あいかわらず絵は下手だった。
企業様からいただくお仕事には、おおよその場合「指示書」というものがあり、「こういう感じがいいです」ってあらかじめこまかく要望をまとめてくれています。
他の作品の画像なんかを参考に貼って「これに近い塗り方で」とか「これに近い構図で」とか、いろんなものを組み合わせて、欲しいものがどんなものかを伝えてくださいます。
僕達絵描きはそれを元に、「より相手が求めているであろうもの」を考えて制作をします。
で、このちびきゃら案件で通った出た素体を見て、僕は思わず
「指示書と全然ちがう」
と呟きました。
指示書を元に見比べると、技量は無いけれど、まだ僕の出した案のほうが近い。くらいの別物だったのです。
採用された素体は、等身くらいしか指示書と同じところが見当たりませんでした。
……けれど、その素体はとても可愛かった。
指示書とはまったく別物にもかかわらず、僕の出したものより圧倒的に可愛いちびきゃらの素体がそこにあったのです。
なるほど納得ですよ。
それを見たあとにもう一度自分の素体を見たら「なぜこれがいけると思ったのか?」という出来です。
「より相手が求めているであろうもの」。これが何より優先される世界。相手が何を求めているのかをより深く知り、理解して、かたちにする。ひとつ学びました。
素体制作は当たり前に落ちましたが、さすがにその採用された絵描きさんが1人で全部の仕事をできるわけなどないので、少し僕にも振ってもらえることになりました。
基本の流れとしては、
8頭身で描かれた設定画を元に、素体にあわせてちびキャラ化する(服装等のデフォルメ具合を調整して裸の素体に衣装や顔を描く)
→線をととのえて清書する
→決められた塗り方で色を塗る
→完成で1体終わる。
という流れです。
しかし、ここで問題が発生します。
僕は、絵が下手なんですよ。(忘れてはいけない)
線も綺麗に引けない。色も上手に塗れない。
最初の10体くらいはなんとか他の方のを見て頑張って修正なんかも何度もやらせていただいたのですが、効率が悪いので、作業は分業になりました。
僕の担当は8頭身をちびキャラにデザインしなおすところまで。線画と着色は他の人にやっていただくことに。
デザインはそんなに画力がいらなくて、どちらかというと発想が勝負という感じのお仕事です。
早速、学んだことを活かそうと思いました。
可愛いものは好きなので、はりきってたくさん制作させていただいていたら、いつの間にかメインで作業する人みたいな扱いにしていただいていて、1ヶ月半くらいで120体くらいのちびキャラをデザインしました。
それでもやっぱり、絵は上手くはなりませんでした。