133.各々の思い ※一部ニア視点
初めて使った魔法に私は驚いた。自分が立っていたところを中心に回りが凍てついてた。
「あのー、大丈夫ですか?」
「だだ……大丈夫じゃないわよ!」
「早く出して――」
防御魔法の結界の中で凍えている二人に声をかけたが、自分の状況がわかっていないためそのまま放置することにした。
彼女達なら自分でどうにかすることもできるだろうからな。ただ、結界を解除した瞬間、さらに続く急な寒さに驚くことになるだろう。
「じゃあ、お兄ちゃんのところに――」
早速お兄ちゃんのところに向かおうと近づくと遠くでロンと女性がお兄ちゃんが戦っているのを見守っていた。
私は警戒しながら近づくと二人は気づいた。
「あっ、ニア!」
「ロンはこんな人と――」
「先程はすみませんでした!」
「えっ?」
「私剣を握るとどうも意識が飛んでしまって……」
さっきまで私達を切りつけようとしていた女性はペコペコと頭を下げていた。彼女の話では剣を握ると自分の思いが勝手に出て動いてしまうらしい。
私達を襲ってきたのも今お兄ちゃんと戦っている人を馬鹿にされたと思っていた。
「どうやら不安から襲っちゃったらしいよ?」
「不安?」
「あの人に尽くさないと捨てられると思ってたらしい。見ての通りにいちゃにどことなく執着してるからさ」
言われてみればパーティーから追い出したなら会ってもわざわざ声をかける必要もないはずだ。むしろ私ならどこかで会っても気まずいだけだ。
「この人もだけど好かれることに一生懸命になると前が見えなくなるんだろうね」
「恋は盲目ってやつね」
それだけ好かれているならなぜお兄ちゃんのことをあんな風になるまで追い詰めたのだろうか。
好きな人が夜になったら静かに震える姿は誰も見たくないはずだ。無意識に温もりを求めるお兄ちゃんも可愛いが元気な姿が一番だ。
「でも私はあなた達のことを許さないわよ。どれだけお兄ちゃんが辛い思いしていたのかこれから分かればいいのよ」
きっとこの戦いはお兄ちゃんが勝つと信じている。だからこそ負けたあの男はさらに苦しむことになるだろう。
自分よりずっと下ただと思っていた人に負けるって結構男としても屈辱だろうからな。
「お兄ちゃんがんばれー!」
私は大好きなお兄ちゃんに声をかけると気づいたのか手を振っていた。本当に余裕そうだった。
♢
どこからかニアの声が聞こえると仲良くアテナも含めて俺達の戦いを見守っていた。
俺は手を振るとロンとニアは嬉しそうだった。
「おいおい、俺の相手をしているのに余裕そうだな」
はい、実はかなり余裕なんです。アドルってこんなに弱かったのかと思うぐらい力も強くなければ速度も目で追えるぐらいだ。
「そんなに余裕ならこの力を見せてやるよ」
剣はさらに緑色に発光していた。パーティーにいる時からあの剣が気になっていたがアドルは教えてくれなかった。
だけど今の俺には鑑定があるからな。自分で調べることにした。
《ドレイン剣》
レア度 ★★★★★★
説明 禍々しい力を放つその剣は以前から魔王が使っていた剣と言われている。対象者を攻撃することで少しずつ能力を吸収して自身の力へと変換することができる。生命力の吸収は現在の段階ではまだできない。
持ち主 アドル
「ドレイン剣って……中々危ない武器だな」
「なんでそれをお前が知ってるんだ!?」
どうやら鑑定したことをそのまま口に出していたようだ。
「ああ、スキルを使ったからね」
「何かわからない外れスキルだったはずだろ?」
どうやらアドルは俺が鑑定したことに驚いているのだろう。無能で追放したはずの男が当たりスキルの鑑定を使っているからな。
「んー、俺の本当の力ってことかな?」
「そうか……でも勝つのは俺だからな」
ニヤリと笑ったアドルは剣を構え直し俺に向かって切りつけた。
「だから俺には――」
匠の短剣で剣を受け止めると力が自然と抜けて気づいたら膝を地面につけていた。
「ははは、俺はこの剣があればもっと強くなれるんだよ」
これがドレイン剣の戦い方なんだろう。俺はどこか背中から冷や汗が流れた。
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