第十九話 苦労の連続
最近、トモ君は楽しそうだね。
まあ、大変なことも度々あるみたいだけど。
僕はとっても嬉しいよ。
ただ、ダイモニアにはあまり行って欲しくはないかな。
今のところ僕が罪から逃しているけど、向こうではどうなるかわからない。
それに、あの風。
もしかしたら、僕らを追ってきているのかもしれない。
僕は君を止めないけどね。
でも、きっと僕が守るよ。
僕は君の幸せだけを望む。
他に何も望まない。
トモ君。僕はずっと、君と一緒に居るからね。
*
「…………!………ネ!」
誰かに、呼ばれている。
体が、揺さぶられている。
「ねぇ、トモザネ起きて!……って、やっと起きた。」
チェリに無理矢理起こされた割に、何故かとても目覚めが良い。
「お前、寝すぎだ。」
どうやら結構長く寝ていたらしい。
チェリより遅く起きるとは。不覚。
「でもすごく幸せそうな、安心した寝顔だったよ。ねえ、いったいどんな夢を見ていたの?」
夢……そうか。寝起きがいいのはそのせいかもしれない。
「うーん。とっても穏やかで、安らいで、懐かしかった気がするのだけど……あんまり思い出せないや。」
「なにそれ、変なの。」
変だよな。すごく変だ。
でも、悪い気はしない。
むしろ嬉しい?これも変だよな。あはは。
*
また原っぱを歩く。
またまた相も変らぬ良い天気。
でも昨日はさっぱり晴天、今日のお空は雲がプカプカ。
「ねえ、リリ。今日のトモザネ何か変じゃないかしら。」
「そうだね。なんか嬉しそうっていうか、浮かれてるっていうか……」
自覚はある。
なんだか今日はとても嬉しい。
「だって今朝は、だって今朝は久しぶりに……久しぶりに……何だっけ?はは。」
「あ、待てお前。そこは……」
何か踏んだ。
足の裏に何か、柔らかい感触が伝わる。
「シエアァッ!」
振り向くと、一、二十メートルはあろうかというとぐろを巻いた蛇が、口を開けてこちらを睨んでいた
「あぁ……うん。毒龍は見た目より強いから、頑張れよ。」
リリが突き放すように言う。
「えぇ!ちょっと助けてよぉ!」
マズい。一応距離はとったが、まだこちらを睨んできやがる。
正直俺のステータスを考えると倒せそうな気がするが、さっきのリリの毒龍という言葉を思い出してどうもたじろいでしまう。
「ちょっとお姉ちゃん!」
良かった。チェリが抗議してくれるみたいだ。
「毒龍って呼び方は竜族から抗議があったって知ってるでしょ?大毒蛇って呼びなさい。」
「そうだったね。お姉ちゃん。ごめん。」
そぉじゃないんだよぉ!!!
まったく。この旅は楽しいけれど、苦労の連続だ。
そろそろアンドレイヌに着きます。いやー、長かったね。
西洋的な世界観にしたいのに、魔物がなんだかんだ東洋ベース多めになっちゃってます……