86.モテ期?
俺は宿屋の店主に出て行くことを説明しているとニアはウサギの獣人と手を繋いで降りてきた。俺がいない間に仲良くなったのだろう。
「あのー」
「どうしたの?」
ウサギの獣人は俺に何か話したいことがあるのかズボンを引っ張ってきた。
「さっきは酷いことばかり言ってごめんなさい」
「ん? 何か言われたかな?」
俺は何のことを言っているのか分からなかったがとりあえず大きく立っている耳を撫でておいた。
ロンやニアと違ってどことなく毛ざわりが違うのは獣人毎の特徴なんだろうか。
「お兄さんに買ってもらわなくてもいいから……私をお兄さんのお嫁さんにしてもいいんだからね!」
「へっ!?」
突然の出来事に俺は声が出なくなっていた。
「これでミンちゃんも私のライバルだね」
ニアは事前に聞いていたのだろうか。いつのまにか俺の取り合いになっていた。
「にいちゃ達こんなところで何してるの?」
そんなから階段を降りてきたロンは不思議そうな顔でこっちを見ていた。いや、俺もどういう状況なのかまだ理解できていないのだ。
「お前さんはこんな何もわからないような幼い子を買う趣味があったんか……」
「お世話になりました。 早く行くよ!」
勝手に話を盗み聞きしていた宿屋の店主も誤解していたため、俺達は逃げるように宿屋を後にした。
俺達は外に出ると待っていた獣人達は俺達を見ると驚いた表情をしていた。
「ミン!?」
「どうしてみんなもここにいるの?」
そういえばウサギの獣人であるミンに説明をしていなかった。
「ああ、さっき色々あってね」
ミンは仲間の元へ駆け寄ると嬉しそうに抱きついた。
「みんなも助けてもらったの?」
「そうなの! いきなり扉から現れると颯爽と助けてくれたんだ」
少女とミンは仲が良いのかお互い助けてもらった経緯を話していた。
「いや、あれは幽霊に怯えぐむむぅぅ」
他の獣人が少年の口を押さえていた。獣人達よナイス判断だ。
「やっぱりお兄さんはすごいんだね」
ミンは俺の腰へ抱きついてくると少女はなぜかムスッとした顔をしていた。
「お兄さんは私の勇者なんだからね」
すると少女は反対側から抱きついてきたのだ。勇者って言われるとどこか背中が痒く感じるが嫌な気持ちではなかった。
実際に俺は勇者になることを夢見てたからな。
「ふふふ、ハリスはまだまだだね。 もうお兄さんは私の旦那さんなんだからね」
「旦那さん……なら私もお嫁さんになるもん!」
「お兄さんが良いって言わない限りはお嫁さんにはなれないんだからね!」
どこか不穏な空気になっていたところをゴードンは楽しそうに見ていた。
「ゴードンさん助けてくださいよ」
「ははは、元気な子ばかりで楽しみだよ。 ちゃんと勉強して立派に成長しないとウォーレンくんのお嫁さんにはなれないぞー」
俺はゴードンに助けを求めたがゴードンは笑っているだけだった。
親のいない子ども達の面倒を見るっていうぐらいだからゴードン自体も子どもの扱いに慣れているようだ。
それにしても人生初めてのモテ期がきたのだろう。嫌なわけではないがもう少し歳が近いお姉さんに好かれたいものだ。
「じゃあお腹いっぱいご飯を食べに行こうか!」
ゴードンの声にさっきからお腹がずっと鳴っていた子ども達の目はキラキラとしていた。
「お兄さん早く行こう!」
ミンとハリスは俺を強く引っ張ろうとしていた。
そんな中ニアは1人俯いて立ち止まっている。
「ちょっとごめんね」
俺はミンとハリスの手を離すとニアの元へ向かった。
「お兄ちゃん……」
「ニアも行こうか」
俺はニアを抱きかかえると嬉しそうに微笑んでいた。
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