第十三話 散々な目にあった。
今日は散々な目にあった。
「いやー、今日は楽しかったねー!」
チェリが、俺と正反対な意見で今日を締めくくろうとする。
「チェリ、残念だが俺はそうは思ってないからな。酷い目にあったと、そう思ってる。しばらくは大きい虫は見れなさそうだよ。」
星空の下、焚き火を囲みながら楽しく談笑といった感じである。昼間といい、天気だけ見てたら今日は確かにいい日だったのに。
「でも、今日は黒字じゃないかしら。乗り物を使わずに道中で魔物を倒そうってのは、結構いい案だったわね。」
そう言うチェリの楽し気な様子の根源は、絶対に金なんかじゃない。いったいどうしてそんなにも魔物が好きなのか。
「そろそろ焼けたんじゃないかな。はい、お姉ちゃん。骨に気をつけて。」
俺たちが餓蠅と戦ってる間に、リリは釣りをしていたらしい。釣り道具を持ってきた様子はないので、おそらく魔法で何とかしたのだろう。
俺の分の魚も十分に焼けたようなので、串刺しになったそれを抜く。
「ん、おいひい。」
「ありがと、お姉ちゃん。でも食べてから話すように。」
うん、確かに美味しい。
「それで、次の街へはどれくらいで着くんだ?」
焼き魚を食べ終えた後、そう聞く。
「次に行くのはアンドレイヌという街だ。ここから歩いて七日くらいだろうか。」
「人工の湖があってね、そこの貯水塔が可愛くて……」
「お姉ちゃん、湖のほうには多分行かない。」
「え、でも湖のほうでしょ?だって手紙には……」
「あっちにはよらない。というか本当に通過するだけだから、長居はしない。」
手紙?……まあいいや。どの道よらないみたいだし、関係ないか。
「まあ、とりあえず明日もまた歩かなきゃだから、もう寝ようか。」
*
「お姉ちゃん、起きて。」
目を覚ますとまた、きれいな青空。
……そうか。俺、旅に出て、
「……んにゃぁ……りりぃ……」
「ななな、何っ!?」
どうやらリリは先に起きていたらしい。膝の上でぐっすりのチェリを起こそうとしている。
「……もぉ、りり……その魔物は私の獲物……」
「お姉ちゃん、起きなさい。」
「にゃ!?私の魔物は!?」
「お姉ちゃん。朝ごはん作るから、残念だけど、膝の上から頭どけてくれないかな?残念だけど。」
「あ、ごめんリリ。私いつの間に膝枕なんか。」
チェリがひょいっと起き上がるとリリは、餌を取り上げられた子犬のように寂しそうな顔をする。俺に見せる無表情とは似ても似つかない。
「あ、謝らないでよ!べ、別に朝ごはん作るからどいてって言っただけで、膝枕がいやなわけじゃ、ぜんっぜんないんだからね!」
あら、真っ赤。リリって、チェリといるときだけ、そうでないときの無表情を取り返す勢いで表情が騒がしいよな。
今日もこんな二人と、旅をするらしいです。
こんな底辺web小説を読んでいただきありがとうございます。
大賞か何かに応募しようと思ってます。それっぽいキーワードがついてたら察してください。