表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法生物で水上レース!〜異世界でボートレース始めました〜  作者: 吉良 鈴
緑の風、黄金の駆け引き

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/35

#5 仕組まれた勝負

白のオルカヌーは、今日も完璧に従順だった。

騎手の指示に一切の迷いなく反応し、まるで意志を持たないかのように動く。

……いや、違う。これは、従順というより「支配」と言うべきか。


昨日の違和感が、今日になっても消えなかった。

僕は資料を見直しながら、白の動きだけを何度も確認した。

他のオルカヌーたちは、騎手の声や動きに反応しながら、時に自分の判断で動いている。

けれど白だけは、指示に対して一切の遅れも迷いもなく、まるで命令を“実行”しているだけのようだった。


「……なんか、変だな」

僕は独り言のように呟いた。


そのとき、資料の束の中に、見覚えのない紙が一枚混ざっていることに気づいた。

誰が置いたのかも分からない。

紙は古びていて、端が焦げている。

そこには、複雑な図形と記号が描かれていた。魔法陣のようだが、僕には意味が分からない。


「ムウ……これ、見てくれる?」


弟はすぐに駆けつけて、紙を手に取った。

目を細めて、図形をじっと見つめる。


「……これ、隷属系の術式だよ。魔法生物の行動を制限するための。完全な構成じゃないけど、束縛環の記号があるし、命令系の符号も……」


「隷属魔法……?」


「うん。……オルカヌー。白、じゃない?」


僕は言葉を失った。

魔法ギルドが関与しているのは間違いない。

昨日の魔道券売機の一件も、ただの偶然ではなかった。

彼らはレースの仕組みそのものに干渉しようとしている。

そして今度は、魔法生物にまで手を伸ばしている。


けれど、分かったところでどうすればいい?

隷属魔法は高位魔導士の技術だ。

解除には専門の魔法陣と、強力な魔力が必要になる。

僕には、どちらもない。


「……くそっ」

資料を握りしめた手に力が入る。

ナディアに相談すべきか? でも、彼女にまで負担をかけたくない。


そのときだった。

ムウノスが一枚の紙を取り出した。


「ん?これ。……領地対抗レースの招待状。代表騎手に、ミネス兄とナディアさんが指名されてる。強制参加……!?」


「なんで僕とナディアが……!?」


ムウノスは言いづらそうに口を開いた。

「……送り主、隣領の伯爵。魔法ギルドと繋がってるって噂の人」


その名前に、僕はすぐに思い当たった。

昨日、魔道券売機の周囲にいた集団の中に、彼の家紋をつけた者がいた。

つまり――これは仕組まれた勝負だ。


平民の僕を、病み上がりの状態で引きずり出し、

ナディアを“お飾りの代表”として晒し者にする。

勝てるはずがないと思っているんだ。


「……やるしかないな」

僕は立ち上がった。まだ体は重い。でも、心は決まっていた。


「ナディアには、僕から話す。準備を始めよう。勝つために」


ムウノスは驚いた顔で僕を見た。

「ミネス兄……本当にやるの?」


「やる。僕たちの湖を、好き勝手にされてたまるか」


その言葉を口にした瞬間、窓の外で風が強く吹いた。

湖面がざわめき、空の雲が一瞬、形を変えたように見えた。


けれど、その風は、どこか冷たい。

まるで、何かがこちらを見ているような――そんな感覚が背中を這った。


資料の束の中に紛れていた紙は、まだ机の上にある。

その紋章は、見れば見るほど不気味だった。

まるで、目のようにこちらを見返してくる。


……これは、ただのレースじゃない。

これは、もっと深いところで仕組まれた“何か”だ。

僕たちは、もう引き返せない場所に足を踏み入れてしまったのかもしれない。


そしてその先に、何が待っているのか――誰にも分からない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ