光明
俺は浮かれていた。
実力テストの点数が平均点を大きく下回り、きつく親に怒られても問題なかった。
ハマッてたゲーム、ラスボス手前でセーブデータが消えたりしても問題なかった。
てか、スーファミだからそうゆうアクシデントは仕方ないし。
好きな子がいるというだけで浮かれるとか。
とても恥ずかしい。
「その本俺も読んだことある‼ 結構面白いよね」
「――ッ、う、うん」
放課後の図書室で俺は気さくに話しかける。
いきなり話し掛けられて、目をまん丸くしている彼女は図書委員でもあった。
いま図書室には俺と彼女だけだ。
「ごめんいきなり声かけて。普段あまり本読まないんだけど、それ読んだことあったから、つい興奮しちゃって」
半分嘘だ。
その本を読んだことがあるのは本当だけど。
「えっ、そうなんだ‼ 私この本大好きで、じ、実はもう何度も読んでるの」
『嘘の光明』というこの本は恋愛モノだ。
うろ覚えだけど、たしか主人公は嘘つきの少女で、ある日聖人君子の少年に出会う。
その少年によって少女は更生していき、恋に落ちるとかだったはず。
「主人公の女の子の心情がすごく共感できて、毎回感動しちゃうの」
話してみると、彼女はとてもおしゃべりだった。
好きなことの話になると話が止まらなくなるタイプだった。
「でもその主人公って嘘つきって設定だよね? あまり似ているようには見えないけど」
「……似てるよ」
自嘲気味にニコっと笑った彼女を見て、俺はさらに彼女のことを知りたくなった。
「どんなところが?」
「……ひみつ」
顔を背けて、クスリと笑う。
些細なやりとりで、これといって身のある会話ではなかったのかもしれない。
だけども俺はさらに彼女に惹かれていった。