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神槍のルナル  作者: 未羊
第三章『それぞれの道』

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第79話 予想外な事

 セインとルルのペアとフレインとの戦いが続いているその反対側では、剣士同士の戦いとは対照的な肉弾戦が繰り広げられていた。

 屈強な肉体と燃え盛る火炎を武器とするイフリート。それに対して、小柄で身軽な身のこなしに魔法を組み合わせた技巧派のミレル。実に対照的な二人の戦いである。

 ミレルはウンディーネの加護を受けた状態でイフリートと戦っているのだが、さすがそのイフリートの本拠地での戦いのである。シグムス城の地下で雷帝龍トールとやり合った時よりも幾分戦いが厳しくなっていた。

 属性的に言えば、水は火に対して強い。だが、雷に対して程優位に立てるわけではなかった。そんな様々な条件が絡み合ったがゆえに、ミレルが優位に戦いを進めていても、いまいち決め手を欠く状態となっているのである。

 ところが、ミレルが決め手に欠く原因は他にもあった。それはイフリートが見せている表情だ。いくら本拠地とはいえど、自分の苦手をする属性に攻め立てられているというのに、イフリートの表情には余裕が見受けられるのだ。その表情はまるで何かを企んでいるようにも見える。

(おかしい……。この状況下でありながらあの余裕のあるような笑みは、一体何なのですか。まさか、何かを企んでいるとでも?)

 ミレルは一撃を強く打ち込むと、一度距離を取って体勢を立て直す。そして、水魔法を操って手足にまとわせる水の量を増やすと、再びイフリートへと攻撃を仕掛ける。

「ぐっ……」

 この連撃はさすがにイフリートに効いたようである。イフリートがわずかではあるものの苦悶の表情を浮かべたのだ。そして、その連撃を入れたところでミレルはすかさず距離を取る。その時のミレルは、セインやルルに気遣って炎の壁の方へと飛んだのだ。

 だが、この着地の際にミレルははっきりとした違和感に襲われる。その違和感を確認するように、ミレルはイフリートへの視線を外して炎の壁を見る。その壁を見た時にミレルに激しい動揺が走った。

「なっ!」

 ミレルが声を上げるが、その隙を突いてイフリートがミレルに殴りかかってきた。

「よそ見をするとは、実に余裕なものだな! そんなにそれが気になるというのなら、この一撃で気の済むまで堪能できるように埋めてやろう!」

 この時、イフリートはミレルとの位置関係で左の拳で殴りかかってきていた。イフリートから見たミレルの位置は右前で、そのさらに右側、つまりミレルから見れば左側に炎の壁がある。そこへ確実に叩き込むために、イフリートは左の拳を振りかざしたのだ。

「誰が、よそ見をしたというのかしら?!」

 だが、猫人の身体能力を舐めてもらっては困る。ミレルはしゃがみ込んで前方へと飛んでイフリートの拳を躱す。そして、その体勢から両手を地面につくと、そのまま後方への飛び蹴りをイフリートへと食らわせたのだ。

「かはっ!」

 この一撃はイフリートにかなり効いたようである。

 そして、イフリートの体を足場に再び跳んだミレル。空中からそのままイフリートに向かって魔法を放つ。

「水よ、凍てつきすべてを眠らせろ!」

 無詠唱が基本となっているミレルだが、今回は慣れない、というか使う事のない上級魔法を使おうとしているために、珍しく魔法の詠唱を行っている。

「フリージングコフィン!」

 ミレルが放ったのは冷気属性の上位魔法だ。対象を氷の棺に閉じ込める『フリージングコフィン』という魔法で、食らったイフリートがみるみるうちに凍りついていく。

 そもそも魔法の使えない猫人だが、ミレルは人一倍の興味と努力で魔法が使えるようになった。そんな彼女でも魔力不足で上級魔法を使う事はできない。だが、今は場を満たすウンディーネの水のマナがあるために、この上級魔法を発動させる事ができたのだ。

 ところが、せっかくイフリートを氷の棺に閉じ込める事ができたというのに、左右にある炎の壁が消える様子はなかった。こうなってくると、イフリートに敗北を認めさせるしか、この炎の壁を消す方法は無いようだった。

 その時だった。

 パリーンとイフリートを覆っていた氷の棺が砕け散り、辺り一帯に大きな氷のつぶてが飛び散った。

「ぐっ……!」

 持ち前の身体能力で氷のつぶてを躱していたミレルだったが、そこに紛れて飛んできたイフリートの拳をまともに食らってしまった。

 その時の衝撃で炎の壁に向けて吹き飛ぶミレルだったが、魔法で足場を作り出すと、そこに着地して炎の壁にぶつかる事を回避する。そして、そのままイフリートに向けて飛び蹴りを繰り出す。だが、この蹴りは躱されてしまった。

「ほほお、この俺の拳をまともに食らって動けるのか。猫人とは相当にタフなようだな」

 イフリートは顎に手を当てて、実に上から目線で感想を喋っている。

「だが、ダメージは隠しきれなかったようだな。蹴りにまったくキレを感じなかったぞ」

「はぁはぁ……。まったく、この脳筋戦闘狂は……っ!!」

「ガハハハハハッ! お前ら猫人どもも似たようなものだろうが!」

「くっ、否定はしませんけれどね」

 イフリートが話し掛けてくるので、それに乗って時間を稼ぐミレル。そうやって話をしている間に体力を回復させ、決着をつけるための大技の準備を整えているのだ。

 この二人の戦いもいよいよ佳境に入ろうとしているのだった。

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