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お嬢様と執事は、その箱に夢を見る。  作者: 雪桜
第8章 執事でなくなる日

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ルナ


 それから、ネコのぬいぐるみを購入した結月は少し休憩を取ろうとモール内の喫茶店の中にいた。


「結月ちゃん、ほかに、見てみたいお店はありますか?」


 店員に進められたキャラメル・ラテを飲む結月に恵美が問いかける。


 甘い味が喉を潤す中、結月はうーんと考え込むと


「もう大丈夫よ。それより恵美さん達は、寄りたいお店はないの?」


「え?」


 結月がそう言うと、レオと恵美は一旦顔を見合わせたあと


「そ、そんな滅相もない! 今日は、結月ちゃんのためにこうして」


「でも、私はもう十分満足したもの。だから、行きたいお店があるなら、遠慮なく言って……五十嵐は? どこか寄りたいお店はないの?」


「…………」


 話をふられて、レオは少しだけ考える。


 きっと結月のことだから、自分の買い物に付き合わせたことを、申し訳ないとでも思っているのだろう。ならば、ここは結月の提案に従うべきか?


「そうだな。じゃぁ、ペットショップに寄っても?」


「ペットショップ?」


「うん。猫を一匹飼っているから、新しいオモチャでも買ってあげようかなって」


「え……五十嵐さん、猫を飼ってたんですか?」


「はい、今は友人に預けていますが……名前はルナと言って──」


「「え?」」


 瞬間、その名を聞いて、結月と恵美は驚きと同時に目を丸くした。


「ん?……なにか?」


「あ! いえ、さっき結月ちゃんが!」


「め、恵美さん! 恵美さんは、寄りたいお店はないの!?」


「え、私ですか!?」


「そ、そうよ、遠慮しないで!」


「えと……じゃぁ、画材屋さんによってもいいですか?」


「画材屋さん?」


「はい。私、絵を描くのが好きで、いくつか買い足したいものが」


「もちろんよ! じゃぁ、飲み終わったら、さっそく行きましょう~!」


「?」


 結月が慌てて話を変えると、レオはそんな結月を見つめ首を傾げた。



 ✣


 ✣


 ✣



 そして、その後、喫茶店を出た三人は、まずは画材屋に向かった。


 店内には、スケッチブックや絵の具などの画材だけでなく、文房具や折り紙、塗り絵など、芸術を楽しむための、ありとあらゆる品が数多く並んでいた。

 すると、物珍しいそうに結月が店内を見回す中、恵美が閃いたとばかりに、ある提案をしてきた。


「そうだ! 結月ちゃんは、五十嵐さんと一緒にペットショップに行かれてはどうですか? きっと、猫もいると思いますよ!」


 満面の笑顔で提案する恵美に、結月は、ふと傍らにいる執事を見上げた。


(ど、どうしよう……今、五十嵐と二人っきりになるのは、ちょっと気まづいわ。ぬいぐるみに同じ名前、付けちゃったし)


 まさか、五十嵐が猫を飼っていて、しかも、その猫の名前が「ルナ」という名前とは思いしなかった。

 自分の飼い猫の名前を、ぬいぐるみにつけられたなんて知ったら、五十嵐は、どんな気持ちになるだろう。


「わかりました。じゃぁ、お言葉に甘えて」


 だが、そんな結月をよそに、レオは、笑顔でそう言うと、有無を言わさず、あっさり結月の手を取った。


 しかも、手袋越しでない手が、じかに結月の手を包み込むと、重なった手の平からは、じわりと熱が伝わってくる。


「え! あ、ちょ……っ」


「じゃぁ、俺たちはペットショップに行くので」


「はーい。私も画材選んでたら、そっちに行きますね~」


「え、ちょ、恵美さん!?」


 少し困った顔で恵美を見つめるも、レオに手を引かれた結月は、あっさり恵美の元から去っていった。


 そして恵美は、そんな二人を見つめながら


(五十嵐さん。手を繋ぐの、さり気なかったなぁ~。さすが、フランス帰りの帰国子女は違うな~)


 スマートとかいうか、手慣れてるというか、あれではまるで恋人同士だ。


 そんなことを考えながら、恵美は、にこやかに手を振ったのだった。

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