第四話 何だこの威力!
「本日はお日柄もよく……」
俺たちは今、壁外のちょっとした原っぱにいる。チェリの言う通り、雲一つない青空である。
「絶好の……」
結局、あれから何度計っても数値は変わらなかった。最適魔法属性も二つのままである。
「魔物討伐日和じゃぁぁぁぁぁ! ヒャッハー!」
さっきまで普通の女の子だった何かの雄叫びが、あたり一面に響き渡る。
「それで、リリ。あのチェリの様子はどういうことだ?」
チェリは、城外の魔物討伐スポットに着いてから、狂ったように低級の魔物を殴りまくっている。今のような仕切り直しをもう五回はしているのは、さながら何度も乾杯をする酔っぱらいのようである。
「お姉ちゃんは魔物を狩るとなるとああなのだ。可愛いだろう?」
「え……あぁ、うん。」
姉も姉だが、妹も妹だな。
「それでさ、リリ。魔法の使い方を教えて欲しいのだけど……」
チェリは闘神官というジョブ?らしく、魔法は使えないらしい。すると必然、こいつに伝授してもらうしかないのだが……
「なぜ、私が、あなたなんかに、魔法を教えなければいけないのですか?私が、あなたなんかの、指図を無条件で受け入れると思っているのですか?」
やっぱりそう来るか……
「チェリに恩返ししたいんだけどなぁ……リリがそれを拒むって言うなら仕方ない。またしばらく二人の家に居座ることになるなぁ……チェリに悪いなぁ……でもリリがそれを拒むって言うならなぁ……」
「……分かった。お姉ちゃんのためだ。仕方ない。」
ちょろいな。
「まず、あなたの得意属性である炎系の技でも出しますか。私は水なので威力は低いけど、お姉ちゃんの言う通り、この前の言語みたく見ただけで思い出したようにできてしまうかもしれない。」
そういうと、リリは少し離れたミニスライムに向けてロッドを構え、
「火球!」
ボン!という音とともに、直径十五センチ程の火の玉がミニスライムを襲い、蒸発させる。ミニスライムのいた場所には焦げ跡と、小さな紫色の石のみが残った。
「こんな感じです。」
「わかった。火球!」
チェリの予想は的中したらしく、本当に見ただけで魔法の使い方が分かった。……のだが、
「あれ? 確かに火球は生成したはずなんだけどなぁ……」
魔法を使う感覚は掴め、確かに魔法を使う感覚はした。しかし火球は見つからない。おかしいなぁ……なんか熱いのは感じるのになぁ……
「上。」
そうとだけ呟いたリリの頭は、その上を向いている。上に何かあるのだろうか。
「上?……て、えぇ!?」
俺の頭上には、直径三十メートルはあろうかという巨大な火の玉が浮かんでいた。
……感覚でわかる。これは確かに俺の魔法だ。
ギルドでの数値が真実だとすると、多少魔法の性能が高くても不思議ではないと、覚悟していたつもりだった。だが……
「……何だこの威力!」