第八話 何か、まずくないか?これ。
「おー、おー。なんかでっかくて立派なお屋敷だねー。どんな獲物がいるんだろ。ワクワクしてきた。」
確かに立派な石造りの屋敷だ。そしてその石壁に生えた苔は、この屋敷の年季を伝えてくる。
「お姉ちゃん、その立派なお屋敷を壊さない範囲ではしゃいでね。」
「わかってるわかってる! それに、壊すとしたらトモザネじゃない?」
「だから、もう魔法は制御できるようになったって……」
「あ、でも屋内で攻撃系の炎魔法を使うのは危険だからやめろ。石造りとはいえ可燃性の物もあるかもしれないし、換気が悪かったら窒息の恐れもある。」
「えぇ……」
「中に入ったら雷魔法を教えてやる。お前には稼げるくらい強くなって貰わねばならないからな。または風俗でもしてもらうか。」
「ああ、ありがとう。体は売らないけどな。」
屋敷の中は窓も少なく、奥も見えなかった。
「灯」
俺は事前に覚えておいた探索用の魔法を遣う。
「本当は光魔法の方がいいのだが、適正でないものを使うよりはな。」
「おーっ! 前方に目測八十キロ級の小型火鼠を発見っ! 撃退しマウスっ!」
いきなりチェリがダジャレを叫んだかと思うと、目の前の白い巨大鼠に殴り掛かった。
「あ、火鼠なら私が水を掛ければ……もう、お姉ちゃんたら。」
リリが静止するころにはもう、火鼠は皮と魔石だけになっていた。
「魔物って、魔石以外も残ることあるんだな。」
「ああ。特殊ドロップ品と言ってな、換金できることも多い。あの皮は火に強いから、それなりに需要がある。」
「へぇ……じゃあ高値のドロップ品を落とす魔物を狩れば、それだけ稼げるってことか。」
「ま、そうだな。それじゃ、お姉ちゃんが前衛で道を作ってくれていることだし、先へ行こう。」
いやぁ……、でもこの屋敷、本当に広い。
炎魔法で灯した光は正直心許ないし、数メートル先は闇なので、はっきり言って怖い。チェリはどうしてこんな中で暴れまわっていられるのだろ……
バサバサ
「ひゃっ!」
突如、目の前に黒っぽい何かが飛び込んで来る。
「電撃」
その直後、視界が一瞬明るくなり、先ほどの黒い影は地面へ落ちる。
「た、助かったよぉ。リリ。」
「『ひゃっ!』て、また情けない声を出すものだな。いやぁ、滑稽、滑稽。」
「ぐぅ……」
いや、我ながら恥ずかしい悲鳴を出してしまったと思う。体が変わったからか、想像以上に高い声が出た。
「ま、これで雷魔法が使えるな。」
「あぁ、ありがとう。」
それから、一部屋一部屋巡りながら、屋敷を探索した。人里に忍んでいる魔物は、ある程度人の匂いが付けば新しく入ってくることはまずないらしい。
そして俺たちは、広間だったらしい、大きな扉の前まで来た。
「おぉ……これまたおっきな部屋ね。魔物の量を見ると、瘴気を放っているボス級がいるっぽいから、だとしたらここかも……ワクワクしてきたぁ!」
本当に大きな扉だ。四メートル前後と言ったところか。
「よぉーし! 開けるぞぉ!」
チェリが扉を「バァーン!」と開け放つ。よくもまあそんなに大きい扉を、そんな勢いで開けられたものだ。奇跡で身体強化の加護とかつけてるよな?流石に。
「あれは……」
リリの目線の先を見る。そこには……
「……シンニュウシャ……カ?……」
五メートルはありそうな、石の巨人が立っていた。
……嫌な気を感じる。何か、まずくないか?これ。
「……シンニュウシャ……ハ……ハイジョ……」
魔力高そうだし、喋ってるし。
また遅れました。
チュートリアル的なことが終わりつつあるので、その先の内容あんまり考えてなかったことに気づきつつあります。
更新頻度を保つために、設定集的なのを載せようと思いましたが、需要がないと思ったのでやめました。