表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神槍のルナル  作者: 未羊
第五章『思いはひとつ!』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/139

第121話 混迷していく事態

 セインやルルたちが大暴れしている中、一度距離を取ったルナルとディランはずっと睨み合っている。

「まったく忌々しい奴だ。魔族の王でありながら人間と馴れ合うなど、魔族の風上にも置けぬ……」

「何とでも言って下さい。力で従わしてきた結果がどうだったのか、過去を見ればすぐに分かるでしょう?」

 ルナルの言葉にディランは黙り込む。元人間のディランとはいっても、魔族の歴史を知らないわけがないのだ。

「とはいえ、あなたがシグムスで受けてきた処遇の話は聞いていますから、気持ちは分からなくはないですね。ですので……」

 ルナルは槍をしっかりと構えながら、ディランをしっかり見据える。

「あなたと私の思い、どちらが上か。ここでしっかり決着をつけようではありませんか」

 ルナルがこう提案すると、ディランは笑みを漏らす。

「ふっ、単純明快な提案だな」

 ディランは再び剣を構え直す。

「よかろう。お前を殺し、正式この俺が魔王の座に就いてくれる!」

 ディランは言い放つと同時にルナルへと斬りかかっていく。

 迎え撃つルナルも腰を落として身構える。そして、ディランの攻撃に合わせて槍を振りかざしていた。


「魔王? 一体誰が魔王だというのだ」

 二人のやり取りを聞いていたイプセルタ軍の将軍が首を傾げている。

 そこへ、マイアを連れているフォルが近付いていく。

「そうか。そういえばずっと正体を隠していおったからな、あやつは」

「あなたは?」

 話し掛けてくる魔法使いのような姿をしているフォルに話し掛ける将軍。まあ、誰かは分からないのは仕方がないだろう。

「わしか? わしは還らずの森の主であるフォルと申す者。あそこに居るルルの姉にあたる存在ぞ」

「なんと、あの魔法使いの少女の姉君でありますか!」

 そう反応した直後、将軍の顔色がみるみる変わっていく。

「か、還らずの森の主?!」

「今さら気が付いたか。じゃが、今はそこはどうでもいい事じゃな」

 フォルは実に冷たくあしらっている。

「先程聞こえてきた魔王というのはな、あそこにおるルナルの事を指して言うのじゃよ」

「なんですと?!」

 フォルがルナルの正体をばらすと、将軍は目を見開いてルナルの方を見る。

「なんと、人間の希望たるハンターが、魔王だと?!」

 実に信じられない事実に、ひどく震える将軍である。なにせ将軍は、先日のイプセルタ会議に参加していたルナルを見ているのだから。

「まあ、そこまで困惑するのもよく分かる。なにせあんな宣言をしでかした相手じゃからのう。でも、ルナルの奴も反省しておったわ。酔った勢いとはいえ、自分で言い放った事にどう落とし前をつけようかとな」

 フォルが全部ばらしていくと、将軍は言葉を失っていた。ルナルが魔王であり、あの宣言が酔った勢いによるものだったという事実に、相当にショックを受けたようである。

「驚くのも無理はないじゃろうな。だが、わしはあやつと直接話はしておるし、それ以外にもいろいろ伝え聞いておる。いろいろと抜けたところはあるが、あやつの根本は優しいにあふれておる。それがゆえに、今回のような事態を引き起こしたのじゃがな」

「な、なるほど……」

 フォルの言葉に納得している将軍である。

「さて、話をしている時間も無くなってきた。対応しきれん魔族が出てきておるからな。おぬしも自分のやれることをするのだ」

「自分のやれる事……」

「そうじゃ、自分の主君を守るとか……な」

「はっ、陛下は無事か?!」

 フォルに言われてようやくそこに気が付く将軍。

「わしが時間を稼いではおるが、さすがに還らずの森ではないだけに、本来のような力を発揮できぬ。手遅れになる前に向かうとよい」

「はっ、感謝致しますぞ。全軍、陛下をお守りするのだ!」

 将軍たちは兵を率いて城の中へと入っていった。

「やれやれ、人間とは手間がかかるものじゃな」

「一番手間のかかるのが、あそこに居ますがね」

 将軍たちを見送ったフォルに話し掛ける声があった。

「おお、エウロパか。おぬしまで来るとはな」

「大体はマスター様のせいですよ。ドラゴン使いの荒い方ですからね、あの方は」

 ため息を吐きながら愚痴を漏らすエウロパに、つい同情をしてしまうフォルである。

「おぬしまで来たのなら、万が一にも魔族に勝ち目はあるまいて。城に近付く魔族を頼むぞ」

「ええ、分かりましたわ。フォルは無理をしないで下さいよ」

「分かっておるわ」

 話を終えたエウロパは城の方へと移動していった。

「さて、総力戦になってきたのう。ますますこの戦いの行方はお前さんにかかっておるようじゃぞ、ルナルよ」

 フォルはちらりと、ディランと戦うルナルの方へと視線を向けたのだった。

「マイアよ、よく見ておけ。あれがお前がかつて、いや今もか慕っている奴の今の姿だ」

「……はい」

 今にでも駆け寄りたいマイアをしっかりと抱き締めているフォル。もどかしい気持ちを抱きながらも、おとなしくそれに従って我慢するマイア。

 その二人の視線の先では、ルナルとディランによる決闘が、いや人間と魔族の未来と魔王の座を賭けた熱い戦いが繰り広げられているのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ