#2 土産屋の次男坊
僕は湖畔に佇む町の土産屋の子どもでミネスという。
「ふぁ……」
あくびが出てしまった。今朝はなんだかおもしろい夢を見ていた気がする。
内容は忘れてしまったけど。
僕には商売熱心で優しい兄のマーカスと大人しいが賢い弟のムウノス(僕はムウと呼んでいる)がいて、それなりに毎日楽しく過ごしている……と思う。
この町は静かな湖を眺めて過ごす貴族の別荘地として有名で街も土産屋と宿と飲食店が少し。
元々別荘を建てるブームが来ていた世代の貴族たちも高齢となり、その貴族たちの子どもや孫はでかい湖以外に楽しみのない別荘になんか、全然遊びに来ない。ごめん、そんなに楽しくは過ごせていなかった。
寂れた雰囲気の漂う町なんだ。両親や兄も客が来なくて困ってる。
うちはメインが土産屋で町の住人向けに日用品なんかも取り扱っている店。
だけど僕と弟は別の仕事をしないといけないかもしれない。まいったね。
昼下がり、店の手伝いを終えた僕は、湖へと足を向けた。
町の外れにある浜辺は、観光客もいなくなった今では、誰もいない静かな場所だ。
水面は陽光を受けてきらきらと輝き、風が頬を撫でる。
「……なんか、懐かしい気がするな」
湖を見ていると、胸の奥がざわついた。
何度となく見ている湖で急に懐かしさを感じたのは何故だろう。
夢に出てきたのだろうか。何かを思い出しそうで、でも思い出せない。
そんなもどかしさを抱えながら僕は靴を脱いで、波打ち際に足を浸した。
そのときだった。
「キュー……キュキュッ!」
水面が揺れ、白い背びれが現れた。
ふわりと浮かび上がったのは、青い体の水棲魔法生物――オルカヌーだった。
「おお……」
僕は思わず声を漏らした。
その姿は、どこかで見たことがあるような、でもこの世界では初めて見るような不思議な感覚だった。
この湖に生息しているオルカヌーはレイクオルカヌーと区別される。オルカヌーは海にも川にもいるのでそれぞれシーオルカヌー、リバーオルカヌーと区別しているけど、住んでいる水場以外に特に違いはないらしいのでみんなまとめてオルカヌーだ。
オルカヌーは何といっても人懐こく、遊びが大好き。人を見つければ寄ってくるので例外なく青いオルカヌーも僕の足元まで近づいてきて、くるりと一回転してから、頭をすり寄せてきた。
「……遊びたいのか?」
キューキューと鳴いて、僕の周りをぐるぐると泳ぐ。
その動きは、まるで水面を滑るように軽やかだった。
どこに隠れていたのか青が楽しく遊んでいる様子を見て他のオルカヌーも寄ってくる。
オルカヌーは全部で6色発見されているらしい。
ここには全色居るかな?
白、黒、赤、青、黄、緑。
全色居る!しかし、この並び……なんだか見覚えが……
そして、次の瞬間――
僕の視界が、ぐらりと揺れた。
湖面が競艇場に変わる。
水しぶきが上がり、6艇の色とりどりのボートが疾走する。
青い4号艇が、外からまくり差しに入る――
「……っ!」
僕は膝をついた。
冷たい水の感触と鮮明な記憶が流れ込んできた。
オルカヌーはポケモンのトゲキッスとイルカが悪魔合体したみたいな見た目です。人が乗りやすいようにハンドル(角)もついててかわいいです




