表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神槍のルナル  作者: 未羊
第二章『西の都へ』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/139

第45話 しまった!

 ルルが唱えたスコールアロー。それはマジックアローの上位魔法で、多数の魔力の矢を雨のように降らせる範囲魔法だ。

 今まさに、ルルが発動させた魔法によって、上空は大量の矢で埋め尽くされている。そして、サキ目がけて一気に降り注ぐ。

 普通であるならばそれは絶望的な状況だ。だというのに、サキはその魔法の矢を眺めながら笑みを浮かべている。

「笑っているなんて、ずいぶんと余裕ですね」

「まあそうですね。でも、これを待っていたなんて言ったら、どう思いますか?」

「な、何ですって?!」

 思いもしないサキの言葉に、ルルは動揺している。迫りくる魔法の矢を前に、いまだにサキは落ち着き払っている。

「大技っていうのは、最後まで取っておくものです。反撃の可能性も考えずに放つのは、愚かだという事を思い知りなさい」

 笑みを浮かべていたサキの表情が、一気に引き締まる。それと同時に、魔法の詠唱を始める。

「魔法の障壁よ、その輝きで数多の魔法を跳ね返せ」

 サキはばっと両手を横へと勢いよく払う。

「リフレクト!」

 その言葉と同時に、周囲に光の障壁が出現する。すると、その障壁に触れた魔法の矢が、急激に向きを変えてルルへと襲い掛かった。

「ちょっと、何よそれ!」

 思わぬ事態にルルは大慌てで魔法の詠唱を始める。その姿を見たサキは、どういうわけか笑みを浮かべている。その一方、この戦いを見守るルナルも、その詠唱に反応していた。

「こ、この魔法は……」

「シェルター!」

 詠唱を終えたルルが魔法を発動させると、ルルを護るように半球状の魔法の障壁が現れる。跳ね返されたスコールアローの魔法の矢が、その障壁へと勢いよくぶつかっていく。

「うぐぐぐ……」

 必死に歯を食いしばるルル。そのかいあってか、どうやらすべての魔法の矢を防ぐ事ができたようだった。

「はあはあ……。驚きましたよ。まさか、魔法を跳ね返してくるなんて……」

 魔法をなんとか防ぎ切ったルル。しかし、安堵したのも束の間の話だった。


 ジャキン……。


 ルルの首筋に剣が添えられたのだ。

「えっ?」

「おっと、動かない方がいいよ」

 そう、それは智将の剣だった。サキによって魔法が跳ね返された事で、ルルの意識は完全にそっちに向いてしまい、智将の接近に気が付けなかったのである。

「さて、君は一体何者なのかな?」

「な、何の事ですか?」

 ルルは首筋に剣を当てられ、青ざめながらもとぼけている。だが、智将はそれを無視して言葉を続ける。

()()()()()()()()()()()()()()、魔法を防ぐには『マジックバリア』か『レジスト』を使うはずだ。しかし、君が使ったのは『シェルター』だ。その魔法は、その前にサキが使った『シェル』の上位魔法。つまり、魔族の魔法という事になるんだよ」

「……!」

 ルルは驚きの表情をするが、喋るわけにはいかないと黙っている。

「魔族の魔法を使いながらも、その魔族があまり使う事のない『マジックアロー』や『スコールアロー』を使っていた。両方の魔法を難なく使う君は、()()()()()()()()()なのかな?」

 智将がルルを問い詰める。その様子を、セインは理解できないとばかりに首を傾げながら見つめ、ルナルはルルたちの様子を凝視している。

 ところが、肝心のルルはいまだに黙り込んだままである。

「あまり子ども相手に手荒な真似はしたくないんだがね。答えてもらうと助かるんだが」

 智将が首を傾げながらルルに話し掛けると、ルルはついに観念したようにため息を吐いた。

「……参ったなぁ。だますつもりはなかったんですけれど。……いつから疑いを向けてましたか?」

「その杖を見たのが一番最初だね。最終的に確信したのは、さっきの君の対応を見た時のサキの反応だったよ」

 ルルの質問に答えながら、智将は剣を引いて鞘に収める。すると、ようやくルルは安心したように首を横に振った。

「ちぇ……。魔力は人間に寄せてたはずなんですけれどね。やっぱり私は未熟かあ……」

「ルルちゃん、あなたは一体……」

 ルルの態度を見て、ルナルが問い掛ける。

「ルナル様にはうまくごまかせてたのにな。悔しいな」

 ルルは胸の前で杖を抱えて直立する。

()()()()()から言われてたのになぁ……。ごめんなさい、ルナル様」

 ルルは深く頭を下げる。

「ルルちゃん、()()()()()って一体誰なのですか?」

「ルナル様は一度お会いしているはずですよ。つい最近にね」

 質問に返ってきたルルの答えを聞いて、ルナルはしばらく考え込む。そして、

「ま、まさか……」

 何か思い当たったかのように驚愕の表情を浮かべる。それを見たルルはニコッと笑う。

「そのまさかですよ」

 ルルは杖を持ったまま腕を前に伸ばして魔法の詠唱を始める。

「いにしえの記憶よ。我が魔力を介し、ここにその姿を現せ! ヴィジョン!」

 そして、ルルが高く杖を掲げると、そこを中心として大きな木の姿が映し出された。

 ルルが使った魔法の事は分からないが、ルナルはその木の姿を知っているようで、目を見開いて言葉を失っていた。

「私は人間でも魔族でもありません。そして、この樹こそ、私の本当のお母さん。私はユグドラシルより生まれた精霊なんです!」

 ルルは自分の正体を大々的に告白したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ