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異世界転移!? 禁忌《チート》☆兵器  作者: 虹村 萌前
第三章 西方都市アンドレイヌ
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第二十九話 やっぱり好かない。

【旅のしおり】

―魔法剣撃―

魔法の一種である付与魔法を込めた剣による攻撃。他の近接武器も含めた総称としても使われる。また、同じく付与魔法を込めた遠距離武器による攻撃には、魔法弓矢砲撃などがある。

剣を持つものがその場で付与魔法を込めながら剣を振るう場合と、恒久的な付与魔法を込めた剣(魔剣)を使用する場合があるが、魔剣が非常に高価であることなどがあり、前者の場合がほとんどである。

攻撃する属性としては炎、雷、風属性が効果的とされる。

*now loading*

 この異世界に来て、でっかい魔物は数多く見てきた。

 ゴーレム、ハエ、イノシシ、クモ、ハエ、ハエ、ハエ、ハエ……

 ゔ、あの大軍を思い出しただけで吐き気が……

 てな感じで、それでもまだ慣れない。


「おー、でっかいダンゴムシだねー。」


 まだ慣れないのに、またやってくる。ふざけんな。

 目の前で道をふさいでいる巨大なダンゴ虫は、殻からはみ出した足をうじゃうじゃ動かしている。


「気持ち悪い……」

「安心しろ。これは私もちょっとキツい。」


 そう言うリリの顔には、依然として感情が見受けられない。


「ならもっと顔に出してよ……」


 そうこうしている間に、ダンゴムシがこちらに向かって来たので、まずチェリがその頭を掴み、横に回す。


「うんどりゃぁぁぁ! っと。トモザネ!」

「相変わらずすごい力だな……」


 ひっくり返ってその腹が露わになったところで合図がかかったので、その上に乗って剣に魔力を込める。


(ファイア)剣撃(スラッシュ)!……ゔぅ、ぎもぢわる。」


 魔力を込めた剣撃はよく斬れるため、斬るときの感触などはほぼないのだが、それでも巨大な虫の(はらわた)を斬っていると思うと吐き気を催してしまう。


「案外あっさり倒せたね。これがロマ様姉ちゃんの特訓の成果?」


 チェリが蒸発していく魔物を眺めながら呟く。


「いや、……師匠としていた練習はもう少し小さい魔物に向けてが主で……」


 でも、きっと師匠との特訓がなかったらこれほどすんなりと動けなかった。直接的な意味は薄くとも、自信につながったことは確かだろう。



 *



「えぇっ!? ローレルさんも付いてくるんですか!?」


 帰ってきた後、ローレルさんが話しかけてきたと思ったら、いきなり「この街を出る時は、僕も付いて行くよ。」だなんて言ってきた。

 あれ以来、ローレルさんのことは少し警戒していたので、ビクッとしてしまう。


「ひっどいなー、その反応。僕だって傷つくんだよ?」


 そう言いながらローレルさんは、あからさまにしょんぼりとする。

 うん。自分でも流石に酷いなって思った。


「えっと、すいません。」


 このままこの調子でいられるのも嫌なので、俺はとりあえず謝る。


「まったく~。一生の傷になったら責任取ってよね~。」


 すると一瞬で開き直り、またわけのわからないことを言い始める。……まったく、ローレルさんは……


「寿命的に無理です。」


 聞くところによると、ハーフエルフは三年で人間の二年分しか年をとらないらしい。

 つまり十七、八歳に見えるローレルさんの実年齢は二十代後半ということに……あれ? ローレルさんって、思っていたよりずっとお兄さんってこと?

 でも年のわりに随分と無邪気というか、貫禄がないというか……


「…...今、なんか失礼なこと考えなかった?」

「いやー、そんなこと……ない……です。」

「もー、目ぇそらさないでよぉ。」


 ローレルさんはわざとらしく、いじけたように言う。

 そういうところですよ?


「それに、僕の占い的には君はとっても長生きする……と思う。君が思っているよりずっと。そうだね、僕よりも長く生きるかな。だから問題はないよ。」

「……へ? どういうことですか?」


 長生きできるならそれに越したことはないけれど……ハーフエルフであるローレルさんより長生きってところが引っかかる。


「つまり、だね。君()()は二人であって一人っていう、あいまいで特殊な状態なのだよ。それで、そのせいで世界の仕組みにおける人数の判定に、ブレが生じてしまうわけさ。」


 なんだか俺の理解に追いつかない説明が始まる。いや、ローレルさんの行動にはいつも理解が追いつかないけれど、今は言葉の表面すら汲み取れないって感じだ。

 二人であって一人……?一体この人は何を言って……

 まったく。困った人だよ。


「そういうことで、年を取るのは二人で一人分。けれど、そのあとで二人に半分ずつ分けられる。つまり、一人当たりは半人分しか年をとらないわけさ。さらに『内側の君』にはなかなか複雑な経緯があるようで……」

「なーにを、口走っているのかな? 僕の(・・)! トモ君に。」

「あーら、『内側の君』じゃあないの。その後気分はどう?」


 僕がそれなりに怒りを見せても、この人は余計に笑って見せる。

 やっぱり嫌だ。この人は。


「最悪だよ。トモ君がどこの馬の骨とも知れないハーフエルフに色目を使われて、本当に最悪の気分さ。」

「あはははははは、そうかいそうかい。」


 そう僕がいうと、今度は声を出しての大笑いときた。妙に品が保たれているのが特に気に入らない。


「いやー、僕は別にドロボウネコさんになる気はないって言っていたじゃあないの。少なくとも今のところその発言に順じた行動をしていると思うのだけれど、信用してもらえないのは、悲しいなあ。」


 まーた、あざとく置いていかれた飼い犬のような声を出す!


「信用だのなんだの以前に、僕は君が嫌いなの!」


 僕は辛抱ならずに大きな声を出してしまう。


「えー、そーなの? 僕は君のこと好きなんだけどなぁ……」

「と、に、か、く! 今後一切トモ君に要らないことを吹き込まないこと!」

「自分の体のことだよー? それって『要らないこと』なのかなぁ。」

「トモ君を守るためさ。そのためには知らないことが必要なのさ。」


 そうだ。トモ君を守るために僕は……


「でもトモザネ君は、ずっと目隠しされたまんまで幸せを感じてるわけじゃない? それって惨めってゆーかー……」


 惨め?

 僕の守ってきたトモ君のことを、惨めだって?

 この人、どこまで僕たちのことを……

 ダメだ、頭に血が上って……


「黙れ! そんなことは僕も……僕も……僕が何とかする!」

「うん。その調子だよ。その『何とか』に僕も力を貸そうと思っているから、よろしくね。」


 もう見飽きたと言ってやりたい澄ました笑顔。

 あー、この人は全部計算済みだったんだ。


「やっぱり君のことは嫌いだよ。」

「うん、それならそれで良いよ。でも一緒に頑張ろうね。僕の愛しの『内側の君』」


 嫌いだけれど、一応はトモ君のことを考えているみたいだし、そう考えてみるとつけ放す強い理由は無い。

 そういうところが、やっぱり好かない。

またまたお久しぶりです。すみません虹村萌前です。

書いているうちにキャラが勝手に動くって良く言いますが、今回のロズ君がまさにそれでした。おかげで過去最大文字数です。

次は近いうちに投稿できる気がします。その次も多分。その次はわかりません。

でも新しくブックマークとか評価とか感想とかついたらモチベーションは上がります。ということでぜひつけてくださいという露骨な誘導でした。

まあ、読んでいただけるだけでめちゃくちゃ嬉しいんですけど。いつもありがとうございます。

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