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魔法生物で水上レース!〜異世界でボートレース始めました〜  作者: 吉良 鈴
緑の風、黄金の駆け引き

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#6 魔道具師の壁

魔道券売機の前で、僕は腕を組んだまま、ずっと考え込んでいた。

魔法ギルドの干渉を防ぐため、そして僕自身の技術が盗まれないようにするため。

それだけじゃない。魔道券売機が改変されて、賭けそのものが不正に操作される――そんな最悪の事態も防がなければならない。

「公平な賭けを守るための魔道具……そんなの、今まで考えたこともなかった」

僕が作ってきた魔道具は、便利さや効率を追求するものだった。

誰かに悪用されることを前提に作ったことなんて、一度もない。


まず試したのは、魔力遮断結界。外部からの魔力干渉を完全に遮断する強力な防壁だ。

だが、券売機の魔力流路まで遮断してしまい、投票ができなくなった。

「強すぎる。これじゃ券売機がただの箱になる」


次に試したのは、魔力反射結界。外部からの解析魔法を跳ね返す仕組みだ。

だが、使用者の魔力まで反射してしまい、券売機が反応しなくなった。

「反射の条件を限定できれば……でも、解析魔法と通常の魔力をどう区別する?」


魔力の流れを偽装する“迷彩魔法”も試した。

外部から見えにくくすることで、解析を困難にする狙いだった。

しかし、内部の魔力制御まで混乱してしまい、券売機が誤作動を起こした。

「ああああ!!もう!!駄目だ……駄目だ……!」

魔法陣の紙は机の上に積み重なり、十枚を超えていた。

どれも一長一短で、決定打に欠ける。

僕は椅子に座り込んだまま、ふつふつと沸騰しそうな頭を抱えて、ぶつぶつと呟く。

「僕の技術が盗まれるだけじゃない。魔道券売機が改変されて、賭けが操作される。そんなことになったら、レースそのものが終わる……」



そのとき、工房の扉が軽くノックされた。

「ムウノス、いるか?」


マーカス兄が顔を覗かせる。

「様子を見に来た。何か困ってるみたいだな」


僕は苦笑しながら、試作魔法陣の束を見せた。

「魔道券売機に技術保護の魔法つけたいんだ。でも、どれも失敗。」


マーカスは魔法陣を一枚手に取り、眺めながら言った。

「昔、父さんが言ってたよ。『魔道具は使う者のためにあるが、作る者の魂も宿る』って」


その言葉に、僕の思考が一気に動き出した。

「……魂……!!“意志”を刻むんだ。魔道具に、作り手の意志を」


僕は新たな魔法陣を描き始めた。

それは、魔道具の内部に“魔力署名”を埋め込む仕組みだった。

僕自身の魔力の痕跡を、魔道具の核に刻み込む。

外部から解析魔法が流れ込んだ際、その痕跡が反応し、干渉を起こす。

僕の口から勝手に言葉が出てくる。

「これなら、使用者の魔力には反応せず、解析魔法だけを拒絶できる。魔道具が“僕のもの”である限り、僕の意志が守ってくれる!」


マーカスが目を丸くする。

「そんなこと、できるのか?」

「できる!魔道具師の魂を込めればいい。これは、僕の魔道具だって証明するために!」


数時間後、魔道券売機は静かに起動した。

内部には、僕の魔力署名が刻まれ、外部からの解析を拒絶する防壁が完成していた。


「完成だ……!はは!やった!」


僕は深く息を吐き、マーカスに向かって微笑んだ。

「ありがとう、マーカス兄!あの言葉がなかったら、きっと進めなかった」

「礼なんていらないさ。お前が前に進むなら、それでいい」


そのとき、二人の盛り上がった声に誘われた工房の従業員が顔を出した。

「ムウノスさん、ひとつお願いが。似たような魔道券売機を作られても困るので、公式のオルカヌーレースで使うのはムウノスさんの開発したものだけって、見た目でもすぐわかるようにしてもらえませんか?」

「……分かった!」


僕は勢いのまま、券売機の外装に手を伸ばした。

魔力で色を変え、表面に小さな紋章――僕の魔道具師としての印を刻む。

それは、僕が作ったことを示す“証”であり、誰にも真似できない魔力の形だった。


「よし、これで完璧! これが僕の魔道券売機だ!」


夕陽が工房の窓から差し込み、魔道券売機の紋章をきらりと照らした。

僕は立ち上がり、胸を張った。


「次はレースだ。公平な賭けを守るために、僕の魔道具が走り出す!」

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