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卒業

20.卒業


 受験と言う戦いを終え、最早卒業を待つのみとなった由香里達。クラスの中にはまだ数人進路が確定していない者もいたが、そんな心境でもやはり卒業は人生の節目。卒業式を間近に迎えた一同はなんとなくそわそわしていた。そしてそんな中で常にアクティブな桜子が大人しくしている筈も無く…

「ねえ由香里っ!卒業旅行どこ行こっか?」

楽しげな声でそんな言葉を口走る桜子。その手にはいくつものパンフや旅行雑誌が握られていた。しかし桜子が盛り上がっているの理由はそれだけでは無い。

「そう言えば由香里、りなもあっちの高校卒業したらすぐにこっち来るんだってさ!だから一緒に卒業旅行に行けるみたいなの!だからどこに行けばいいか一緒に考えよう!」

思いがけない桜子の言葉に、由香里の顔もふわっと明るさを増した。そして

「まあ、それはとても楽しみですねぇ。では私も一緒に考えましょう」

そう言いながら、由香里も鞄の中から一冊のガイドブックを取り出した。

「お、何気に由香里もやる気だね?」

「はい、もちろんでございますよ」

 そう言いながら由香里はガイドブックをめくり

「こちらがいいと思うのですが、如何でしょうか?」

そう言いながら由香里が指差すのは、最早卒業旅行の定番とも言えそうな超巨大テーマパークだった。

「へぇー、由香里がここを選ぶってのはちょっと意外な気がするかも。でもそう言えば一緒に行ったコト無いし、高校最後の思い出にいっちょ行きますか!」

「はい、実は私初めてなのです。ですから是非一度、皆様とご一緒したいと思いまして」

「そうなの?うん、じゃあ決まり!ってかワタシも結構久々なんだよね。あーどうしよ!なんだか今からワクワクしてきちゃった!」

「あらまぁ、それは気の早いことですねぇ。とは言え、実は私も既にわくわくしております」

「だよねー!流石は大親友!」

最早日常となっていた二人のやり取りを、いつの間にか人の輪が取り囲む。今だ進路が未定な者は若干焦りを覚えつつも、楽しげな会話についつい耳を傾け、ハッと我に返っては浮かれている自分の頬を叩いたりしていた。


 体育館の入り口で由香里は不意に立ち止まる。怪訝な顔をする桜子に、由香里は微笑みながら

「私とサクラさんが初めて出会ったのはこの場所でしたね。まるで昨日の事の様にはっきりと覚えておりますよ」

懐かしげにそう言うと

「うん、ワタシも忘れない!大好きな由香里に出会えたこの場所を!」

そう言いながら、桜子は由香里を力強く抱き締めた。感極まったのか、今にも泣きそうな顔で。


 卒業証書授与式は粛々と進み、在校生の送辞に応えるべく、卒業生代表として三船が壇上に立った。

「三船っち、ガンバレ!」

そう激励する桜子の声は囁く様な小さなものだったにも関わらず、壇上の三船は桜子に向かって微笑みを浮かべた。三船は手にしていた原稿を静かに胸ポケットへしまい、館内をゆっくり見回す。そしてふうっと深呼吸をすると、ほんの数秒目を閉じ…すっとお辞儀をした。そして落ち着いた声で答辞を述べる。

「答辞、卒業生代表三船蛍子。本日は、私達の為にこの様な素晴らしい式を開いて頂き、誠にありがとうございます。先生方、来賓の方々、そして在校生の皆さん、素晴らしい送辞、本当にありがとうございました。本来ならばご挨拶及びお礼の言葉にてお答えするべきかとは思われるのですが、本日のこの場に限り、私の思いをお話しさせて頂きます。決してお時間は取らせませんので、どうかお許し下さい」

そう言いながら三船は再び頭を下げる。若干のざわめきは起きたが、凛とした三船の声音に、一同は耳を傾ける。

「私は、とても引っ込み思案なつまらない一生徒でした。ですが、ほんの少しの勇気を出して周りに自分を知って貰う事で、それからの学校生活は一変しました。とは言え、もしかしたら本当の自分をさらけ出す事で、結果的に後悔する事になる事もあるでしょう。だけど、私達はまだ高校生です。後悔なんていくらでもすればいいのです。むしろ何もせずに無為な日々を過ごし、その事を後悔するのが何よりも勿体無い事だと、私はそう思います。ですから在校生の皆さん、失敗や後悔を恐れず、どうか本当の自分を高め、その本当の自分を周りの皆に知って貰う努力をしてみて下さい。それはきっと、輝かしい明日へと繋がる…私はそう信じています。ご清聴ありがとうございました」

言い終わるなり三船は頭を下げた。答辞と言うには余りに型破りな三船の言葉に来賓は互いの顔を見合わせるが、教師一同…特に塩谷は満足そうな笑みを浮かべ、生徒一同からは歓声にも似た声が上がった。


「三船さん、素晴らしい答辞でしたね」

「うんうん、型通りの言葉なんて面白くも何とも無い!今の三船っちの言葉は皆の心に響いたよ!」

笑顔で三船を迎える由香里と桜子。それで緊張が解けたのか三船の膝からすうっと力が抜ける。倒れそうになる三船だったが、いつの間にかその背後に回り込んだ由香里がその体を支えて椅子に座らせ、三船はほっとした様に長く一息ついた。


 卒業式は滞りなく進み、卒業生一同は卒業証書を手に教室へと歩を進める。卒業証書の入った筒を手に談笑したり、それを手にチャンバラをしたり、卒業が現実となり涙を浮かべる者もいたりと様々ではあったが、誰もがその前途に期待を浮かべているのかの様に瞳を輝かせていた。


「えー、まずは皆さん、無事に卒業おめでとうございます」

一同の前で塩谷がにこやかな顔で告げる。そして

「正直な話、皆さんとのこの三年間はとても楽しかったですよ」

そう言った塩谷は笑みを浮かべてはいたものの、その瞳からは今にも涙が零れ落ちそうにうるうるしていたのを桜子は見逃さない。

「センセー、泣かないで!」

自らも泣きそうな顔で桜子が叫ぶ。するとそれが伝播したのか、何人もの生徒が啜り泣きを始めた。しかし次の瞬間…

「ぶぇっくしょん!」

塩谷は大きな声でくしゃみをした。そして教卓からボックスティッシュを取り出すと、大急ぎで目を拭い鼻をかむ。

「いやはや、花粉症には縁が無いと思っていたのですが、とうとう私もなってしまった様ですね。晴れの日にお見苦しい所をお見せしてしまい申し訳ありません」

そう言いながらも塩谷は次々にティッシュを取り出して鼻をかみ続ける。そして桜子は

「センセー…ぶち壊しだよ」

そんな言葉と共に机の上に突っ伏した。


 それぞれ心中に思う事はあれども、時間はそんな事はお構い無しに流れてゆく。早々に気を取り直した桜子は

「ねえ由香里、記念写真撮っとこうよ!」

そう言うが早いか由香里に頬を寄せると、手にしたデジカメのシャッターを切る。

「うん、二人とも美人に撮れてるね!」

桜子はモニターを見て満足げに笑みを浮かべると

「行こっ!」

今度は由香里の手を取って駆け出した。そして校内中を共に駆け回ると、思い出深い場所で立ち止まっては一緒に写真を撮った。でも何と言っても二人にとって思い出深いのは、何百日も共に汗を流した武道場だった。

「うーん、やっぱしみついたこのビミョーな臭いは消えないよねぇ」

その言葉と共に微妙な顔をする桜子。しかし言葉とは裏腹に、桜子はその空気を胸一杯に吸い込んだ。

「なんだかなぁ、クサいはずなのにこの空気好きなんだよねぇ」

「はい、私も大好きです。何しろここには、皆さんと共に流した汗の分だけ思い出が詰まっておりますから」

「思い出かぁ…そう言えばここだったね、由香里が初めて先輩方と手合せしたのは」

「はい、あの時は大変貴重な体験をさせて頂きました。今の私があるのも先輩方のお蔭です。それに…」

「それに?」

「サクラさんのような、大切なお友達がいてくれたからこそですね」

そう言いながら由香里は桜子の両手を握りしめた。一瞬戸惑った桜子だったが、桜子もその手を握り返す。

「それはこっちのセリフだよ。一緒にいてくれてありがとうね、由香里」

「それこそこちらの台詞ですよ。私と出会って下さって、本当に有難うございます」

二人はそう言って見つめあうと、どちらともなく笑みを浮かべ、一緒になって笑い出す。

そして

「ねえ由香里、最後にちょっとだけやってかない?」

「はい、私も今それを考えておりました」

二人は靴下を脱ぐと、一礼して誰もいない武道場へ足を踏み入れる。ひんやりとした畳の感触を踏みしめながら相対した二人は、笑みを浮かべつつも真剣な眼差しで相手を見つめる。

「お願いします」

声を揃えて礼をした二人。しかし


「はぁー…やっぱ勝てないかぁ」

 一瞬の内に桜子は畳の上に這いつくばっていた。由香里はその手を取って立たせると

「いえいえ、今のはなかなか鋭い攻撃でしたよ。私も読みを誤っていたら逆に倒されていたかもしれませんので」

「え、そう?…って言ってもなぁ、由香里ってばその読みを間違えないじゃん」

「そんな事はございませんよ、私も決して完璧な訳ではございません」

「そう…かなぁ?」

「はい、そうですよ。それよりも」

「それよりも?」

「そろそろ参りませんと、皆さん待ちくたびれてしまいますよ」

「えっ?あっ、そうだった!行こっ!」

 そう叫ぶと同時に桜子は駆け出し、由香里もその後を追う。


「お、来たぜ」

「ですね」

「あまり人を待たすのは、感心できんな」

大道が、三船が、そして南城が口を開く。他にも苦楽を共にした級友が待ち構えていたかの様に口を開く。

「さあ、最後の打ち上げ、行こうよっ!」

 その言葉に、由香里は笑みを浮かべ、桜子は全身全霊で叫ぶ。

「よっしゃー!みんな今日は盛り上がっていくよーーーっ!」

 その日カラオケで打ち上げをした面々ではあったが、それでは気が済まなかったのか、塩谷の終業と共にその身柄を確保すると、今度は塩谷も含めて「てっちゃん」に集合していた。


「おや先生お久しぶり!やんちゃな子供達との最後の打ち上げですか?肩の荷が下りた様でもあり、寂しくて仕方がない様でもありって感じじゃあないですか?」

相変わらずの勢いでまくしたてる哲子。その言葉に圧倒されつつも塩谷は笑みを浮かべ

「ええ、まったくもってその通りですよ」

そんな言葉と共にビールを飲み干した。その顔には確かに笑みが浮かんでいたのだが、やはり寂しいのだろうか、瞳だけは常に教え子の姿を次々に追っていた。

「ふふっ、本当にいい先生に恵まれたね」

哲子はそう呟きながらも忙しく立ち回っていた。

 暫くは皆思い思いに食べたり飲んだり喋ったりしていたが、ふとした拍子に沈黙が訪れる。その時は誰もが懐かしげに眼を細め、小さな笑みを浮かべたり、頷きあったりしていた。普段ならば桜子が盛り上げ様と奮戦する状況だったにも関わらず、この場に限っては誰よりも、桜子自身が瞳をうるうるさせていた。視線を次々に移しながらも、誰にも同じように切なそうな眼差しを向ける。

「サクラさん?」

桜子の様子を見た由香里がその顔を覗き込むと

「由香里…由香里ぃーーーっ!」

いきなり叫ぶ桜子。そして由香里に抱き付くと同時に泣き叫ぶ。

「嫌だよぉ!皆とお別れなんてしたくない!ずっとずっとこのクラスで楽しくやっていきたい…そんな事出来ないのは分かってる。でも嫌なものは嫌なの!嫌なんだよぉ!」

 常に周りに明るさを振りまいていた桜子。その明るすぎるキャラが、突然誰もが見た事の無い顔で泣きじゃくる。

 誰もが呆気に取られ、呆然とその状況を見守っていた。次第に泣き叫ぶ声は嗚咽に変わる。そして、由香里は母親の様な笑みを浮かべながら桜子の頭を撫でていた。その様子に一緒になって涙を流す者もいたが、ほとんどの者は戸惑いながらも優しい眼差しで見守っていた。


 不意に頭をポンポンと叩かれ、桜子は顔を上げる。

「まぁ、泣くなとは言わねえけどさ、どうせなら笑顔で締めねえか?」

そう言いながら自分を見下ろしていた南城の姿に気付いた桜子は、その顔に今まで一度たりとも見た事の無い優しい笑みが浮かんでいた事に驚く。更にその後ろに大道の姿を認めたのだが、その顔にはありありと出遅れた感が浮かんでいる事に気付き、その瞬間桜子の顔にいつもの明るさが戻った。

「なーによ、カッコつけちゃって」

桜子はそう言いながら南城の手を払いのけるが

「でも…アリガトね!」

満面の笑みで南城に応えると、今度は大道に向かってあかんべぇをしてみせる。

「んなっ…!このヤロウ…」

 大道は何とも言えない微妙な顔でそんな声を漏らすと、大きな溜息と共に座り込んだ。


 その後、すっかり調子を取り戻した桜子は場を大いに盛り上げ、打ち上げは誰もが笑顔の内に終了した。そのまま帰る者もいれば、名残惜しいのかいつまでも立ち話を続ける者や、早々に次の会場へ向かう者もいた。


「おやまぁ、先生の教え子はもういつでも飛び立てる力を持ってるみたいだねぇ」

「はい。とは言え、それは私の力ではありません。皆さんが常に全力で事に当たり、それを自らの力で解決しようと努力し続けてきたからこそ、飛び立てる力が備わったのです。ですから、誰かが泣いても私は悠々と飲んでいられる訳ですよ」

 生徒一同を見送った後、塩谷は哲子に向かい、嬉しそうな顔でそんな言葉を口にした。

「でもね先生、生徒が努力し続ける様に頑張れたのは、きっと先生の力があったからじゃないんですか?」

「いえいえ、私の力なんか微々たる物です」

「でも、きっと頑張るきっかけ位は与えてるはずですよ」

「そうでしたら…嬉しいですねぇ」

「でしょう?だから今夜はもうちょっとサービスしときますね!」

「おやおや、よろしいのですか?」

「もちろん。ちょっと待ってて下さいね!」


その時、由香里や桜子、それに三船がその様子を微笑みながら見守っていた事には、流石の塩谷も気付いていなかった。


「ねえ由香里?」

 超巨大なキャンディを舐めながら桜子が口を開く。

「はい、なんでしょうか?」

由香里はよほど喉が渇いていたのか、そう答えるまでに二秒ほど手に持っていたドリンクを口にしていた。


今日は三月末だと言うのに、まるで初夏を思わせる陽気。由香里の希望で来たテーマパークは、春休みと言う事もあり大勢の若者や親子連れで賑わっていた。そんな陽気の下、由香里と桜子はベンチに腰を下ろしてまったりとしていた。

「由香里はさぁ…目的があって進学するんだよね?今更だけど」

「はい。私もお兄様に負けない様、単身外国を訪れてみたいのです。そうやって外からこの国を見る事で、より一層、日本の事を理解できると思いまして。そしてその為にはせめてその国の言葉くらいはお話しできないといけないと思いましたので」

「だよねぇ…ワタシなんか英語ペラペラならちょっと格好良さそうだからってのが本音だし、こんなんで一緒に進学していいのかどうか、今更悩んでるのよね」

 そう言いながら溜息をつく桜子だったが、由香里はにっこりと微笑む。

「英語を話せるようになる。これは既に立派な目的ではありませんか」

「え?まぁ…そう言われれば、確かにそうなのかもしれないけど」

「それに、私も進学してから考えが変わる事だってあり得る事ですし、ですから…」

「うん」

「次は、あれに乗りましょう」

「へっ?」

 桜子の返事を待たずに、由香里はその手を取って立ち上がり、すすっと歩き出した。

「さあ、参りましょう」

「ちょ、由香里?」

「進学してからの事は進学してからでないと分かりません。今は今出来る事を精一杯に、ですから精一杯楽しみましょう」

「…由香里」

 桜子はその言葉と同時に由香里の手をしっかりと握り返す。そして今度は自分が先に立って歩き出した。暫く歩くと、水路を挟んだ道に差し掛かった所で由香里が足を止め、対岸に視線を向ける。 

「ほら、あちらで三船さんと大道さんが手を振っていますよ」

 そう言いながら由香里も手を振ると、その視線の先では三船と大道、他にも数人の顔見知りが手を振っていた。

「あ、おーーーい!」

 桜子は由香里と手をつないだままで駆け寄ると

「ねえ三船っち、由香里がアレに乗りたいって言ってるんだけど、折角だから皆で乗らない?なんなら大道も一緒でいいし」

「一緒でいいしとか言うな!」

そう言いながら大道は鼻を鳴らすが、その顔には笑みが浮かんでいた。

「まぁいい。お誘いとあればご一緒致しましょう」

「そうそう、そう来なくっちゃ!ほら皆行こうよ!」

 駆け出す桜子の後を大道が追う。数人が一緒に駆け出す後を、由香里と三船は笑みを浮かべながら見守っていた。そしてポツリと三船が口を開く。

「こうして、皆で遊ぶのも最後なんだよね。やっぱりちょっと寂しいな」

 そう言いながら目を細める三船だったが、由香里は笑顔で答える。

「これから先、私達みんながそれぞれの道に進むのは、素晴らしい事です。もちろん私にも寂しいという気持ちは無い訳ではありません。ですが、しばしの別れはそれぞれが己を高める為の時間だと考えれば、きっと寂しがっている暇などありませんよ」

 にっこりと微笑む由香里の顔に何かを見い出したかのように、三船の顔にも笑みが浮かんだ。そして

「そう…その通りだよね!だから今度会うまでに、きっと私は見違える様になっていてみせる!」

「はい、その意気です。ですが、私も負けるつもりはございません。何年かの後、同窓会などでお会いする機会がございましたら、お互いの成長を認め合える様な、そんな再開をしたいものですね」

「うん!」

「では、私達も参りましょう」

 二人が駆け出そうとしたその時、桜子が振り返って大きく手を振る。

「おーい!二人とも早くしないと置いてっちゃうよー!」

 その言葉に二人は顔を見合わせてクスッと笑い、一緒に駆け出した。

「ちょっと待ってー!」

「ただいま参りますので」

「待ちませーん!さあ皆行くよっ!アレはただでさえ長い事並ばなきゃならないアトラクションなんだから、さっさと並ばなくっちゃ乗れなくなっちゃうよ!」

 桜子は言葉とは裏腹に由香里達の下へ駆け戻り、素早くその背後に回り込むと

「さあ急いでっ!」

そう言いながら二人の背中を押す。押しながら笑う桜子と、押されながら笑う由香里と三船。そしてその先では「仲間」が手を振っている。それを見て由香里はふっと言葉を漏らした。

「ずっと…一緒ですね」

 囁く様な小さな言葉。しかし桜子はすかさず二人の顔を引き寄せると、その頬に頬ずりしながら満面の笑みを浮かべる。すると由香里も三船も笑顔で頬を寄せた。互いに無言ではあったが、それで全てが事足りていた。


 それから時は流れ、再び桜の咲き誇る季節…


「おっはよー!由香里!」

「はい、おはようございます。サクラさん」

 少しだけ大人になった二人が、今までと変わらない挨拶を交わす。今までと変わらない笑顔で。


色々あんな事やこんな事を巻き起こした由香里と桜子。


そんな二人もとうとう卒業してしまいました。


これからもいろんな事をやってしまうとは思いますが、それはまた別の機会に。


二人の今後を色々と想像して頂ければ幸いです。

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