第131話 呪いの根本
ペンタホーンに乗って移動するルナルたち。目的地はシグムスだ。
どうやらマスターたちがペンタホーンを連れて戻ってきていたようだ。相変わらずあれこれ見通してくれる食えない人物である。全知全能のドラゴンであるマスタードラゴンなのだから、この程度は朝飯前なのである。
でも、そんなマスターのおかげでシグムスへの移動は至極快適である。
「お前たちもいいように使ってしまって、すみませんね」
ルナルは休憩の度にペンタホーンをいたわっていたが、ペンタホーンは気にしないでほしいと言わんばかりにいなないていた。
あっという間にシグムスに到着すると、智将とサキが出迎えてくれていた。
「おや、また来たのか。魔王城の混乱は落ち着いたのかな?」
「はい、ひとまずディランと彼に味方した魔族たちへの処分は言い渡しました。監視もつけていますから、もうバカなことをする事はないでしょう」
智将の問い掛けに淡々と答えるルナルである。
「そうか。トール殿も大変だな」
「……監視としか言ってないのに分かるのですか?」
「いやね、この間顔を合わせた時に、ずっと彼の事を見ていたからね。それに、魔王城へと移動する際についていったのはトール殿だった。ならばおのずと答えは見えるというものだよ」
相変わらずなんという洞察力なのだろうか。さすがは魔族や魔物の攻撃からシグムスを守り抜いてきた人物は違うというものだ。
「よく見るとセインくんとルルくんも一緒か。いろいろと聞きたいところはあるが、とりあえず疲れているだろうから休んでくれたまえ」
ルナルはちらりとセインとルルの様子を見る。セインはまだ元気そうではあるものの、ルルは確かに厳しそうだった。一応まだまだ子どもだし、そもそもが植物系の精霊だけに砂漠での消耗は激しいようだった。
「むぅ……。慣れたと思ったんですけれどね……」
ルルも悔しそうである。
「ははっ、がきんちょはがきんちょだな」
「もう、セインさんってばすぐそう言うんですから……。そんなんじゃどっちが子どもか分かりませんよーだ」
頬を膨らませて文句を言うルルである。
「ははっ、疲れているのは見間違いだったかな。そのくらい元気そうなら私の部屋にすぐ案内しよう」
ルルが元気な姿を見せたことで、智将は案内する場所を変更する。
すると、ルルはセインの事を恨めしそうに睨み付けていた。だが、肝心のセインはそのルルを知らんぷりしていたのだった。
智将の部屋へやって来ると、とりあえずテーブルを囲んで座るルナルたち。しばらくすると、途中で別行動を取ったサキが飲み物を持って姿を見せた。
飲み物を置いたサキも同じように席に着くと、ようやく智将が口を開いた。
「さて、今日は一体どんな用事で来たのかな。シグムスの国内は安定しているから、君たちに手伝ってもらうことはないよ」
智将はにこやかな表情をしていた。あまり部外者であるルナルたちに心配を掛けたくないというのだろう。
しかし、ルナルの方は引くつもりはまったくなかった。なにせ、今回やって来た用事はシグムス王国の根本に関わる話だからだ。
「実はですね……。シグムスの王族に掛けられた呪いを解けないかと考えてきたんですよ」
ルナルがこう言うと、智将の眉がぴくりと動いた。
「一応先日の事もありますし、こちらで調べ物をしていたミレルからも報告は受けています。なんでも、昔魔族から受けた呪いが原因だという話でしたよね」
ルナルの言葉に、少し言葉を詰まらせる智将とサキである。
しばらくすると、お互いの顔を見合わせて小さく頷き合った。
「……その通りだよ。初代国王であるデュークが魔族から受けた呪い。それが今もなお王族の中で受け継がれているんだ」
「その話を聞いて陛下が受け入れられた時は、それは騒ぎになりましたよね。今では国内も落ち着きはしましたが」
真剣な表情で話す智将とサキ。
「その呪いは掛けた術者でなければ解けないときている。私たちとしてはその状況を受け入れてうまく共存するしかないと考えているんだ」
「しかし、ルナル。本当にその呪いを解く方法などあるのですか?」
疑いを持って問い掛けるサキ。いくら友人だからといっても素直に信じられる話ではないからだ。
その問い掛けに、ルナルは首を横に振っている。
「正直言いまして分かりませんね」
ルナルがこう答えれば、サキが珍しく激高している。
「あなたは、そんな適当な事を言うような人でしたか?」
立ち上がってまで怒りをぶちまけている。智将も見た事のない珍しい姿だ。
「分からないですけれど、彼なら解ける可能性があると思うんですよ」
「彼?」
立ち上がったままの状態で、ルナルが視線を向けた人物を見るサキ。そこに居たのは、セインだった。
これにはサキはすぐにピンと来たようだ。
「……そうか、破邪の剣か」
サキが呟いた言葉に、こくりと無言で頷くルナルである。
「えっ、俺?」
いきなり話に巻き込まれたセインが驚いている。
「ふむ、初代国王の友人であったザインの子孫に受け継がれてきた剣か……。確かに期待できなくはないな」
智将も視線をセインに向けた。全員から視線を向けられたセインは困惑してしまう。
「解かなければこれからもシグムス王家は不死者化の葛藤と戦い続けなければなりません。ディランのような問題も起きたのですから、そもそもそんな問題はなくさなければならないんです」
「それは同意するな」
ルナルが力強く発言すると、智将とサキは頷いていた。
連れてこられたらいきなり話の中心にさせられ、セインはただ困惑するしかなかった。




