天候
ここのところ雨の日が多い。
夏の雨は嫌いじゃない。夏のギンギラ太陽は勘弁だからだ。
今日も雨である。
夏休みに入り、帰宅部の俺はヒマで仕方なかった。
彼女に会いたい。
そんな想いから、たまに学校に出向き、図書室で本を読んでいる。
もちろん彼女はいないことが多いが、週に二、三日は図書室で本を読んでいた。
「よっ‼ 久しぶり」
「あっ、うん」
彼女は読んでいる本を閉じて、俺に顔を向けた。
「最近、雨多くない? せっかく街に繰り出そうにも、これじゃあね」
「ほんと。天気予報だと、明日もあさっても雨だって。……私てるてる坊主を作っちゃったもん」
窓際に吊るされてるアレはあなたの仕業かい。
高校二年生になって、てるてる坊主って……、またアホ可愛いな、おい。
「こんちゃー‼ 占いはいかがですかぁ~?」
出たよ。出ましたよ、占い女。
相変わらず大きな数珠を首にかけて、……そんでスカート短いなまた。
「あらあらあら‼ ご両人‼ うちの占いのおかげで、これまた仲良くやってるようですね~‼」
「いや、ボチボチとか言ってたろ君」
「だからボチボチ相性が良いって言ったんですよ、ボチボチ‼」
どっちにもとれるような言い方をして、顧客を信用させるってわけだな。
こんな詐欺の常套句に引っかかるかっての。
「す、すごい。あなたは本物の占いの方なんですね‼ わたし尊敬します‼」
……そうですか。いや、いいと思いますよ。
君のそんなところも好きなのかもしれないし、うん。
「じゃあ、せっかくだし明日の天気でも占ってくれる?」
この子はどうせ何か占いをしないと気が済まないのだろうから、そうゆうときはこちらから無難な占いを提供してあげるのがよいだろう。そんでさっさと帰ってもらうが吉。
「任せたまえ~‼ うちにとってはとってもイージーな占いです‼」
そう言って占い女は窓際に向かって行った。
そして俺たちに背を向け、少しうつむいて、例のごとく唸り始めた。
数十秒後。
「――わかりました。明日は雨です‼」
……でしょうね。
さっき足跡を立てずにこっそり近づいて、うつむいてる君を後ろから覗き込んだら、スマホで天気予報を調べてたからね。
簡単な占いですよね、ええ。
「あなたの占いでもやっぱり雨なんですね……。わたしが今朝見た天気予報でもそう言ってたし、これはもうやっぱり明日は雨になりそうですね……」
彼女はひどく悲しそうにそう言って、うつむいた。
なぜそんなに明日雨が降ってほしくないのか。
――俺は少し考えてみる。
いや、本当はわかっているだろ。
明日何があるのかを考えればすぐわかるだろ。
明日は我らがサッカー部の県大会決勝戦。
つまりはそうゆうことだ。