第九話 何故だろう、少し懐かしい。
「この魔力……それにカタコトとはいえ会話能力がある……使い魔か?」
「おー、使い魔! 久しぶりに見たわー!」
チェリがはしゃぐ。はしゃぐのは魔物討伐の際はいつもだが、いつもに増してはしゃぐ。
「使い魔ってそんなにすごいのか?」
「使い魔ってのは魔人が直接作り出した魔物だ。あのレベルだと魔力の排泄に作られただけだろうが、それでも普通の魔物よりはずっと強い。」
「シンニュウシャ……ハイジョ……ォォォ!」
そうこうしている間に、使い魔ゴーレムがこちらに腕をぶん回してきた。
「こりゃあ奇跡使わないといけないかな……力の加護っ!」
チェリの体が一瞬光をまとったかと思うと、次の瞬間、その体は振りかざしたゴーレムの腕に突進し、拳でそれをバラバラに粉砕していた。
「すごいな、お前の姉さん。」
「当たり前だろう。だが、あれはまだ小手調べだ。」
「え……」
チェリの方を見てみると、粉砕したゴーレムの腕だったものが独りでに浮き上がり、元の腕の形に集まっていた。
「し、修復したぁっ!?」
「そりゃあ上位のゴーレムは再生するだろ。」
「え、じゃあどうやって倒せば……」
「そら、コアになってる魔石を壊すか、使い果たさせるかのどっちかだな。まあ、普通に考えて前者だろ。お前、コアに雷魔法打ってみろ。」
「えと、コアってどこ?」
「胸の真ん中が赤く光ってんだろ、そんくらい分かれ。」
「分かった……電撃!」
「グワワワワ……」
手元の想像以上の光に目がくらみ、照準がずれてしまう。だが閃光はゴーレムの頭部に当たり、結果的には苦しんでいる。
「もっとちゃんと狙え。あと折角魔力高いんだからもっと出力上げろ。あ、だが暴走させたら風俗。」
注文が多いな……
だが、今のでだいぶ容量を掴んだ。
「電撃!」
二回目ともなると、手元の光に驚くこともない。
「グァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛……」
急所に攻撃を受け、ゴーレムはよろける。
「うんどりゃぁっ!」
チェリが飛び上がり、胸を蹴ってとどめをさす。倒れたゴーレムの魔石を抜き取り、「とったどー!」とでも言いたげな笑みを浮かべながら紅柴色の石を持つ右手を掲げてこっちへ戻ってくる。
「なあ、使い魔の魔石って色が他と違うのか?」
「どういう意味です?」
「いや、今まで見た魔石はもうちょっと紫がかってたというか、光ってもいなかったというか……」
「……っ! お姉ちゃん! その魔物まだっ……」
突如リリの表情が代わり、急に叫んだかと思うと、チェリの後ろのゴーレムの残骸が浮き上がり、元の形へ修復し始めた。
「グォォォォッ!……シンニュウシャァァッ!……」
ゴーレムが拳を振り上げる。チェリは不意を付かれて驚いているのか、反撃が間に合いそうにない。
「おねーちゃぁぁぁぁんっ!」
「小爆発!」
突如、足元に熱と勢いを感じると共に、風を切り宙を舞い、ゴーレムの目前まで飛んでいた。
「炎拳!」
左手でゴーレムを殴る。
「雷剣撃!」
右手のロッドソードでゴーレムを縦に切り裂く。
「グァ゛ァ゛ァ゛……ァ゛ァ゛……ァ゛……」
僕はゴーレムが活動を静止したことを確認し、チェリさんの方に向く。
魔石はしっかり、紫色になっていた。
でもあのゴーレムの魔力……何故だろう、少し懐かしい。そんな感じがした。
「トモザネ! すごいじゃない!」
「え……」
俺は我に帰る。
背後には、数秒前まで形を保っていたゴーレムの残骸が転がる。
「あれ……俺がやったのか?」
「そうそう! ステータス高い割に技術が足りないって思ってたけど、やればできるじゃない!」
いつの間にかリリも近づく。そして口を開く。
「……あなた……誰ですか?」
……意識が遠のく。
また遅れました。あと、また当社比で文章量多いです。
チェリのことをリリって書いてた部分あってビビった……投稿して数分で気づいたからよかったですが。
ちゃんと見直してから投稿しないとです。