第六話 何だっけ……すごく大切なこと……
ついてきてくれ、と、ギルドの裏まで連れてこられる。
「君、さっき巨大な火球を出してた人……で、合ってる?」
「え? あ、はい。でもなぜそれを? それと、あなたは?」
「私はソレイユ。魔法剣士だ。あの時、見ていたんだよ。丁度『望遠』を使えたからね、遠くからだが顔もわかった。」
望遠……魔法だろうか。だとしたら光属性かな?
「それで、折り入って頼みがあるのだが。」
「頼み?……」
もしかしてクエスト? さっきの受付さんとの会話を聞いて? だとしたら、ギルドを通した方が……いや、わざわざ人気の少ない場所まで来たんだ。あまり人に知られたくない内容なのだろう。
……一体どんなクエストなのだろうか?
「一発殴られてくれ。」
わぁい、かんたん。痛いだけだー。
じゃなくて。「殴らせろ」ってなんだよ、「殴らせろ」って。まあ、「死ね」よりはマシだが。この世界の女性は皆、初対面の人に厳しいのだろうか。
「えっと、理由を聞かせて欲しいのですが……」
「例の火球のせいでツレが危ない目にあった。」
あ、俺悪いやん。
「それは申し訳ありません、悪気があったわけではないのですが。あの、どのくらいの怪我なのでしょうか? 一度会って謝らせてくれませんか?」
「見くびるな。無傷だ。私が守った。謝罪は結構。アイツを傷つけようとする奴をアイツに近づけたくない。」
なんだよ、無傷かよ。
「そんじゃあ、歯ぁ喰いしばれよぉ……」
「まって! まだ心の準備が……」
こいつ、本気だ。見るからに明らかに近接攻撃型の冒険者だろうし、装備を見るとそれなりの上級者だろう。
……あ、これは死ぬかもな。そう思ったその時だった。
きらきらした青色の小さな粒が、視界に舞った。それに気づくと同時、胴には何者かの細い腕が回っていた。
「え……」
目の前にいるのは、水色の髪を長く伸ばした、十とそこそこに見える女の子。その背中からは羽が生え、先ほど見たのと同じ粒子を振り撒いている。
「ミモザ……!?」
「えっと……この子は?」
ミモザ、という名前なのか。どうやら剣士さんのお知り合いらしい。
「話していた私のツレだ。どうしてこんなところに……」
「え? あ、そうでしたか。さっきはすいませんでした。」
そう言うと、ミモザと呼ばれた少女はキョトンと首をかしげる。
「あー、多分ミモザは気にしてない。」
……それがわかってるなら最初からこんな事するなよ。
「それより、お前を心配しているようだ。」
「えっと、どういうことですか? 心配って……」
「ミモザは人の感情を感じ取れる。その代わりなのか、声を出すことが出来ないが。」
「そうなんですか。でも別に、そんなに心配されることなんて……あ、さっき命の危機を感じて恐怖してたからかな。」
ミモザは首を横に振る。
「ああ、ミモザが言いたいのはそうじゃない。そんなんじゃあミモザはここまで心配しない。こいつが感じたのはもっと、辛くて……痛くて……悲しくて……」
「いや、すみませんが勘違いではないですかね。」
「ミモザの感覚は正しい。間違うことなんてない。」
「いやだって、今の私にそんな感情は……」
「お前が自分を把握しきれているとは限らない。お前の知らないお前の感情なのかも知れない。」
俺の知らない……俺?
「しかしそれにしては不思議なほど感情が強いようだ……お前、本当に心当たりはないのか?」
「心当たりなんて、ない……と、思います。」
でもなんだろう、この胸の引っかかりは。
「何か、忘れている気がするとか。」
「忘れていることなんて……」
……ない……のか?
いや……あるきがする。何かを……忘れて……
何だっけ……凄く大切なこと……
冷たい何かが頬をつたう。
「大丈夫か? 何か、思い出せそうなのか? 」
なんだ……これ。涙?……
…………ロズ?
毎日投稿を目指すと言った翌日に投稿サボった無能です、どうも。
以前、特に何も考えてないと言った気がしますが、ちょっとくらいは構想や裏設定があったりします。回収してないキーワードはそこら辺が理由。