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神槍のルナル  作者: 未羊
第四章『運命のいたずら』

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第95話 決断へ

 歴史書の解読から二日後の事、ようやく智将とルナルがシグムスへと戻ってきた。

 二人は出迎えにやって来た兵士に連れられて会議が行われる部屋へと向かう。そこにはシグムス王、サキ、セイン、ルル、ミレルの五人が既に着席して待ち構えていた。

 智将とルナルも着席した事で、いよいよ会議が始まる。二人はシグムス王が座っている事は気になったものの、まずはイプセルタ会議の報告から始める事となった。

「うむ、特に収穫はなしか。しかしだ、ミムニアはまためちゃくちゃな事を言い出したものだな」

 報告を聞いたシグムス王が、顎を触りながら呆れたように言葉を漏らしている。

 だが、報告はこれだけではないので、智将とルナルからの報告はまだ続く。

 魔界との境界あたりで大規模な魔物の発生、そして、そのうちの一つとミムニア軍との交戦など、イプセルタ会議以外の報告もたくさんあった。これにはシグムス王、サキ、ミレルは驚き、セインはじっとしていられなくなっていた。

「ミムニア軍が交戦しているのは、その中でもひと際大きな群れらしい。おそらく、ミムニア軍の進軍を事前に察知して用意したのだと思われる」

「ぐぬぅ……」

 ようやく病の床から抜け出したばかりのシグムス王だが、報告を受けてその表情を歪めていた。だが、そこにアルファガドの面々が対応していると聞いて、少し安心したようだった。アルファガドの信用度はそのくらいに高いのだ。

 だが、会議に参加しているのはこの七人だけではなかった。

「ミムニアの行動が読まれていたのならば、我々人間側の情報は、かなり筒抜けになっているのでは?」

 シグムスの重鎮が不安を口にする。

 こう考えるのも無理もない。なにせ、ミムニアは魔界から遠く、魔族や魔物の被害もほとんどない国なのだから。

「いや、ミムニアは進軍にするにあたって、事前調査をしていたらしい。もしかしたら調査隊が捕らえられて、そこから漏れた可能性は否定はできないな」

「う、ううむ……」

 智将の言葉に黙り込む重鎮。

「だが、魔族の中には人間と見た目が近しい者も居る。筒抜けという状況を否定する材料がないのも事実だな。……信用のできる魔族も居るには居るだけに、安易に疑いたくはないがな」

 智将はそう言いながら、サキの方へと視線を移す。その瞬間、サキが少し照れたように見えた気がした。

「おほん」

 智将の話がちょうど終わったので、サキは照れ隠しのように咳払いをする。

「では、智将様からのご報告が終わったようなので、次は私の方から報告させて頂きます」

 サキが手を挙げて発言をする。

「そこに居る猫人のメイドであるミレルたちの手によって持ち帰られたシグムス王国の歴史書を解読してみたのですが、そこには驚くべき真実がたくさん書かれていました」

 一部端折りながらではあるが、サキは歴史書に書かれていた内容を会議の場で話していく。話が進むにつれて、初耳となる面々の表情には驚愕の色が浮かび上がっていった。

「バカな……。初代国王が魔族、しかも不死者だと?!」

「しかも、その魔族から受けた呪いのせいで、王族はみな苦しんできたというのか!」

「うむ、まぎれもない事実だ。余もその呪いには苦しんできたが、それももう終わった事だ」

 会議に参加しているシグムス王国の重鎮たちが騒ぐので、シグムス王はそう発言して彼らを黙らせた。

「へ、陛下? ……まさか!」

「うむ、話を聞いた時は余も驚いた。だが、いざ受け入れてみればなんて事はなかった。皆の者、今まで心配をかけてすまなかったな」

 国王からの謝罪の言葉に、重鎮たちは驚いていた。あれだけ苦しそうだったシグムス王が、こうやって元気に動いている理由が意外過ぎたからだ。だが、シグムス王がこうやって動き回れるようになった事に、重鎮たちは喜んで涙を流し始めたのだった。

 それをしばらく見届けると、サキは再び話を始める。

「ミレルたちは歴史書を取りに行った際に、雷帝龍と出会っております。その際にこう言われたそうです。『歴史書を紐解けば、これから何が起きるか分かる』と」

 サキのこの言葉に重鎮たちが騒めく。

「先程、シグムス王国の成り立ちの中で、時の魔王は我が国の初代国王である不死者デュークの裏切りによって最終的に討たれております。という事は、今回も魔王は不死者の裏切りによって討たれる可能性が高いと言えるでしょう」

 サキのこの言葉に、ルナルがぴくりと反応する。

「魔王が討たれるのであるなら、歓迎したいものだな」

 重鎮は楽観的に喋っている。だが、智将はまったくそうではなかった。

「いや、不死者の裏切りによって魔王が討たれるのはよしとしても、その不死者が人間の味方とは限るまい。魔王を殺し、自分が魔王になる可能性だってないとは言えないぞ」

 智将の言葉にはサキも頷いている。

 この時、ルナルとミレルの二人がわずかな動揺を見せていた。

 それは当然の話である。二人は魔王軍に在籍する不死者を知っているからだ。魔王軍のトップであるアカーシャの下に居る副官ディランの事だ。彼はデュラハンであるので、不死者という条件に当てはまるのである。

 ここでさらに問題になるのは、ディランの普段の態度だ。物腰が柔らかくて仕事をしっかりとこなす。それでいて戦闘能力も高いときている。ルナルたちからの信頼も厚いがゆえに、もし彼が裏切るとなれば魔王軍は真っ二つになるのは間違いない話なのである。

「ゆえに、私は魔王と不死者もろとも、魔王軍を壊滅する必要があると考えるのです」

 智将の言葉に続いたサキは、はっきりとこう言い放った。こう言われた重鎮たちは、うーむと腕を組んで唸っている。

 その様子を見ながら、サキはさらに言葉を続ける。

「私とここに居るミレルの力を合わせれば、おそらく魔王城のおおよその位置が割り出せるでしょう。相手方の不死者に頼る事なく、我々の手で決着をつけるのです」

「なに、そんな事が可能なのか?!」

 サキの言葉に重鎮たちが騒ぎ出す。そんな中、サキはちらりとルナルの方へと視線を送る。それに気が付いたルナルは、がばっと勢いよく立ち上がる。

「ならば、その戦い、私たちも参加致しましょう。必ず私たちの手で魔王軍を壊滅させてみせます!」

 ルナルの声に会議の場には歓迎の声が上がっているが、事情を知る面々は苦笑いをしているのだった。

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