#9 賭けと魔道券売機
「よし。じゃあ次は……賭け屋の準備だ。町の連中、絶対乗ってくるぞ」
兄の言葉に、僕は思わず振り返った。
「賭けもするの!?」
マーカスはニヤリと笑った。
「金が動けば、客の熱も上がる。声も出る。町も潤う。商売の基本だろ?」
まさか兄の口から“賭け”という言葉が出るとは思っていなかった。
いずれ僕が思いつきみたいな感じで提案しようと思ってたのに兄が先に思いついてしまうとは……。
でも、それなら――
「じゃあ、賭けの仕組みもちゃんと作らないとね。たとえば、誰が勝つかを予想して、券を買っておく。レースが終わったら、当たった人に払い戻す。そういう感じ」
「……なるほど。わかりやすいし、誰でも参加できるな」
弟のムウノスが、観覧席の調整をしていた手を止めて、こちらを見た。
「それ、魔道具でできるかも」
「え?」
「魔道券売機。魔力を使って、選手の色を選んで、魔力で記録して、結果が出たら自動で払い戻す。魔道具屋の工房にある記録石と転送盤を組み合わせれば、できると思う」
「ムウ、それ作れるの?」
「試してみる。面白そうだし、魔道具の応用にもなる」
それを聞いて僕は少し調子に乗ってしまった。
「じゃあ、賭け方もいくつか種類があるといいかも。たとえば、単勝――1着を当てるやつ。2連単――1着と2着を順番通りに当てるやつ。3連単――1着から3着まで全部順番通りに当てるやつ」
「……そんなに種類あるの?」
「うん、まあ……思いつきだけどね。いろんな賭け方があれば、初心者も玄人も楽しめると思う」
ムウノスはすぐに思案顔になり、魔力で空中に図形を描き始めた。
「色選択と順位記録を組み合わせれば、複数の賭け方式にも対応できる。魔道券売機の操作盤を分岐式にすれば、選択肢も増やせるし……他にも買い方を増やせる。」
マーカスが腕を組んで頷いた。
「よし。じゃあ、賭け屋は魔道券売機でやるとして……イベントとしてどう見せるかだな。屋台、音楽、実況……盛り上げる要素は全部詰め込むぞ」
音楽に実況!?すごくないか?兄は天才か?
もしかしたらこの世界でファンファーレを聴けるかもしれない。
僕は湖面を見渡した。
楕円の魔道障壁、浮遊する観覧席、ぷかぷかと浮かぶオルカヌーたち。
「これ、ほんとに始まるんだな……」
兄と弟がそれぞれの得意分野で動き出している。
僕も、もっと面白く、もっと熱くなるように、考えなきゃ。
次もそう簡単に何でもかんでもうまくいくかな?




