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神槍のルナル  作者: 未羊
第五章『思いはひとつ!』

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第117話 謀略は儚く

 10数人程度の魔族にいいように遊ばれるイプセルタ兵の前に現れたのは、セイン、ルル、ソルト、アカーシャだった。ルルの側には見慣れない影がある。

「けけけっ、何か見た事のある顔が居るなぁ」

 空飛ぶ魔族が首を捻りながら喋っている。それなりに高さがあるというのに、よく見えるものだ。

 だが、次の瞬間だった。

「ぐえっ!」

 魔法が飛んできて魔族は撃墜されていた。まったく何が起きたのか分からない。

「な、何が起きたんだ!?」

「雑魚が舐めた口を利かないで下さい。耳障りです」

 ソルトが空に浮かぶ魔族たちに睨みつけるような視線を向けている。眉間にしわを激しく寄せる表情など、普段のソルトからしたら相当に想像できないものだった。

「けっ、怖いとはいっても、こっちが空に居る限りは魔法と弓くらいだろうが、ぐわあっ!」

 調子に乗っていた魔物が、一撃をぶつけられて吹き飛ぶ。

「魔法や弓でなければ、何ですか?」

 アカーシャが剣を力いっぱい突いていた。魔族はその衝撃波だけで吹き飛ばされたのである。

「ふん、相変わらずの化け物っぷりだな。ソルト、アカーシャ」

 その様子を見ていた感想らしき声が聞こえてくる。うまく空飛ぶ魔族たちで気を逸らせていたようだ。知らない間に魔族の本体がイプセルタ城に到達していたのである。

「ディラン、お前は……」

 ギロリと睨みつけるアカーシャ。

「な、なんだ。知り合いなのか?」

 魔族を率いて姿を見せたディランとソルトたちのやり取りを見て、将軍がきょろきょろとしている。

 だが、次の瞬間、その意識もある場所に引きつけられてしまう。

 ディランの背後に、急に柱が立てられたのだ。

「なっ!?」

 そこにあった姿に驚かされるソルトたち。そこにあったのはルナルたちが磔にされた姿だったのだ。だが、これに驚いていない人物が一人だけ居たのだ。

「ちがう。あれはよく似せた人形。魔力を感じないですから」

「どういう事だ?」

 ルルの呟きに隣に居るセインが反応する。

「黙って騙されていて下さい。あいつはきっとまだ何か企んでいます」

 セインの問い掛けには答えずに、厳しく反応するルル。普段からすれば考えられないルルの態度に、セインは仕方なく口を閉じた。

「ディラン様……」

 ルルにしがみつくようにしながら、マイアはディランの事を見ていた。

 マイアは今すぐにでもディランに駆け寄りたかった。しかし、今はその時ではない。必死にルルの陰で耐えているのだった。

「そ、そんな。ルナル殿がなんてお姿に……」

 ところが、ルナルの姿を見た事のあるイプセルタの兵たちにとってはかなり効いているようだ。

「ルナル様がお前ごときにやられるわけがない。ふざけた真似はよしてもらおうか」

 アカーシャが剣を構えてディランを睨みつける。だが、そんな睨みもディランには通じず、それどころか余裕の態度を崩さなかった。

「ふん、これを見てもそう言い切れるかな」

 ディランが何やら詠唱を始める。嫌な予感がしたアカーシャとソルトが攻撃を仕掛けるが、配下の魔物たちの抵抗に遭い未遂に終わってしまう。さすがに一人でいくらでも相手にできるとはいっても、大勢で抵抗されるとそう簡単にいくものではなかった。

「くっ、そんなに必死に守るとは、ディランが隙の大きな魔法を使おうとしているのは確かだ。早めに潰すぞ」

 アカーシャそう言った瞬間だった。

 がくんとアカーシャとソルトの体が崩れ落ちる。

「なん……だ。力が入……らない?」

「どういう事ですか?」

 アカーシャとソルトが立っていられない状態になっているが、周りの人間たちには何の影響もない。一体これはどういうことなのか。

「ふん、ディラン様の使っておられる魔法は魔族にのみ影響する魔法よ。俺たちはディラン様に忠誠を誓っているから、なんともないのだがな!」

「な、なんだと?!」

 ディランの部下の一人が大声で笑いながら魔法の正体を話す。すると、将軍たちイプセルタの兵士たちがアカーシャとソルトに視線を向けている。

「そいつらも魔族なのだ。ディラン様に逆らう愚か者のな!」

 魔族の告げた言葉に、驚きを隠せない兵士たち。だが、もとより正体を知るセインとルルはまったく動じていなかった。

「はっ、どっちが愚か者だっていうんだろうな」

「まったくです。アカーシャさんもソルトさんも、とても素晴らしい人たちです」

 ルルはそう言い切ると、何やら魔法を唱え始める。

 だが、ディランもまだ魔法の詠唱中で指示が出せないし、魔族たちは動けないとはいえソルトとアカーシャの二人を警戒していた。

「魔法よ、すべて掻き消えろ! イレース!」

 ルルが魔法を発動させる。

「なにぃっ!?」

 ルルから放たれた魔法が辺り一帯を包み込む。その威力にディランもつい詠唱を中断させてしまった。

 すると、この魔法に巻き込まれた磔がその正体を現す。

「グギギ、ミーターナー?」

「なんと、あれも魔物だったのか!」

「ルナル様がそんな簡単にやられるわけがないんです。私を騙そうたってそうはいきませんよ」

 化けていた人形に対して、ルルが怒りを向けている。

「ふん、こうなったら皆殺しだ。イプセルタを血の海に沈めろ!」

 ディランは完全に頭に血がのぼっていた。企んでいた策をすべて台無しにされて、実力行使に移ったのだ。

 この号令で、魔族たちは一斉にイプセルタ城へと集結していくのだった。

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