#間話 輝く男祭
領地対抗レースの翌朝。
ミネスはマーカスに呼ばれてる湖畔へと足を運んでいた。
「祭り二日目って言ってたけど……」
昨日の激戦が嘘のように、湖畔はのどかな空気に包まれていた。
屋台が並び、楽団が軽快な音楽を奏で、子どもたちが魔導風船を追いかけて走っている。
だが――
湖の中央に浮かぶ特設ステージに目を向けた瞬間、ミネスは絶句した。
水面に並ぶ六艇のオルカヌー。
その上に立つのは、筋骨隆々の男たち。
全員が上半身裸で、ポーズを決めている。
「さあ! 本日のメインイベント! 男祭り、開幕です!!」
「テーマは『一番輝く男』! オルカヌーの上で、己の肉体と魂をぶつけ合え!!」
実況が叫ぶ。
観客席が沸く。
男たちは次々とポーズを変え、筋肉を誇示する。
「筋肉、詠唱してるー!」
「ポージング、神話の一説!」
「その腹筋、城壁かーい!」
「仕上がってるよー! 仕上がってるよー!」
「ナイスバルク!!」
「その広背筋、オルカヌー!!」
ミネスは混乱した。
まだ熱が?現実感がない。
これ、風邪引いた時に見る悪夢だよ。
「特別審査員はこちら! 昨日のレースで奮闘した青の騎手、ミネス選手です!!」
「は?」
気づけば、ステージ脇に座らされていた。
手には採点用の魔導札。
周囲からは「よろしくお願いします!」と笑顔で声をかけられる。
(……なんで私が……)
男たちは次々とポーズを決める。
片足立ちで空を指す者。
オルカヌーの背で逆立ちする者。
魔力で筋肉を光らせる者。
「見てくださいこの輝き! まさに湖の太陽!」
「筋肉は裏切らない! 俺の魂を見ろ!」
観客の合いの手は止まらない。
「その上腕、岩かーい!」
「三頭筋、爆発してるー!」
「ポージング、芸術かーい!」
「ナイスカット!!」
「その大胸筋、盾かーい!!」
ミネスは、魔導札を震える手で掲げた。
「アッはい……すごいですね……」
(これは夢だ。絶対に夢だ。熱のせいだ。現実じゃない)
男たちは歓声に包まれ、最後は全員でポーズを決めてフィナーレ。
「男祭り、優勝は――全員!!」
観客が拍手する中、ミネスはそっと席を立った。
「帰ろう。」
湖畔の道を歩きながら、ミネスは空を見上げた。
「ナディアの走りは……夢じゃなかったよね……?」
そう呟きながら、ミネスは無事に家へと帰っていった。




