第二話 誰だこれ!?
とりあえず、どうやら俺は異世界に来たらしい。
そして俺がそういう結論に至った経緯は後に回すとして、もうひとつ驚くべき事実が発覚した。
あの後、食事を振舞ってくれるということで、ベッドから立ち上がったのだが、その時だった。
体の勝手が違う。
以前の俺より身長は低く手足なども小柄で、腕などを見る限り色は白い。今まで布団がかかっていたので気に留めなかったが、着ている服もさっきまで俺が着ていた化学繊維の水玉柄パジャマとは違い、麻か何かのズボンとシャツだった。
不思議に思った俺は、チェリに鏡を見せてくれと頼んだ。そして……
「誰だこれ!?」
全く、驚きの連続である。鏡の中に写っていた俺の顔は俺の知るものではなく、実に可憐な茶髪の美少年だった。
しかしなぜだろう。俺はこの少年を知っているような気がした。
*
このソプロシュヌの街を見た時、俺は異世界に来たのだと悟った。
「なるほど……確かに古代には召喚術なるものがあったという噂もありますし、異世界の存在も一部の学者は肯定していると聞きます。」
二人と一緒に街を見て回った帰り、街外れの崖(俺の死に場所に推奨してもらった場所である。)で家々を見下ろす。
「えぇ。私の世界には獣の耳や、羽や、角を付けた人間なんていないし、魔法もなければ魔物を防ぐ外壁もない。街並みは私の住んでいたのとは違う地域の、少し古いものに近いが、完全に一致というわけでは毛頭ない。私の知る限り、私のいた世界にこんな街は存在しないし、存在し得ません。」
しかし、ただの夢という発想もあると思う。というか、そういう思考に至るのが普通だと思うが、何故か俺にはこの世界が夢なんかでないという、確信に近い直感があった。根拠はないが、この直感を信じなければいられない感じがするのだ。
「あ、トモザネさん。これから行くあてが見つかるまでしばらく一緒になると思うので、敬語辞めて大丈夫。」
「あ、あざす。」
そういえば自然と話してたけど、敬語の概念とかあるんだな。
「私は許さない。」
リリが俺を睨み付けて来る。そもそも、どうして俺はこんなにもこの子に嫌われてるのだろう。
「じゃあリリさんには敬語で。」
「私は良い。姉さんに敬語を使えと言っているのだ。命を助けた恩人に対して、敬意を評せと言っているのだ。」
そっちかい。てか本人が許可してるならそれでもういいじゃないか。
とは言えリリの言うことも四半理くらいはある。チェリにはちゃんとした形でお礼がしたいとは思っていた。
「あ、それじゃあ恩返しだと思って、ちょっと壁の外で魔物狩るの手伝ってみない?」
チェリが唐突にそんなことを言い出す。
「いや、俺魔法使えないし。」
「わかんないよ~。さっきの言語の話聞いてると、魔法も、やってみたら出来ちゃった、でもおかしくないと思うんだよね。」
「まあ確かに、魔力はいっぱいありそうな気がする。」
えぇ……
「大丈夫。そんなに強いのはいないとこに行くし、もし何かあっても私たちが守るから。これでも冒険者としてそれなりには腕あるのよ?」
いやいやいや。
異世界来ていきなり魔物討伐って、ちょっと急が過ぎるんじゃないか?
「私はお姉ちゃんだけを守る。」
そしてリリ、お前はマイペースが過ぎるんじゃないか?
ちょっと展開が遅いと思ったので、直せそうなら次回から直します。