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神槍のルナル  作者: 未羊
第一章『ハンター・ルナル』

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第10話 ギルド会議

 入口の扉が開いて、たくさんのハンターが入ってくる。

 鎧兜で全身を包んだ者、筋骨隆々な者、ローブを身にまとった魔術師、目も眩むほどに妖麗な者など、その姿は多種多様で、アルファガドの人材の豊富さを物語っている。

「よっ、久しぶりだな、お前ら」

 そのハンターたちにマスターが気さくに声を掛けると、

「お久しぶりでございますな。マスターも相変わらずお変わりがないようで」

 その中の一人がマスターに挨拶を返してきた。

「お久しぶりですね、スードさん、みなさん」

 マスターに挨拶を返してきた人物に、ルナルは名前を呼んで挨拶をする。

「おお、ルナルじゃないか。久しぶりだな。いろんな噂が聞こえてくるが、大活躍らしいじゃないか」

「いやはや、どんな噂が出ているのですかね……」

 スードからの返しに、ルナルは苦笑いをしている。そして、拠点に入って来た面々を見回している。

「それにしても、アルファガドのほぼ全員がこうやって揃うなんて、まずありえないんじゃないですか?」

 そう、拠点で酒を煽っている者も今しがた入ってきた者も、この場に居るほとんどがアルファガド所属のハンターである。こうやって見てみると、かなりの大所帯だという事が分かる。一応酒場として一般開放しているので、場に居るほとんどがというわけである。

「がーっはっはっはっはっ! ルナルが依頼を終えて戻ってくる頃だと思って、俺が招集をかけておいたんだ。どうだ見事なタイミングだろう?」

 自慢げに大声で笑うマスターの姿に、ルナルは本気で引いて黙り込んでいる。

 それもそうだろう。ベティスからペンタホーンの出没場所までは徒歩で4日ほどの距離だ。歩いて往復すればそれだけで8日間掛かる。だというのに、今日はまだ5日目だ。まさかこの男、ペンタホーンに乗って戻ってくる事を読んでいたのだろうか。その怪しさだからこそ、ルナルはドン引きしているのである。

 その横でスードがアカーシャに声を掛けている。

「アカーシャが居るとは珍しいな。今日ははどうしたんだ?」

「失礼な。あたしはルナル様の補佐なんだ。一緒に居て何か問題でも?」

 アカーシャは睨むよう冷めた視線を向けながら、スードへ言葉を返す。

 実はこのアカーシャ、こういう態度と容姿が相まって、一部の男性陣から人気らしく、今もまさに数名の男性ハンターたちがハートを射抜かれていた。

「はあ……、とりあえず座って話をしませんかね。一応ここにはギルド以外の人間も出入りするわけですし、立っていたら邪魔になります」

「まぁそうだな。適当に席に着くとしようか」

 状況をスルーしてため息を吐きながら着席を促してくるルナルの言葉に、アルファガドのハンターたちは素直に従っていた。それに伴って、カウンターとその辺りのテーブル席は、アルファガドのメンバーによって占拠された。

 やがて、酒や料理を囲みながら、ハンターたちは盛り上がり始めた。

「それにしても、最近は魔物とかの討伐依頼が増えたよな」

「ああ、魔王の言葉の影響で、魔族どもが勢いづいているからな」

「そうね。あれ以降、活動範囲や規模が以前とまったく比べ物にならないくらい広くなったわ」

 話で出てくるのは、やはり魔族に関する事ばかりである。

「しかしよう、肝心の魔王の情報はまったくねえよなぁ。お前らはどうだ?」

 その中で、一人が口にしたこの言葉。これに対するみんなの反応は同じ。ただただ首を横に振るだけだった。

 これだけ魔族が活発に動いているというのに、そこには一切魔王の関与が認められない。それがゆえに、皆が違和感を持っているのである。魔族というのは魔王の手下じゃなかったのかと。

「本当に、魔王の事に限って言えば、一切何も聞こえてこないな」

 スードがこう言うと、

「ルナルはどう思うよ?

 マスターがどういうわけか、ルナルに対して話題を振ってきた。急に話を振られて、ルナルは慌てている。

「ささ、さあ? 本格的な侵攻に備えて、準備でもしてるんじゃないですかね?」

 ルナル自身も情報を持っていないようで、適当に答えている。

「そういや、魔物といえば、外にペンタホーンが居たな。噂で聞いた通りめちゃくちゃおとなしいんだけど、あれ、誰が連れてきたんだ?」

 そんな最中、突如としてペンタホーンの話題が出る。

「あっ、それは私たちですね」

「えっ、ルナルたちのだったのか、あれって」

「おう、そうだぞ。ルナルたちはガンヌ街道に出ていたペンタホーンたちを見事落ち着かせる事に成功したんだよ」

 ペンタホーンの話題で話をしている最中、マスターが要らない口を挟み込んできた。ルナルが余計な事をしないでと言わんばかりに額を手で押さえている。

「ほう、あのみんなが諦めた依頼を……か」

 スードが顎を触りながらルナルを見ている。

「はい。今回の事で分かった事なのですが、どうやら魔眼石が使われていたようなのです。外に居るペンタホーンは魔眼石によって凶暴に変えられていたようなのです」

「魔眼石とな? また厄介なものを持ち出してきたものだな……。実物は?」

「ソルトに持たせて、現在分析中です。何にしても、この一件に関しては強力な魔族が背後に居る事は間違いなさそうです」

 あまりの事態に、さっきまでのお祭り騒ぎのような状況が一気に静まり返る。そのくらいに魔眼石というのは厄介な代物なのだ。

 今普通に存在している魔物でも、一介のハンターからしてみれば厄介な相手だ。それだというのに魔眼石のような魔法石まで持ち出されたとなると、厳しい戦いを強いられる事が想像に難くないのだ。

 空気が重くなって沈黙が続く中、一人のハンターがある事に気が付いて空気を変えようとする。

「ねえ、ルナル。あなたの隣の坊やは一体何者なんだい?」

 そう、ルナルの横で突っ伏したままのセインだった。

「そういや、なんか居るなとは思ったんだが、確かに誰なんだ、そいつは?」

 釣られるようにして話題がセインへと向いていく。

「ああ、この彼ですか? 彼は今回の依頼に出向く最中にたまたま出会った青年で、セインといいます。なんでもハンターを志しているそうで、資質無しなのですが、心意気を買って私が面倒を見る事にしたんですよ。ちなみに今回ペンタホーンを無事に捕獲できたのは、彼のおかげなんですよ」

「へえ。そいつはすごいね」

 ハンターたちから一斉に視線を浴びせられるセインだが、いまだに疲労で動けないでいる。

「ふーむ、ルナルが面倒を見るなら、資質無しだとしてもそこそこ鍛えられそうだな」

「しかし、肝心のマスターがどう見るやら……」

 どうやらルナルの行動を咎める者は居ないようで、すべてはギルドのマスターたるマスターに委ねられる。

「おう、ルナルが面倒見るっていう奴だ。俺は興味があるから入隊は認めるぞ」

「そうか、マスターがそう言うなら、あたいらに反対する理由はないね」

「まあ、そうだな」

 というわけで、マスターの一声でセインのアルファガドへの所属が決まったのだった。ただ、本人は疲れと眠気でそれどころではなかった。

「って事だ。新しい仲間の歓迎をしようじゃないか。俺のおごりだ、じゃんじゃん飲んでくれ!」

「おおーっ!」

 そんな事はどこ吹く風。マスターの一声で宴会が開かれてしまうのだった。

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