草むらが小さく揺れ、空気がわずかに動いた。
姿を現したのは、モリスのもう一人の孫——テオドールだった。
「じいちゃん、やっぱり気づいてたんだ」
フィンと同じアイボリーの髪を後ろで一つに束ねる、14歳くらいの少年。
彼の頭には木の葉が付いており、モリスはそれを摘みながら「おかえり」と微笑んだ。
「ただいま」
モリスの手元にある木の葉を見て、少し恥ずかしそうに頬を掻くテオドール。
「それで、どうして葉っぱまで付けて隠れていたんだい?」
「じいちゃん…」と恨めしそうに睨みつけるテオドールに対して、モリスは茶目っ気を目尻に滲ませている。
全く意に返さないモリスにテオドールは溜息をつくと、渋々と口を開いた。
「あの場面でヘラヘラしながら"はじめまして〜"って出て行けるわけないだろ」
「それに……」と続けたテオドールは、三人が消えていった森の奥を見つめる。
「あのふたりとは二度と会わないし、フィンは春になれば戻ってくる」
「そうだろ?じいちゃん」と再びモリスを見て問いかけるテオドールの瞳は、それを確信しているようだ。
テオドールの問いかけに、モリスもまた森の方を見つめる。
「さて、それはどうかな……」
濁すだけで何も言わないモリスに、テオドールは目を細めながら「ふぅん?」と肩を竦めると、それ以上は何も聞かずに小屋へと足を進めた。
揺れる木漏れ日の向こう、
もう見えなくなった三人の道筋へ向かって——
(……私は、君たちを信じているよ)
閑話①
見守る者 完




