第十四話 呼んだか?
五時間ほど歩いたところで、木に囲まれた道になる。
「もう少し歩いたら、食事も兼ねて一度休憩をしよう。」
足元には木漏れ日。一面に木の匂い。なんだか、心が安らぐ。
それを読まれてか、リリが注意を促す。
「あ、油断はしないように。魔物がいても気づきにくい地形だし、ただの動物であろうと危険なものもいる。森はそういう動物が多い。」
リリは「それと……」と言葉を続ける。
「ここはそこまで大きくないから可能性は低いが、もしエルフの集落があったら歓迎されないことも多い。気をつけるように。」
「……エルフ?」
この世界、エルフなんてのも居るのか。まあ魔法もあるし、ありうる話だが。
「エルフは清い森に住む。外に出る者はごく少数で、大多数の者が生まれた森でそのまま千年とも二千年とも言われる寿命を全うする。大抵のものは来訪者を嫌い、問答無用で攻撃してくるんだ。」
それからしばらくして、俺たちは倒れた木に腰かけ昼食をとった。
そして、また歩き出そうとした時のこと。
「なあ、この森はあとどれくらいしたら抜けられるんだ?」
「うーん、どうなんだろ?前はここ通らなかったから。リリわかる?」
「さあ。でも今日中には無理でしょ。」
そんな話をしているとチェリがいきなり立ち上がり、嬉しそうに叫ぶ。
「っ!なんか来る気がする!やったぁ!」
うん。なんにも「やったぁ!」じゃない。
「なんかって何?」
「わかんないけど、足音がする。」
ドド、ドド、ドド、……
「確かにしてきたな、足音。」
方向は右斜め前。そちらを向いて、ロッドソードを構える。
「グェァァァァ!」
突如、巨大な牙が目に留まる。
「でっかいイノシシ!?」
「に、取りついた濃い瘴気だな。」
「それってどういう……?」
「いいから仕留めろ。説明は後だ。」
見るとイノシシは、すぐそこまで迫っていた。
「わかった。電撃!」
一瞬の閃光の後、イノシシは横に倒れる。
*
しばらくして、巨大樹の森に差し掛かった。
「なあ、リリ。これ背負って歩くの、疲れるし熱いんだが。」
「あなたのステータス的に、疲れるのは気のせいだ。熱いのは我慢。働かざるもの食うべからずだ。」
我慢って……
大体このイノシシ倒したの俺なんだから、もうそれなりに働いてるだろ。
「あ、でもそろそろ暗くなるから、今日の寝床を探さないと。せっかく巨大樹がいっぱいあるし、丁度いい洞でも見つけて泊まるか。」
「おっ、いいねそれ。昨日は寒くて、リリにくっついちゃったからなぁ。」
「わた、しは別に嫌じゃなか、ったから、いい、よ。むしろ、あ、りがと、というか、」
あたふたしているリリは結構可愛いと思う。
ずっとこうならいいのに、いつもの、というか俺に対する態度がなあ。最近は改善気味ではあるけれども。多分。
「丁度いい洞か……」
周囲の巨大樹を見回してみる。
あの洞は……小さい。あの洞は……高すぎる。あの洞は……あ、モモンガが出てきた。どうやら巣みたいだ。
ロズ君……
いきなり、どこからともなく声がした。
「リリ、今呼んだか?」
「いや、呼んでないが。どうした?」
「声がしたんだよ。俺を呼ぶ声が。」
「トモザネ、その手の話はもうちょっと暗くなってからの方が盛り上がるよ?」
チェリはどうやら信じていない。怪談か何かだと思ったらしい。
「違うんだって!本当に呼ばれたんだよ!」
「お前、気絶のし過ぎでついに頭がおかしくなっちゃったのか?」
リリが憐みの表情を浮かべる。こいつが俺に感情を出すのは珍しいな……じゃなくて。
ロズ君……
また呼ばれた。
その声は、俺をどこかに連れていこうとしている気がした。
自称、意識だけ高い系小説作家こと、虹村萌前です。どうも。
ちなみに萌前はモマエって読みます。さあ、打ってみましょう。予測変換で「百合」って出てくるから。
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