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神槍のルナル  作者: 未羊
第一章『ハンター・ルナル』

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第17話 いざ、魔界へ

 次の目的地が決まったルナルとセイン。だが、その前にやる事があった。

「お呼びでしょうか、ルナル様」

 今ルナルたちの目の前に、ソルトとアカーシャの姿があった。ついでに3体のペンタホーンも集結している。

 なぜソルトとアカーシャも呼んであるのかというと、魔界に向かうからである。魔界と呼ばれる地域はこれまでとは勝手が違う。だからこそ、力を集結させる必要があったのだ。

 ちなみに四人が居る現在地点は、ゴブリンたちの支配から解放された村の少し北である。

「ソルト、アカーシャ、首尾はいかがでしたか?」

 集結したところで、早速ルナルは二人から情報を聞き出す。

 それによると、二人も情報を集める最中に、ルナルたちと同様に魔眼石を起因とする凶悪で残忍な事象を確認していた。そして、目撃者が生存しているものに関しては、ゴブリックと同じ様に突如として性格が豹変したとの証言が得られた。その中には魔眼石の存在に気が付いて、どうにか引き剥がす事で正気に戻す事ができた事例もあったそうだ。そうやって正気に戻った者たちからもゴブリックの時と同じように『ジャグラー』という名を聞く事ができた。その男に会ってからの記憶が一切ないというのも共通点だった。

「……それにしても、ジャグラーですか」

 ルナルは神妙な面持ちで腕を組んでいる。同様に、ソルトとアカーシャも険しい顔をしているので、事情の分からないセインは首を傾げている。

「なあ、そのジャグラーって奴は、一体何者なんだ? さっきから頻繁に口に出してるけどさ」

 セインから質問されたルナルは、組んでいた腕をほどき、今度は腰に当てる。

「ジャグラーというのは、ゴブリンの時にも話をしましたが、魔族の貴族です。魔族の中でも魔法の扱いに長けている頭脳派の魔族で、見た目が貧弱な事から『苦もやし』と呼ばれている薄気味悪い男です」

 ルナルからやたらと詳しい説明が返ってきた。

「な、なんでそんなに詳しいんだよ」

「ハンターというものは魔族や魔物と戦います。その上でカギを握るのは情報なんですよ。事前知識のあるなしでは、成否どころか生死すら分かつ事がありますから、情報収集は怠らないものなのですよ」

「な、なるほど……」

 ルナルが当たり前でしょと言わんばかりの表情でセインに説明している。先輩ハンターの説明には説得力があるので、セインは納得せざるを得なかった。

「奴は元々野心の強い奴だからな。魔王の世界滅亡の宣言を聞いて、ここが好機とばかりにこそこそと活動しているのだろう。まったくやる事がいやらしい奴だ……」

 アカーシャが苦虫を潰したような顔で、吐き捨てている。正々堂々を好むアカーシャとは、まったくもって正反対なのだ。

「それとルナル様」

 今度はソルトが話を始める。

「ペンタホーンに埋め込まれていた魔眼石と調査の中で手に入れた魔眼石を調べた結果が出ました。どうやら、この魔眼石は対象を操るだけではなく、魔力の中継地点にもなっていたようです」

「やはりそうですか。ペンタホーンは魔法が使えませんし、ゴブリックは土属性魔法しか使えませんでしたからね。ペンタホーンが雷撃を放ったのは、別の魔族の魔力だったというわけですか」

「はい、その通りでございます。どうやら魔眼石を通じて魔力を融通できるようになっていたようでして、いくつもの魔眼石を通して、ジャグラー自身に痕跡がたどり着けないようにしていたようです。まあ、私の分析能力をもってすれば特定できてしまいましたけれども」

 さらさらと言ってのけているソルトだが、やってる事は高度な技術である。ルナルとアカーシャはついていけるものの、セインはまったくもってちんぷんかんぷんだった。

「つまりどういう事なんだよ」

「ジャグラーが魔眼石を埋め込んだ者同士に魔力を通す道を作ったという事です。ジャグラーはそこに命令を出す事で、ある対象の魔力を別の対象へと移動させて能力を行使させていたという事ですね。だから、魔法の使えないはずのペンタホーンが雷撃を放てたというわけなんです」

「うん、分かんねえよ!」

 ここまでかみ砕いてもセインは理解できなかった。

「だがよ、そのジャグラーって奴が他人を自分の好き勝手にしてたってのは分かった。まったくもって許せねえな」

「ええ、それだけ分かれば十分です。これ以上、ジャグラーの好き勝手にさせるわけにはいきません。早急に討伐しませんとね」

「ああ、こいつはやっちゃいけねえ好き勝手だ」

 セインはものすごく気合いが入っている。

「ふん、やる気があるのはいいが、魔界がどこにあるのか知っているのか?」

 やる気だけは十分のセインに、アカーシャが質問をぶつける。

「いや、知らない」

「本当に気持ちだけの奴だな……」

 即答するセインに、アカーシャは自分の頭をガシガシと掻く。

「セイン、イプセルタという場所はご存じですか? 魔界というのはそのイプセルタのさらに北にある領域を差すんです」

「だから、人間の住む地域と魔界との境目にあるイプセルタは、人間にとっては対魔族の重要な拠点になるんだ」

「へえ、そうなのか」

 ルナルたちの説明に、間抜けな顔で聞き入るセイン。

「ですから、イプセルタの国力を削ぐために、各地に繋がる重要な街道であるガンヌ街道を中心として、魔眼石をばら撒いたのでしょう」

「実際、ペンタホーン3体だけで物資の輸送をストップできてしまいましたからね。ジャグラーとしては上々の出来でしょうね」

 ルナルたちは深刻な表情をしていた。それだけに、セインにも状況の深刻さというものが十分に伝わっている。だが、それがゆえに、セインは駆け出しのハンターの自分が足手まといにならないか、魔族との戦いを前に不安を感じ始めていた。

「セイン、経験がなくていろいろと不安はあるでしょうが、大丈夫ですよ」

「そうだぞ。最初は誰だって素人で不安があるものだ。だが、お前は恵まれている。トップクラスのハンター三人に同行しているのだからな」

「まったくです。セインは恵まれすぎですよ」

 それを察したルナルたちに口々にこう言われてしまったセインだが、その気遣いのおかげか気持ちが楽になった気がした。

「さあ、魔界に向けて出発です!」

 ルナルの号令で、ペンタホーンに跨り、目の前の平原を北へ北へと走り抜けていく。すると、段々と眼前にうっそうとした森が見え始めてきた。

「あの森を抜けた先が魔界です。覚悟はいいですか?」

 ルナルが問い掛ける。だがしかし、ここまで来て今さら首を横に振るような選択肢があるというのだろうか。いや、ない。

 セインも覚悟を決めて、ルナルたちと一緒に森へと突入していったのだった。

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