第二十一話 わからないなら
【旅のしおり】
-ロッドソード-
冒険者などが使う武器の一つ。知実の使用武器。
短~中剣の柄の先に、遠距離魔法の照準を合わせやすくするための特殊な魔石がはめ込まれたもので、遠近両距離の魔法を使える魔法使いが使用するために作られた。
剣とロッドを兼ねていることもあり少々値段は高いが、どちらかが壊れても多くの道具屋が壊れた分だけの修理費で直してくれる。
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「しっかしお前、さっきはずいぶん派手にやったな。」
街に入る前、中の下くらいの魔物に放った爆発は、この前の火球ほどではないにしろ、明らかにオバーキルだった。
「お前がもうちょっと手加減してくれたら、門番に怪しまれるようなこともなかったのになぁー?」
「わ、悪かったって。」
アンドレイヌの街はソプロシュヌよりも建物が多い。
その建物や街灯には門にも掲げられていたバツ印の旗が至るところに掛けられ、正直ちょっとビビる。
「向こうは向こうで飲食店が異様に少なかったりしたが、この街はこの街で気味悪いなぁ。いつでも目に入るようにって、どんだけ無意識が怖いのだか。」
なんでもあの旗はこの街の、そして勇気のシンボルなのだそうだ。
「うーん、私はこのマーク結構好きだよ?」
「そうだね。お姉ちゃんはそうでなくちゃ……それより、ここら辺の店で昼食でもとらない?少し遅いけれど。」
見ると結構色々なお店がある。西洋風の料理店がほとんどだが、インド料理屋のような店も見受けられる。
「リリは、ソプロシュヌの料理店はメニューがカオスで品位がない、だもんね。」
*
「美味しかったー。」
旅の間の七割現地調達料理もなんだかんだリリのおかげで美味しかったが、やっぱりお店の味は違う。
そういえばこの世界に来て初めての外食だったが、ここのカルボナーラも向こうの味に結構近かったから、なんだか安心した。
「そういえばトモザネが食べたあれも、異世界人が伝えたものらしいよ?」
「なるほど、どうりで……」
「あくまでも噂だけどな。根も葉も何もないような噂だよ。」
噂、ね……
でももしそれが本当ならば、俺以外にもあの世界から来た人がいるということになる。
この異世界に来て、しばらく暮らして、本当にあの世界を知っているのは自分だけで。
本当は元の世界など存在していなかったのではないかと、全部自分の妄想なのではないかと、時折そんな孤独感に駆られる。
あの世界が夢だったのか、それとも本当に二つの世界を行き来したのか、はたまた今いる世界が夢なのか。もしかしたら、両方夢かも。
それを知るすべは、俺にはない。
きっとこの世の誰も、真実を知ることなどできないのだろう。
極論を言ってしまえば、世界なんて一人の人間の中で完結している。
自分の外のことは、本当の意味で認識することなど……
「それでも僕は……だから僕は君と!……」
声が聞こえた気がした。
「なあ、今誰か叫んでなかったか?」
「ねえトモザネ、この前も同じようなこと言ってなかった?」
「どうせまた占い師か何かだろ」
この前とは違う。もっと奥で……
まあきっと、柄にもなく難しいことを考えたせいで、幻聴でも聞こえたのだろう。
そんな哲学、気にしたって何も変わらない。
わからないならわからないなりに、わかっている部分でもがくだけだ。
きっと赤い夕陽を浴びながら、二人と一緒に路地を歩く。
この小説を書き始めた同期の一部、20%くらいは、三人称で百合が書きたかったというものです。
なので、これは20%くらい百合小説です。





