二十話「三期生集合…?」
仕事初日。
俺は大岩さんに教えて貰いながら、マネージメントの事を教えてもらう。
ライバーのスケジュール管理に仕事の選別など。
少し大きな仕事なら大岩さんを通して上の人に聞くなどの仕事だった。
俺が担当するのは主にトライアングル三期生。
音楽関連のユニットに力を入れており、現状トライアングル事務所内で唯一ユニット活動をしているバンドグループ。
名前は『|ARMORED GIRL’S』直訳すると機械少女達。
そう、彼女達は全身が機械で出来たロボット少女達なのだ! という設定。
一人目『マクシミリアン・エーリカ』
二人目『マグノリア・スス』
三人目『ハリ・メアリー』
音楽で心を取り戻せ──ー。
をキャッチコピーとしており、人気は上々らしい。
全員が黒をベースとしてそれぞれメンバーカラーがついているという気合の入れよう。
近々、一期生二期生より先に3Dお披露目もするらしい、急上昇中グループなのではあるが……。
「荷が重い……」
初めてのマネージャー業。
ぶっちゃけVtuberの皆さんは大体が深夜に活動をする事が多い。
その方が視聴数も取れるし、彼女達も昼に案件をこなして、夜に一時間配信して……と、無理のないスケジュールになるからだ。
しかし、その時間帯に合わせないといけないのがマネージャーであり、メンバーからの要望など、緊急の連絡などはいつも突然にやってくる。
しかも、別の仕事と並行しながらである。
と、大岩さんに聞いた。
あの人マジでスゲェよ、こんな仕事を一人でやってきたというんだ。
ふむ、完全ホワイト企業からブラック形態になる未来しか見えないのだが……。
と、思ったら殆どテレワークみたいで、会社などに出勤するのは週一でいいとの事。
まあ、いつも通り萌香に時間を使ってやれるという事は問題なかった。
しかし、今日は初日で、仕事など教えてもらったり、挨拶回りなど行かないといけないので、一週間ぐらいは連勤だろう。
よし、頑張るか。
という訳で、『ARMORED GIRL’S』のメンバーである三人に挨拶をしないといけないのだが……。
「もしかして、君一人かい?」
「は? 誰、あんた」
挨拶のために、三人が待っていると言われた部屋へやってきた。
大岩さんは別の仕事で少し、席を外すのだとか。
そして俺は部屋に入る……そこには。
ロンスカ、短髪黒髪に、無数のピアスに黒マスク……。髑髏などの模様が入ったチェーンなどをたくさんつけている、全身黒ずくめの少女に出会ってしまった。
「あ、いやごめんなさい。俺は今日からARMORED GIRL’Sマネージャーになった東雲純です。よろしく」
「アマガ」
「へ?」
「アマガでいいよ、ユニットの略称。呼びづらいっしょ」
そういうと彼女は、手に持っているスマホに視線を落とす。
というより、俺はこの子の名前を聞いていないな。
「ごめん、君の名前……」
「エーリカ」
「そうか、君がマクシミリアン・エーリカさんか」
「……そのマクシミリアンっての嫌い。かわいくない、2度と呼ばないで」
……今の会話で分かった。
なるほど、すごく扱いにくい子だな!?
因みに、大岩さんがトライアングルのキャラ達の名前付けをしているので、この話を大岩さんが聞いたら泣くだろう。
聞かなかったことにしておこう。
「ところで、他の二人は?」
「帰った」
「はい?」
「ススは元から来ないし、メアリーは曲作るので忙しいって」
「マジでか……どうしようかな……」
まさか、初日に全員顔合わせする予定が、狂ってしまった。
「まあ、気が向いたら二人ともいつか来るし会えるよ」
「そうか……なら、それを待とうかな」
「……もしかして、あんた。“噂のお兄さん”?」
「……もし、君が考えてるお兄さんが、それならそうだよ」
「ふーん……」
まあ、別にバレても痛くもないので、俺は肯定とも取れる返事をする。
少しキザっぽかったろうか?
エーリカさんは俺を一瞥しながら、席を立ち始める。
そして、俺に鋭い眼光を向けてきてこう言い放ったのだった。
「私のてるみん先輩に手ぇ出したら、真剣ぶっ殺すから」
そう言って、エーリカさんは部屋を出て行ってしまった。
なんだろう、女性に殺気を向けられたのは初めてで身体の震えが止まらないな??
そうか、てるみんに手出したらぶっ殺されるのか……俺。
いや、出す訳ねぇだろ……。
そんな事を考えてると、入れ替わりで、大岩さんが部屋に入ってくる。
「どうでした?」
「いや……考えたくないんですけど……もしかして俺って、問題児達を押しつけられようとしてます?」
「……ピュ〜ピュピュ〜」
「下手な口笛やめてくださいよ……」
俺は天を仰ぎながらもう一度考える。
俺の人生どうなっちゃうんだろ。