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神槍のルナル  作者: 未羊
第二章『西の都へ』

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第43話 試練! 智将との戦い

 智将の圧に押されて、結局断る事ができなかった。セインとルルは智将に連れられて、シグムスの城内にある兵士の訓練場へとやって来た。その後ろには、ルナルが保護者としてついてきている。

 連れてこられた修練場はかなり広いようで、そこでは老若男女を問わず、多くの兵士たちが己の腕を磨いていた。その兵士たちの士気は高く、シグムスというのは元々砂漠の中にあって暑い国なのだが、修練場の中はより一層の熱気に包まれていた。その場の空気のあまりの熱さに、セインもルルも思わず引いてしまった。

「二人とも、こういう場所は初めてかな?」

 智将がそう問い掛けると、セインもルルも首を縦に振っている。そもそも戦闘訓練だって、セインがアカーシャにつけてもらった1回きりだけなので、当然な反応である。

「さすがは魔物や魔族といった脅威にさらされているシグムス。兵士の方々の士気がとても高いですね。さすがの私でも、ここまでの士気の高さというものは見た事ありません」

 ルナルはこう言っているが、もちろん、自分の魔王軍の話をしている。ただ、何も知らない兵士たちの前でそれを話すわけにはいかないので、ちょっとごまかした話し方をしているのだ。

「これほどの軍隊とは、私も参考にさせて頂きますね」

「いやまぁ、それは構わないが……な」

 ルナルのやる気に満ちた目に、智将はちょっと苦笑いをしている。お互いにごまかしてはいるものの、もちろん魔王軍の話である。

 智将の反応を見たルナルは、照れ笑いをしていた。

 そのルナルの後ろでは、ルルが兵士たちの様子を見て怖がっているのか、がっしりとルナルの服を掴んで隠れていた。ルナルがその様子に気付いてルルの頭を撫でると、ルルはさらに強くルナルにしがみついた。

「おやおや、怖がらせてしまったかな。だが、あのくらいはいつもの事なんだ。……とはいえ、これ以上怖がらせてしまうのは本意ではないからな」

 智将はそう言うと、くるりと向きを変える。

「では、別室に移動しようか。ついてきなさい」

 智将の呼び掛けによって、ルナルたちは熱気漂う修練場から移動していった。


 やって来たのは修練場の隣にある吹き抜けになった部屋だった。

「ここは訓練場とは違って、実際に戦いを想定した模擬戦を行う部屋なんだ。周囲にはうちの自慢の魔法使いたちが掛けた防護魔法と結界が張られている。少々めちゃくちゃをしても大丈夫なようになっている」

 智将の説明を聞いて、セインとルルは吹き抜けになった部屋の上方を見ていた。そこには確かに青空が見える。

「ふふっ、ここは懐かしいですね。シグムス軍に入ろうとした時に、入隊試験を受けましたからね」

「そういえばそうだったな。結局サキの魔法の前に誰も太刀打ちできずに、試験官が一方的にやられていたな」

 サキはにこやかに思い出話をしていたが、智将が付け加えた話はとんでもない話だった。

「さすがはソルトのいとこだわ。私が欲しかったですね……」

 改めてルナルは、サキを引き入れられなかった事を悔しがっていた。

「それじゃ、早速手合わせを始めようか」

 智将とサキが、入口から奥の方へと歩いていく。

「ルナルは手出しをしないで下さいね。あくまでも私たちとその二人の手合わせなのですから」

「分かりました。では、隅の方で見学させてもらいますね」

 ルナルはそう言って、セインとルルから離れていく。セインはやる気が十分だが、ルルはちょっと不安そうだ。

「勝負は気絶するか降参するまでだ。遠慮は要らない、全力で来たまえ」

 智将はマントを翻し、剣に手を掛ける。その姿を見て、セインはぎりっと歯を食いしばる。

「……やるっきゃないようだな。がきんちょもいいな?」

 セインは覚悟を決める。

「私の名前はルルです。……怖いけど、私だってやればできるんですから!」

 セインから名前で呼ばれなくてカチンとくるルル。そして、ルルも覚悟を決めて杖を構えた。

「始め!」

 ルナルが開始の宣言をする。それと同時にセインが走り出した。

 智将とサキは相当の手練れだ。強いに決まっている。だったら先手必勝だと言わんばかりに、セインは二人目がけて走り出したのである。それを見たルルも詠唱を始める。

「我が魔力よ、矢となり敵を貫け! マジックアロー!」

 ルルが使ったのは初歩的な魔法であるマジックアローだった。

 だが、それを見たルナルたちは驚きを隠せなかった。なにせ、その数が明らかにおかしかったのだ。通常のマジックアローは1本である。だが、ルルの放ったそれは10数本もの魔法の矢が生み出されていた。明らかに規模が違ったのである。

 デザートシャークとの戦いで使ったサウザンドニードルもそうだが、どう考えても初心者の使う魔法ではなかった。

「ほお、正面からの攻撃とそれを補い、逃げ道を塞ぐための多方面からの攻撃か。格上相手とみて、捨て身の先手必勝といったところか。サキ!」

「畏まりました」

 だが、智将もサキも落ち着いて分析していた。踏んだ場数が違うのだ。強者の余裕というものである。サキに落ち着いて呼び掛けると、すぐさま魔法の詠唱を始める。

「魔法の膜よ、我らを護りたまえ。シェル!」

 魔法の発動の速度が圧倒的に違う。詠唱を終えると一瞬で魔力の防御膜が、智将とサキを包み込むように展開される。そして、ルルの放ったマジックアローは、あっさりとすべて防御膜に防がれてしまった。

「ええっ?!」

 いとも簡単に防がれて、ルルはショックを受けていた。

「初級魔法とはいえど、あれだけの数を一気に放てるとは大したものだな。さて、セインくんの方はどうだろうかな」

 智将が改めてセインの方を見る。そして、迎撃のために構えると、セインは声を張り上げながら剣を振るって衝撃波を放ってきた。

「ふむ、これは斬破(ざんは)か。だが、軽いな」

 智将は迫りくる衝撃波を見ても落ち着き払っている。その攻撃を見極めた智将は、セインの放った斬破を躱す様子を見せないどころか剣を構えた。どうするつもりなのか。

「我が剣、とくと見よ! 裂風斬(れっぷうざん)!」

 智将はそう叫ぶと、一気に剣を振り抜いた!

「れっぷう」を普通漢字で書くと「烈風」ですが、これは技の名前なので「裂風」となっています。「裂風斬」とは、風を切り裂くような鋭い斬撃という意味です。

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