99.俺は誰なんだ
さっきまで王都でスライムの触手を吸収していたはずなのに気づいたら森の中にいた。
「なんでここに……くっ!?」
意識はどこか途切れ途切れになっているがただ一つどこかに帰りたいという気持ちは強かった。その結果森の中にいたのだろう。
曖昧な記憶のまま森の奥に進むとどこかで大きな音が聞こえた。
「はやく帰らないと……プレゼントが……」
音がする方に走るとそこには大きなスライムと子どもが戦っていた。
《ステータス》
[名前] #暴食__グラトニー__#スライム
[種族] 魔物/転生者
[能力値] 力S/S 魔力S/S 速度S/S
[スキル] 吸収、分解、分離、繁殖、擬態、槍戦士、盾使い、魔法使い、隠密
[状態] 意思消失
俺はやっと自分の帰るべきところに帰ることが出来たんだと思った。もう体は自然とスライムの元へ向かった。
「えっ、お兄ちゃん!?」
「にいちゃがなぜここにいるの!?」
なぜか子ども達は戦うのをやめて俺のところに寄ってきた。
「にいちゃ元気になったの?」
「動いても大丈夫?」
2人は俺を心配して寄ってきたのだろう。ただ、俺はこの子らのことを知らない。
「空? 海?」
俺は記憶の中にある人物の名前を探し当てたが子ども達の顔は暗いままだった。
「俺、帰らないとダメだからごめんね」
気づけば俺はスライムにどんどん引き込まれていた。
「お兄ちゃんそっちへ行っちゃだめ!」
「帰るとこはそっちじゃないよ!」
2人は俺を必死に引っ張っていた。ああ、邪魔だ。
2人をそのまま突き放すと体が小さい2人は勢いよく転んだ。
その姿を見て急に頭の中に雷が落ちた気がした。
「ああああぁぁぁぁ!」
突然の頭痛にその場で崩れ落ちた。
「お兄ちゃん!」
「にいちゃ!」
そんな俺に2人はまた走って寄ってきた。
「ニア? ロン? 今までどこに行ってたんだよ!」
目の前にいた2人を俺は大事に抱き寄せた。
「元に戻ったの?」
「戻ったって何かあったんか?」
ロンとニアは不思議そうな顔で俺を見ていた。
「さっきまでにいちゃおかしくなってたよ?」
「おかしくなってた? 俺はいつも通りだぞ?」
ロンは俺がおかしいと訳の分からないことを言っている。
「とりあえずあいつをどうにかするのが先か」
目の前にいるスライムに向けて短剣を構えた。
「お兄ちゃんあいつは武器での攻撃が効かないよ」
「じゃあニアが主体か」
ロンと共にスライムに飛び込んだ。
「にいちゃ足が速くなったね」
ロンに言われてから思ったが、確かにこの間より体が軽くなっている。
「たくさん寝たからかな!」
「ははは、にいちゃらしいね」
俺達はスライムの触手を切り落としながらニアの魔法が発動するのを待っていた。
「準備できたよ!」
「よし、ロン下がるぞ!」
俺は後方に大きく下がるとすぐに魔法陣がスライムの頭上に展開された。
「ダイヤモンドダスト」
魔法陣からは雪が降り注ぐとすぐに辺りは凍っていた。ニアの最も強い魔法なんだろう。
「にいちゃこれで――」
スライムは動かなくなるとロンは俺の方に走ってきた。
「ロンまだダメ!」
ニアの声とともにスライムはロンに触手を伸ばしてきた。
「もうその手は効かないよ」
俺はスキル玉を発動させ触手を切り捨てた。俺は同じ失敗を繰り返さないからな。
その後もスキル玉を変えてニアの魔法を何度もスライムに与えるがスライムは何事もないように動き出しては攻撃を繰り返した。
逃げる隙間も与えることなくスライムは常に攻撃してくるのだ。
「にいちゃどうしたらいいの」
「お兄ちゃんこのままじゃ勝てないよ」
ロンとニアはどうすればいいのか考えているがスライムを倒す方法が見つからないようだ。
「そうか……なら仕方ないか」
俺は武器をアイテムボックスに入れるとスライムの方へ少しずつ近づいた。スライムも何か感じているのだろうか触手での攻撃を緩めた。
「2人ともちゃんと聞いてね」
「にいちゃ?」
「お兄ちゃんどこ行くの?」
「俺は絶対に戻ってくるからちゃんとお留守番してるんだよ」
「お兄ちゃん待ってよ!」
「ロン、この間した男の約束だ。 お兄ちゃんなんだからニアをしっかり守ってくれよ」
「にいちゃはどうするんだよ!」
「俺は大丈夫だ」
ロンは俺の方を見て強く頷いていた。いつのまにか大きくなり、男らしくなってきた姿に俺は安心した。
「ロン離して! お兄ちゃんがまたどっか行っちゃうよ! ねえ、お兄ちゃん!」
ロンに捕まれ身動きが取れなくても、ニアは必死に俺を掴もうと手を伸ばしていた。
「ははは、やっと会えましたね。 みんなお父さんの帰りを待ってますよ」
今も若干記憶が曖昧になっているが俺はこのスライム……いや、この人の人生を直接見たから知っている。
俺の心は早く家族の元へ返してあげたいという気持ちでいっぱいだ。
俺はスライムの核である魔石に手を伸ばした。
「お兄ちゃん! 待ってよ! お兄ちゃん!」
ニアの声がずっと響く中、スライムは大きく膨れ上がり俺を飲み込んだ。
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