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神槍のルナル  作者: 未羊
第四章『運命のいたずら』

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第94話 受け入れるもの

 シグムス王国の建国に至るまでの話を聞いた一同は黙り込んでいた。

 まさか、初代国王が魔族の術士による呪いを受けた不死者だとは、まったく想像できない話だったのだから。

 この話を聞いたミレルは思わずつぶやく。

「なるほど、ですから私の魔法による鑑定で妙な結果が現れていたのですね。よもや、デュークという初代国王が受けた呪いの影響だったとは、思いもしませんでしたが」

「ですが、私の調べてみた限りは、今の王族は初代国王デュークからの直系の子孫です。陛下にその呪いが受け継がれていたとしても、何の不思議もありませんよ」

 ミレルの推測を聞いて、サキが言葉を加えていた。

「ふむふむ、不死者と人間という二つの種族の混血がゆえに、このように体に無理が生じてしまっているわけなのでしょうね」

「そうですね。しかも、初代国王であるデュークが人間であった年齢までの間は、この症状がほとんど出ないようなのですよ。実際、陛下の体調が思わしくなくなったのは、ここ数年の事ですからね」

 サキがシグムス王へと視線を向ける。

 それにしても、何とも奇妙な呪いである。これだけの時を経ながらも、いまだに受け継がれてしまっているのだから。

「しかもこの呪い、掛けた本人でなければ解く事ができない。その本人は解く気がなかった上に、すでに死んでしまっています。もう私たちには打つ手はないというわけです」

 そう告げながら、サキは落胆していた。国王を救う手掛かりを見つけられると思ったのに、逆に絶望を叩きつけられてしまったのだから、こうなってしまうのも無理はないというものだった。……すでに手は尽きていたのだ。

 シグムス王はしばらく黙っていたのだが、さすがにここまで落胆するサキの姿を見ては黙っていられないようだった。

「……そうか。私にはそのような呪いが掛けられておったのか。サキ、それと皆の者、この度は実にご苦労であった」

「はっ、もったいなきお言葉でございます!」

 シグムス王の言葉に、サキは背筋を伸ばして反応する。シグムス王はその姿を見て安堵しているようだった。

 そして、いきなり体を起こし始める。

「この体の不調がその呪いによるものだとするならば……」

 こう言いながらシグムス王が起こした行動に、サキたちが慌てる。なにせシグムス王がベッドから体を起こして立ち上がろうとしているのだから。

「陛下、安静にしていて下さい!」

「近付くでない!」

 必死にやめさせようとするサキたちだが、シグムス王はそれを強い言葉で制止する。すると、サキたちはぴたりと動きを止めた。

 必死に体を起こしたシグムス王は、ふらついてはいるものの、ベッドの横にしっかりとその二本の足で立ち上がる。

「この呪い、解けぬというのなら……、受け入れるしかあるまい!」

「へ、陛下、何を?!」

 シグムス王は何を思ったか、気合いを入れて自分の胸を強く打つ。その瞬間、シグムス王の体から紫色の禍々しいまでのオーラが噴き出した。

「い、一体何が起きているというの?」

「なんて……、なんて強力な魔力の渦なの」

 シグムス王の体を取り巻くように、紫色の魔力の風が渦巻く。やがてそれが収まっていき、渦の中から姿を見せたシグムス王の姿は、すっかり以前とは変わってしまっていた。

「陛……下?」

 サキは驚きを隠せなかった。

「すまぬな、心配を掛けた」

 サキの反応に対して、シグムス王はそう答える。

 今のシグムス王の姿は、蒼白い肌に少し虚ろな瞳という不死者にありがちな特徴をしているが、先程までに比べれば、しっかりとした状態でその場に立っていた。

「ふむ……、これが不死者というものか。確かに見た目こそ不健康ではあるが、むしろこの上なく調子が良い。動きも実に滑らかだ」

 シグムス王が言う通り、見た目は確かによろしくはない。だが、その立ち姿を見る限り、逆に健康と言える状態になっていた。問題は見た目だけのようである。

「……確かに、サーチの魔法で確認してみましたが、心臓以外はすべて緑色ですね。不死者の特徴と一致しますので、これはむしろ問題ないですね」

 ミレルは安心したかのように魔法の結果を告げていた。

「そうか」

 ミレルの診断結果を聞いたシグムス王も、実に淡々と反応していた。

「サキ、そろそろ智将がイプセルタより戻るはずだな?」

「はい、そのように伺っております」

「ふむ、ならばすぐに招集を掛けよ。智将が戻り次第、会議を始める」

「はっ! 承知致しました」

 シグムス王から命令を受け、サキはすぐに部屋を出ていった。

 しばらくして城内が慌ただしくなっていく。

 シグムス王は部屋の中に残るミレルたちに声を掛ける。

「おぬしたちもぜひ、会議に参加してくれぬかな? 地下で雷帝龍とお会いしたと聞いている。そこで聞いた話を皆にも聞かせてやって欲しい」

 ミレルたちは少し渋っているようだが、そこへサキが戻ってくる。

「会議への参加は私からもお願いしたい。トール殿の言葉を真に受けるのであるならば、ルナル殿の身に危険が差し迫っている可能性が高いですからね」

「な、なんですって?!」

 サキの言葉に、ミレルたちは衝撃を受ける。

 一体何を根拠にサキはこのように述べたのだろうか。そして、これから一体何が起こるというのだろうか。

 一難去ってまた一難。新たな問題がミレルたちに襲い掛かろうとしているようだった。

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