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シャーロック・ホームズは縛れない

【十戒その六】探偵は偶然や勘によって事件を解決してはならない。


これは難しいですね。偶然はどうしても発現してしまうものですし、それを活かせない探偵は二流と言わざるを得ません。また、事件そのものが偶発的に起こること、その割合の大きさは無視してしまって良いのでしょうか?


ノックスが言っているのは、犯人が隠し持っていた凶器をみんなの前で落としてしまうとかそういうことだと捉えています。それは推理小説というか小説としてアウトなので、ことさら注意するほどのことではないでしょう。


そして勘というのは積み上げた経験値からの産物であり、ラッキーパンチのように扱うことはできません。流石にコインを投げて決めるようであれば別ですが、そんな本読んだことないです。


ホームズはポツンと建てられた館の中でじっと考えているわけではありません。基本、行動の探偵なので、幸運そして不運にぶつかる機会は多くなります。それを捌いていくのもまた探偵の仕事なのです。




【十戒その七】探偵自身が犯人であってはならない。ただし犯人に変装するなどの場合は除く。


これは探偵が主人公であるかそうでないかで全く話が違ってきます。主人公であれば明らかなアンフェア。しかしそうでなければ問題ないでしょう。容疑者の一人としてカウントできます。物語としては医者や警察が犯人である方がよっぽど混乱を招きます。とはいっても、それがアンフェアとは思いませんが。


ホームズが犯人だった話はありません。変装はよくしています。達人の域です。

個人的には末期患者を装って犯人の口を割らせた話がベストです。




【十戒その八】探偵は読者に明かしていない手がかりによって事件を解決してはならない。


「そんなこともあろうかと、実は・・・」みたいなドンデモご都合主義ですね。確かに悪手です。


ホームズと一般人では洞察力の違いが大き過ぎるのが困りものですね。手がかりは明記されていますし、新たな発見を示唆する物言いはしっかり描写されているのですが、とてもじゃないですが凡夫には事件解決に辿り着くことはできません。



【十戒その九】探偵の助手にあたる人物(いわゆる『ワトソン役』)は自らの判断を全て読者に知らせねばならない。


いわゆる「信頼できない語り手」の禁止ですね。有名どころで言えば『ポートピア連続殺人事件』のヤスでしょうか。あれは手放しで称賛できます。「信頼できない語り手」がハマった時の面白さはすごいです。しかし、特定の行為を隠す文章は、大抵ただ読みづらいだけの小説になりがちです。ノックスの言う通り、全てを知らせることが無難でしょう。


シャーロック・ホームズシリーズは助手であるワトソンの一人称で語られていますが、ワトソンがこのルールに抵触するようなことは無いです。因みに例外として三人称の話が二編、ホームズによる一人称の話が二編あります。これ、豆知識ね。




【十戒その十】双子や一人二役の人物を出す場合、その存在をあらかじめ読者に伝えなければならない。


これはフェアといえばフェアであるけど・・・どうでしょう?まるで犯人宣言ではないですか。あれは同一人物ではないか?いや別人か?という疑問を抱かせる文章を書くのが小説家の腕の見せ所でしょう。


ホームズでの一人二役といえば『唇のねじれた男』ですかね。あの話で、ホームズが一人二役に気づいた瞬間に読者に知らせることは「十戒」的にセーフでも小説的にアウトですよ。全く面白くないです。




最後にロナルド・ノックス氏へ

貴方が作った「十戒」はシャーロック・ホームズを縛るに値しないものでした。ただ、貴方もそんなことは良く分かっていたはずです。ノックスさん。貴方がシャーロッキアン、つまり重度のホームズオタクだったこと、結構有名ですよ。学生時代にホームズについて論文を書きましたよね?それをコナン・ドイルに送りましたよね?シャーロッキアンでもそこまでする奴、なかなかいませんよ。良かったですね読んでもらった上に、返信までもらえて。コナン・ドイルから手紙を貰える読者なんてまずいないのですから。単純に羨ましいです。それでは、失礼いたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] コナンドイルからの手紙とか、いくらの値がつくか想像もつきませんね! やはり一流はルールの外にいるものなのでしょうか。
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