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10.証券口座

 あれから俺は森の中まで薬草採取をすることにした。直接魔物と戦うことはできないが、匠の外套によって魔物に見つからずに採取ができることに気づいた。


 森に入ることで採取できる薬草の数も増え、魔法使いに必要な魔力ポーションを作るマナリーフなども採取でき、依頼報酬も増えてきている。


 マナリーフは魔素が多いところにしか生息しないため数は少ないが、匠の短剣であれば毎日採取できるため定期的に卸すことができる。


 時折モーリンに採取場所を聞かれるが、俺としては教える気は全くない。それほど採取に特化してお金を稼ぐことができるようになっていた。


 気づいたら俺の証券口座には大白金貨になるほどお金が貯まっていた。


 そろそろ宿屋を変えようかと思ったが、元々貧乏な生活に慣れている俺は特に変える必要性もなかった。


 そもそもお金を使わずに貯めていた理由が俺にはあった。それはルドルフの鍛冶屋にお金を入れることだ。


 外套を手に入れてからルドルフの鍛冶屋を確認すると配当が1から2になっていた。きっと見知らぬプレゼントはルドルフの鍛冶屋からもらったのは確かだろう。


 だからこそ検証も含めて今持っているお金を全て注ぎ込むつもりだ。


「さぁ、今度は何をくれるんだ?」


 俺はルドルフの鍛冶屋に全財産を入れることにした。しかし、毎回いつのまにかお金が無くなるためお金の入れ方がわからないのだ。


 気になるところは指値・成行・逆指値のボタンがあるぐらいだ。


 成行であれば保有数量が1増えると1500Gと表示されているが、指値だと値段の調整ができる仕組みになっていた。


 また、逆指値は指定した値段以上になったら購入と説明が出ていた。


 初めてお金が消えているのではなくて、お金で訳の分からないものを購入していることを知った。ただ、これで強くなれるなら惜しまずお金を入れるつもりだ。


「今すぐ欲しいなら成行で安く欲しいなら指値ってことか。じゃあ、逆指値は何のためにあるんだ?」


 俺のスキルはやはり謎スキルなのは間違いなかった。


 とりあえず成行で半分のお金を入れて、残りの半分は少しだけ指値で安く設定して、お金を入れることにした。


「これで明日は何がもらえるかな?」


 俺はワクワクしながら眠りについた。しかし、その予想は簡単に裏切られたのだ。





 俺は寝ずにベッドの縁に腰掛けて荷物が置かれるのを待っていた。どこから現れるのか気になっていたのだ。


 しかし、朝になっても荷物が届くことはなかった。わかったことは保有数量が70になっていたのだ。どうやら指値で設定したものも購入したらしい。


 それなのにずっと起きてても何も荷物が届かなかったのだ。


「ウォーくんおは……すごい顔だけど大丈夫?」


「あはは、寝れなくてずっと起きてました」


 どうやら寝不足で顔が酷いことになっていたらしい。確かにいつもより目が開かないからよっぽど体も寝不足だと信号を出していた。


「今日は依頼やめたらどう?」


「お金がないので行ってきます」


 昨日も大金を稼いだのに、俺の話を聞いてリーチェは首を傾げていた。俺は全財産をスキルの中に入れてしまったのだ。だから今日は少しでもお金を稼がないと、生活できなくなってしまう。


 俺は日課になりつつあるモーリンの薬屋に向かった。


「モーリンさんおはようございます」


「ウォーレンおは……すごい顔だね?」


 どうやらモーリンから見ても酷い顔をしているらしい。そこまで言われると休んだ方がいいのかもしれない。


「今日の依頼は――」


「今日は休みなさい。その様子じゃ魔物に見つかったら死んでしまうぞ?」


 どうやらモーリンは俺の心配をしていた。ただ、匠の外套を着ている俺は今まで見つかったことがない。


「すぐに帰ってくるから大丈夫だよ」


「ウォーレンが言うなら仕方ないが、ちゃんと帰ってくるんだぞ」


 俺はモーリンから袋を受け取ると、いつも通りに街の外へ出て森の中に入って行った。


 森の中は相変わらず静かだ。俺は眠い目を擦りながらいつも通りのルートで薬草の回収をしていた。


「おい、早く逃げないとやばいぞ」


「ヒロトのせいでしょ! 私は知らないからね」


 今日もいつものように年下の冒険者がこっちに走ってきていた。


 また、今日も普段通りにゴブリンを追いかけているのだと思い俺はそのまま採取を続けた。


「はぁー、あいつらいつまでゴブリンと追いかけっこをしてるんだよ」


 寝不足でなければ気づいただろうし、過信をしてなければこんなことにはならなかっただろう。


「おい、俺の薬草――」


 俺が顔をあげるとそこにはゴブリンの集団が目の前にいた。俺は急いで体の向きを変えようとするが、気づいたら逃げる場所もなく道は塞がれている。


 俺はゴブリン達に囲まれていたのだ。


「グギャギャ!」


 俺は急いで短剣を構えると集団の中から他のゴブリンより一際体が大きいゴブリンが出てきた。


「ああ、終わった……」


 俺の目の前にはゴブリンの上位種であるゴブリンジェネラルがニヤリとこちらを見て笑っていた。


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