第七話 どうなんだよ、その名前……
「あの女の子、凄く優しいね。それはとても素敵なことだと思う。でも、今の僕としては、ちょっと困っちゃうな。」
とても、とても愛おしい声。
「……君が……ロズ?」
「トモ君。久しぶり……というのは適切ではないのだけど、話すのは久しぶりだね。」
もっと……、もっと話していたい……
「ごめんね、それはダメなんだ。」
「そんなの嫌だよ……」
行かないで……嫌だ……また忘れるなんて、嫌だ……
「トモ君。僕はずっと、君と一緒に居るからね。……」
待ってくれ!……
*
目を覚ますと、俺は泣いていた。
「そういえば、トモザネ君っていくつなの?」
朝食の席でそんなことを聞かれた。ちなみに作ったのはリリだ。あいつ、意外と料理が上手い。
……そういえば、まだ話してなかったか。この見た目だと実年齢の予測は立たないだろうしな。
「えっと、十六……だと思う。」
「へー。」
「意外と若いな。いや、でも外見からしたら全然年とってるか。」
「そういえば、俺が初めて目を覚ましたとき、チェリが『異世界書記』がどうのって言ってたよな。日本が架空の国だとか。あの話詳しく聞かせてほしいんだけど……」
「それなら、多分探せば持ってると思うし、今度貸そうか?」
「ああ、ありがと。」
「あっ、お姉ちゃんまた野菜残してる。」
皿を見ると、野菜だけが綺麗に残されている。チェリって案外、子供っぽいのかな?
「私は近接攻撃型だから、お肉さえ食べておけばいいの。」
「全く、お姉ちゃんは相変わらずだなぁ。前みたいに私が、あーん、してあげたら食べるかな?」
「ちょ、ちょっとリリ!? 他の人の前でそういう昔こと言うのはやめて!」
「私は他人の目なんて気にしない。それとも、フォークじゃあなくて、唇でつまんで、あーん、の方が良かった?」
「わ、わ、わ、わかったから! 食べますから! 一人で食べられますから!」
こういうところを見ていると、リリの方が姉っぽい……のか?
それにしては大人気なくチェリで遊びすぎな気がするけど。
*
「えーっと……クエストでしたら、あちらの掲示板に貼ってあるものを、ご自由に持ってきてください。」
「あ、そうですか。分かりました。」
掲示板って……あそこか。今まで気づかなかったけど、意外とわかりやすい所にある。
『飼い文鳥探し:小銀貨七枚』
『害魔獣(火鼠等)退治:銀貨一枚、小銀貨五枚』
『人面樹の花の収穫手伝い:銀貨四枚、小銀貨五枚 (注:精神力に自信のある方のみ。)』
ふーん、色んなクエストがあるもんだな。てか人面樹ってなんだよ。
『空き家探索(魔物の巣との情報あり。):銀貨一枚、小銀貨二枚』
おー、これは専門技術とかも要らなさそうでいい感じじゃないか?
ちょっと受付さんに相談してみよう。
「そうですね。確かに探索するだけですし、もし魔法が暴走しても、田舎で家も少ないですし、壁外も近いので、周辺被害は少ないでしょうね。トモザネさんにはうってつけだと思いますよ。」
魔法が暴走……あ、この前のか。
「あの……そんなに印象強いものなんですか? あの巨大火球。」
「印象強いというか、珍しいですからね。結構噂になっているんですよ? 『魔力の制御も出来ない初心者なのにあれだけの魔力があるのは不思議だ』って。そこに、『大地の騎士ソレイユ』を怒らせて、気を失ったとは言えほぼ無傷で帰ったってのも加わってすっかり有名人です。」
「へ、へぇ……」
てか、あの剣士そんなに有名なんだ。なんか二つ名ついてるし。
「あ、そうそう。早速通り名もつけられてましたねぇ。『人間兵器』だったかな?」
兵器って……どうなんだよ、その名前。
「古代の禁忌魔術に由来してるらしいです。」
なんだか知らないうちに有名人になっていたようだ。
「なるほど~、空き家探索か~。へぇ、へぇ。いいんじゃないの~?」
いつの間にかやって来たチェリが横からひょいっと覗いてくる。
というかこいつ、魔物が絡んでるからか変なノリになってる気がする。
「私も手伝いますよん♪」
よん♪ってなんだよ、よん♪って。
「ちなみにー、この家やその他もろもろを壊してしまった場合、賠償責任は依頼主も私たちギルドも問われず、あなたたちだけに行っきまーす!」
なんか受付さんまでつられてテンションおかしくなってないか?
「まあそうなったらコイツに払ってもらおう。体で。コイツ容姿は良いから、そういう店で働いたら結構買い手つくんじゃあないのか?男女問わず。」
まじかぁ……男女問わずかぁ……
というか、そういうのは嫌だな。悪いし。
……悪いって、誰に?
…………。
ま、いっか。
もう毎日投稿諦めて二日に一話の投稿にしようかな?
でも今回は文章量多め(いつもが少ないだけだけど)だからセーフ、セーフ。