第二十四話 聞いてない
【旅のしおり】
-占い-
一部の人間が自身で行使できると言われている、六属性とは違った形の魔法の一つ。
しかしその、知りえない事実や未来を確立的に予測するという性質から、効果を証明することは難しく、原理も不明であるため、実在するものであるかすら謎である。
ただ少なくとも占い師を名乗る者、それを信じて予測を聞くものは多く存在する。
占いの方法は水晶を用いるもの、カードを用いるもの、字を並べた紙と硬貨を用いるものなど多種多様、十人十色であり、それが原理究明の障害ともなっている。
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――今回は知実君がモテモテらしい。(ボソ
「さ、お茶を淹れたよ。座って座って。」
ローレルさんの白くて綺麗な指から、紅茶が注がれていく。
垂れ下がる金髪は生糸のように繊細で、砂金のように光って。
この家全体に張りつめる静寂と、少し前のローレルさんの行動が、俺をひどく緊張させる。
「まあまあ、肩の力を抜いて。」
対面に座るローレルさんは、その美しい目で俺をジッと見なが微笑む。
どうやらローレルさんに警戒心を読まれていたようだ。
となるとこのまま固まっているのは失礼なので、なるべくリラックスしようと小さく深呼吸をしてみる。
「あ、あの。森で、私を占うと言っていたのは……?あれはどういう意味で……?」
「うーん。詳しくは企業秘密だから言えないんだけどね、そういう運命なんだよ。んで、僕は今君を占うために、心を開いてもらおうとしているのさ。」
運命……か。なんか余計に警戒しちゃうな。
でも緊張を解かないと占えないみたいだし、なんとなくローレルさんが俺のために行動しているのがわかるから、何とかしないと。
「ささ、飲んで飲んで。緊張しているトモザネ君のために、リラックス効果のあるハーブを入れたんだ。」
そういうローレルさんの口調はとても無邪気だ。
「あ、はい……」
俺はそれまで緊張で口をつけていなかった目の前の紅茶を、言われるがままにすする。
あれ? そういえばローレルさんも紅茶を飲んでいないような……
あ、いい香り。それにちょっと甘い。
「美味しいかな?」
「ええ、それはもう……」
リラックス効果というのは本当なのか、体が軽くなっていく……
頭が……真っ白に……
「あのぉ……ちょっとこのハーブ効きすぎなんじゃ……なんだかちょっと眠く…………」
――ガタン。
姿勢を維持できなくなった俺は、机に頭を落としてしまう。
「大丈夫、予定通りさ。これでゆっくり占いが――」
ローレルさんの声とともに、意識が遠のく――
*
文句が言えて助かったよ。君はトモ君を狙っているね? 見る目が違うからわかるさ。僕はトモ君が望むならそれでも構わない。が、そうでないのならトモ君と二度とかかわらないでくれないかね?
「――え? っと……ああ、まあそうだけど。でも別に僕は……」
ローレルさんの……声……?
それに、頭に柔らかい感触……なんだか落ち着くいい匂いも……
あれ? 俺確かローレルさんの紅茶を飲んで、それで……
「あ、起こしてしまったね。よく眠れたかい?」
起きると上の服は脱がされていて、ローレルさんの膝の上で寝ていた。
「ふぇ!?」
俺は驚いて飛び上がる。
こここ、これは、一体どど、どういう状況なんだぁぁぁ!?
まさか俺、ローレルさんに……
「あー、驚かせちゃったよね。ごめんね、僕の一番得意な占いは相手が眠ってくれないと出来ないんだ。」
あ、なんだ。俺はてっきり……
「良かった……俺てっきりローレルさんが男性が好きな方で、そういう目で見られているのかとばかり……」
「うーん。キミのことは好きだけど、ドロボウネコさんになるつもりはないかな。さっき注意もされたし。だから安心して?」
はぇ?
「じ、冗談ですよね……」
「えぇ、酷いなぁ。僕は本気だってば。」
ローレルさんは口に指を添えてわざとらしく言う。やっぱり指、綺麗だな……
でも、ローレルさんの瞳は嘘をついていないような、そんな気がする。
わぁい、やっぱり異世界来たらモテモテってのは定番だよねー。
でも相手が同性だなんて聞いてないんですけどー。
「あぁ、そう。お告げ……いや、占いによると、だね。君はある劇を見に行かなければならないのだよ。」
やっぱり異世界転生・転移ものは主人公がモテてなんぼですね。
異世界は妄想の産物なので、理想的になりやすい。そして、その理想の中に「モテモテバラ色人生」というのが入っていないはずがない。そういうことです。
つまり同性愛者率が異様に高い異世界小説を書いている私の思い描く理想の世界は……そういうことです。生産性のための恋とか絶対つまんないからね。
でも幻想としての理想と現実への理想は少し違います。
私の現実への理想は自分の小説がいっぱい評価してもらうことですだからブクマ、評価等々お願いします悶えて踊って喜びます。