表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法生物で水上レース!〜異世界でボートレース始めました〜  作者: 吉良 鈴
緑の風、黄金の駆け引き

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/35

#8 領地対抗レース・後編

水面を切り裂くように、後方から迫る一艇――

6枠・緑のオルカヌーが、静かに、しかし確実に加速していた。


「緑の騎手が動いた!? 後方から一気に加速しています!」


実況の声が震える。

観客席がざわめく。敵騎手たちが顔をしかめる。


ミネスは、視界の端にその姿を捉えた。

ハニーブロンドの髪が風に舞い、緑のオルカヌーの背に、静かに座る少女――ナディア。


「えっ……ナディア……!?」


驚きで息を呑む。

彼女は確かに参戦していた。だが、スタート展示でも周回展示でも、目立つ動きはなかった。

まるで、ただ湖を漂っているだけのように。


(いつの間に……こんな位置に……?)


他の騎手が派手に動く中、ナディアは冷静にコースを見極め、最短距離でターンを決めていた。その動きは、まるで湖と一体化しているかのようだった。


「風と一体になったような……まさか……! 波を裂いている!?」


ミネスの目が釘付けになる。

罠の魔力干渉が効かない。水流の乱れも、彼女には届かない。

(罠の外側を……完璧に読んでる……!)


第3ターンマーク。

白が逃げる。黒と赤が競り合う。黄が内を塞ぐ。緑が押し返される。


ナディアは、外から一気に巻いた。

水面を裂くような加速。だが、その動きは荒々しくない。

穏やかで、華麗で、そして――容赦がない。


「ナディアが来た! 赤を抜いた! 黒を抜いた! 黄をかわした! 白に並んだ!」


敵騎手たちが焦る。

魔導ギルドの騎手が、無理な妨害を仕掛ける。

魔力の波をぶつけ、進路を塞ごうとする。


だが――


ナディアは、風で舞いあがるように、それを軽くかわした。

水面を滑るように、妨害の波を抜け、最後の直線へ。

(魔法で妨害? そんなもの……)

ナディアの表情は変わらない。

魔法は貴族の嗜み。彼女にとって、魔力の流れを読むことも、干渉をいなすことも、日常の礼儀作法のようなものだった。


しかし、

「競技中に魔法を使うなんて、品がありませんわね」


その声は聞こえないはずなのに、敵騎手たちはなぜか背筋を凍らせる。


「ナディア、最後の直線! 白と並んだ! いや、抜いた! 抜いたぁぁぁ!!」

ゴールライン。

緑のオルカヌーが、一番に駆け抜ける。


「勝者は緑! ナディアと緑のオルカヌーが、快進撃で王者に輝きましたァァァ!!」


湖畔が歓声に包まれる。

観客がどよめき、実況が叫び、敵騎手たちは言葉を失う。


ミネスも、ただ呆然とその背を見つめていた。

ナディアは、静かに振り返り、微笑んだ。


「競艇とは、こういうものですわ。そうでしょう?」


その声は、風のように穏やかで、波のように揺るぎなかった。





湖畔では勝者を讃える音楽と歓声が響いていた。

屋台の灯りが揺れ、魔導楽団の演奏が空気を震わせる。

だが、その華やかさから少し離れた、静かな木陰の一角――


敗れた騎手たちが、顔をしかめて集まっていた。

「くそっ……あんな走り、聞いてないぞ……!」

「罠は完璧だったはずだ……なんで効かなかった……!」

悔しさを滲ませる彼らの前に、貴族風の男が現れる。

金刺繍のローブを纏い、冷たい目で騎手たちを見下ろす。

「……お前らは、もう用済みだ」


その言葉に、騎手たちは顔を上げる。

「待ってください! もう一度チャンスを……!」

「次は必ず……!」

「次などない。妨害しても勝てないような無能に、何を期待しろというのだ」


言い合いが続く中、背後から、皮肉気な声が響いた。

「騒がしいな。負け犬の遠吠えはよく響く」

騎手たちが振り返ると、そこには一人の青年が立っていた。

外套に身を包み、顔が影になってよく見えない。


「妨害しても勝てないなんて、能無しにも程がある。邪魔だよ、お前ら」

その口調は軽く、だが言葉の端々に冷たい刃が潜んでいた。

騎手たちが言葉を失う中、青年はゆっくりと顔を上げる。

「俺なら、勝てる。」

その瞳が金色に、ギラリと光った。

次回は間話になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ