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神槍のルナル  作者: 未羊
第五章『思いはひとつ!』

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第129話 下した処罰

 魔王城に戻ったルナルは、トールの監視の下、ディランに魔封陣を解かせる。

 解けないみたいな事を言っていた気がするのだが、そこは雷帝龍トールが居るのだからどうとでもなったようである。

「すごいな。ドラゴンなどただのでかいトカゲだと思っていたが、五色龍ともなればさすがに格が違ったか……」

「無論じゃぞ。地べたしか這えぬ連中と一緒にしてくれるな」

 ディランに対して文句を言うトールだが、その顔は笑っていた。さすがはマスタードラゴン配下の五色龍である。懐が広かった。

「それで、部下は戻ってくるのですかね」

「もう解いたからな、もうじき現れる」

 ディランの言葉に、ほっとひと安心のルナルである。

 しかし、ディランの方は険しい表情のままだ。なにせ、ルナルに対して反逆行為を行ったのだ。当然ながら、その罰が下るものだと思っているである。

 ところが、ルナルから下された処罰は予想外なものだった。

「ディラン、あなたを魔王軍の副指令から外します。そして、シグムスとの国境付近辺りを領地とし、そこを治めることを命じます」

 ルナルの下した命令に、ただ驚くばかりのディランとマイアである。

「正気か?! 俺はお前を殺そうとしたのだぞ」

 叫ぶディランにルナルはただただ黙って微笑んでいた。

「確かに、魔王への反逆は重罪です。ですが、私の未熟さゆえに起こした事態でもあります。それにですね……」

 一度目を閉じたルナルは、そう言いながらマイアへと視線を向ける。

「あなたを慕って生き延びてきた彼女を思うと、せっかく再会したのに別れさせるのは酷だと思うのですよ」

「る、ルナルさん……」

 ルナルの言葉に、思わず恥ずかしがってしまうマイアである。

「それに言いましたでしょう、私の理想というのもを」

 真剣な表情をディランたちに向けるルナル。

「まったく、甘い魔王というものだぞ。本気で人間と魔族と仲良くできると思っているのか?」

「できるできないというより、まずはやってみたいというところですかね。シグムスの智将とサキのような関係だって、築けているわけですからね」

 ディランの疑問に対して、ルナルはシグムスの方へと視線を向けながら話している。

「……まあ、確かにあれは驚いたな。今の国王にもだが……」

 このルナルの言葉には、さすがのディランも頷くしかなかった。実際にその状況を目に見せつけられたのだから。自身が迫害されて国を追われただけに、信じられない事実だったのである。

「しかしだ。俺をそこに置いて、シグムスに仕掛けるという考えはないのか?」

「それは考えましたね」

 ディランが改めて確認すると、ルナルは苦笑いを浮かべている。

「でも、そこにはもちろん監視を入れますよ。ね、トール殿」

「あい分かった。主からもルナル殿の言葉には従うようには言われているからのう」

 仕方がないなという笑みを浮かべるトールである。

「それと、あの辺りは私の統治の行き届いていない場所でもあります。襲ってくるならず者も居るでしょうから、適度な気晴らしもできるでしょうね」

 そこでにこりと笑うルナル。その笑顔は少しだけ魔王っぽかった。

 その姿を見て呆れるディランだった。

「……改めて断っておくが、俺はお前に屈したわけじゃない。命令に絶対従うわけではないからな、覚えておけよ」

「ええ、与えた領地は思うように運用して下さい。人間の王にも魔族の王にもなれなかったあなたです。私からのせめてもの慈悲ですよ。よければ、あなただけの国を築いて下さい」

 皮肉めいたルナルの言葉に、思わず笑ってしまうディラン。

「はっ、言ってくれるじゃないか。そう言われたら、やってやろうというものじゃないか。なあ、マイア」

「はい、ディラン様」

 見返してやるとばかりに宣言するディランと、呼びかけに答えるマイアである。

 その姿を見たルナルは、安心したかのように二人を見つめていた。


 その翌日には、ディランとマイアは、ディラン側についた魔族たちを伴って魔王城を後にした。

 敗者は消え去るのみ。魔族に伝わる言葉の通り、ルナルたちに敗北した魔族たちは魔王城から消え去った。

「ふぅ……、これでひとまず一件落着ですかね」

 執務室に移動したルナルは、ひとまず腰を落ち着けていた。

 目の前にはアカーシャとソルト、それにミントとミレルの四人が立っていた。ミーアはマスターと一緒に行動中であるので不在だ。

「お疲れさまでございました、ルナル様」

「それにしても、ずいぶんと寛大な処置で済ませましたね、ルナル様」

 労うのはアカーシャとソルトだが、酷い目に遭ったミントとミレルは少し不満げにしていた。

「本当なら手打ちなんでしょうけれどね、シグムスの過去を見ると彼らもまた被害者なんですよ。そう思うと、どうしても冷酷にはなりきれませんでしたね」

 そう言うと、ルナルは立ち上がって本棚に向かう。

「ルナル様、今度は何をなさるおつもりですか?」

「シグムスの王家に伝わる呪い。それをどうにかできないかと思いましてね」

「ああ、王族が代々不死者になるという呪いですか……」

「不死者になれば長くを生きられますが、それゆえの悩みもあります。ディランが拗らせた原因でもありますしね、解決しておきたいと思うんです」

 身内の事が片付いたルナルは、今回の事態の遠因となったシグムスの問題を解決するために動く決意をしたのだった。

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