第五話 どうしよう……
「見たところ、細かい制御までは上手く出来ないのか。」
どうしよう……この火球……
ここまで大きいと、そこら辺に放ったら大被害だよな。ひっこめることは出来なさそうだし……
「引っ込められもしないようだな。よし、あっちのほうにでも放っておけ。」
リリはひょいっと、街の反対の同じく原っぱが続く場所を指さす。
「いいのか?……人がいたりとか、しないか?」
「多分いない。いてもなんとかなるだろ。」
「多分って……」
「お姉ちゃんは向こうではしゃいでるから、被害はないだろう。それで十分だ。」
チェリはさっきから相も変わらず魔物を殴って、殴って、殴っている。神官というからには奇跡か何かを使えるのだろうが、見たところ拳しか使っていない。
「うて、ほら。」
「わかった。わかったから。」
まあ、あっちの方は強い魔物がいるって言ってたし、もし人がいても死にはしないだろう。多分。
「よっ……と。」
ゴゴゴゴゴゴゴ……
火球は轟音をまき散らして移動し、遠くの地面と接触して熱風を吹きながら、巨大な丸い焦げ跡を残して消えた。
「次はもっと、抑えて絞れ。」
「りょーかい。火球!」
今度は二十センチ程に出来た。さっきより密度も高い。
火球! 火球! 火球!
連続で出してみる。いつの間にか無言詠唱もできるようになっていた。
打ち出された火球は、各々ミニスライムに向かって突進していき、避けられなかった物はそれを蒸発させていく。
……なんか楽しくなってきたな。
さっきまでスライムがいた焦げ跡が、周囲に点々とする。そこに残るのは小さな紫の石のみ。
「そういえばあの石ってなんなんだ?」
「あれは魔石だ。魔物の主なエネルギー源で、魔力に変換できる。固形化した魔力だと考えろ。街で換金もできる。」
「つまり冒険者の収入源、と。」
「まあ、その一つだな。ただあれくらいの質と大きさだと、大した額にはならない。」
「一文無しにとっては金になるなら大した額だよ。ちょっととってくる。」
*
「十六個全部で白銅貨九枚と青銅貨六枚です。」
「……て、どんぐらいだ?」
俺たちは今、集めた魔石を換金するためにギルドにいる。
確か壁外に出る前に買ってもらった防具が洋白貨十二枚、ロッドソードが八枚。洋白貨一枚で白銅貨五枚、白銅貨一枚で青銅貨十枚だから……
「うわ、ほんとにはした金だな。」
リリが馬鹿にしたようにそう言う。お前だって俺を暫く教えてたとは言え、ほとんど倒してないだろう。
「今日は魔法を使う練習に来たんだから、稼げただけいいさ。」
うん、そうだ。それに回収はしなかったが、巨大火球を落とした先にいた魔物も含めれば、討伐数は多いんじゃないか?
「私のもお願いしまーす。」
「はーい。えっと全部で……百三十二個ですね。ですから……小銀貨七枚と白銅貨九枚、青銅貨二枚になります。」
うわぁ……ちっちゃな魔物を潰してっただけなのに、どうしてそんな額になるんだよ。
「あの、クエストとかってありますか?」
とりあえず今は、年下(この体では、相手にはそう思われていないだろうが)の女の子に養われている現状から自立するために金が欲しい。同じ魔物を倒すのでも、依頼されたものをこなせばその分の報酬も出るため、得られる金額は高くなるらしい。
「えーっと……」
「そこの人、ちょっといいかな。」
高そうな鎧を身につけた、背の高い女性。腰につけている剣の塚も鞘も、奇抜な装飾品など無いのに不思議と眩い。
「え、いいですけど……では、受付さん。また後で。」
なるべく毎日投稿したいけど、たぶん無理なので悪しからず。でもなるべく毎日投稿を目指します。
あと呪文考えんの難しい。痛くなったり、ダサくなったりしそうで怖い。