第二十五話 まるで読めない
【旅のつぶやき】
―チェリのつぶやき―
この前荷物整理してたら、なぜかリリの小っちゃい頃のノートが出てきたんだよね。
そこに自作の詩みたいなのが書いてあってさ、
―私の大好きなお姉ちゃん―
強くて清くて優しくて、
綺麗で可愛くてかっこよく、
それは奇跡の桜色。
私の心は染まってる。
アイラブお姉ちゃん。
……リリって、実はモモ姉のこと好きだったんだね。
「でも先に言ってくれればよかったのに。眠らせなきゃ占えないだなんて、聞いてなかったですよ。」
「あはは、ごめんごめん。でも君言ったら嫌がりそうだったから。」
笑い事じゃないですよ。こちとらてっきり襲われたのかと……
「それでも、言ってくれないよりはよかったです。服まで脱がせなきゃいけないなんて……」
「あ、服を脱がせたのは君の寝顔が可愛かったからだよ。」
ローレルさんは悪びれることなくそう言い放つ。
「うぇ!? 嘘!?」
安心してとか言ってた癖にこの人……っ!?
「うん、嘘だよ。」
ローレルさんは落ち着いた笑みを浮かべたまま、楽しそうに話す。
ダメだ、この人の本心がまるで読めない。
結局一体どこまでが本当なんだろう。全っ然わかんないや。
「たっだいまー!!」
二人きりで話し込んでいると、玄関からチェリの元気な声が響く。
モモさんたち一行が帰宅してきたようだ。
*
「それで、占いとやらは出来たのか?」
「ぇあ……まあ、ね。一応。」
こちらを向いて話すリリの目は何かを見透かそうとしているようで、つい目をそむけてしまう。
「あー、トモザネ君ローレルさんの占い受けたのか……もしかして『おやすみコース』?」
「それはそうなんだけどね、いつもよりずっと深いヤツだよ。ふっふん。」
どうやら俺がされた占いは特別なコースだったらしく、なぜかローレルさんは誇らしげである。
「で、占いの結果はどーだったのかな? 『おやすみコース』ってことはあれでしょ? 何を占うでもなく変なこと言われたでしょ?」
「失礼な。何を占うでもなく、ではなく、運命を占っているのさ。」
「んで、結果は?」
「それはねぇ……」
ローレンさんはやけにもったいぶって話す。
「なんと、トモザネ君は劇を観に行かなければならないのです。」
「わあ、いつになく意味わかんない結果。まあそれなら、近所にも劇場はあるわ。」
「ノン、ノンだよモモさん。運命はそう安っぽくなくてだね。ダイモニアのある劇団がやっている、『星と明』という劇でなければならないのさ。アガペンでも同じシナリオの劇が見られるらしいけど、どうせダイモニアには行くみたいだからね。」
しなければならないだとか、運命だとか、ローレルさんはたまに不思議な表現をする。
「ふーん。それで? そのホシとメイというのはどのような話なの?」
「それは、私も気になります。」
そういえば、そうだ。肝腎の、劇の詳細を聞いていなかった。
「それは……わかんないね。僕の占いでは喜劇なのか悲劇なのかすらわからないよ。」
……なるほど。
まあ、その劇の内容に意味があるとすると、もしそれが今調べてわかるものなら、わざわざ足を運ぶ理由もなくなったかもしれない。
「話は終った?」
三人で話している間にいつの間にか傍にいたリリが、後ろから話しかけてきた。
「えっと……まあ、ね。」
「なら、お前ちょっとついて来い。少し話があるんだ。」
と、言われるがままにリリの部屋に連れ込まれる。
さっきのリリの目、いつになく真剣だったような……
そしてリリはベッドに腰かけ、一息ついてから、
「わ、私を……励ましてくれ!」
少し目をそらしながら、ぎこちなくそう言った。
虹村萌前です。お久しぶりです。ごめんなさい。
と言いつつ、また投稿が途切れ気味になると思います。
少なくとも一週間は、既に自動投稿をセットしているエイプリルフール企画以外投稿できません。