現実は厳しかった。
2015年に入ったある日、壁サー子に、「そういえばこの前の同人誌即売会でイラストの会社から仕事しないかって声をかけられたんだけど、人手が足りないらしいから一緒にやらない?」と誘われました。
僕はそのときも、掲示板で知り合った会社さんから断続的にお仕事をいただいていたので、すでに絵でお金をいただくことに抵抗が無く、即答で同意しました。ついでにもう1人同じジャンルで仲良くなったSさんにも声をかけて、3人でその会社から依頼をうけるフリーランスの絵描きになりました。
その会社さん(仮にA社と呼びます)はいわゆる下請け会社さんで、営業さんがいろんなお仕事をもらってきてくれて、僕達に仕事をまわしてくださる、みたいなところでした。
そこで僕が最初にさせていただいたのは、スタンプの制作でした。
会社所属の絵描きさん達がそれぞれ案をたくさん出して、A社を通して大元の依頼主に渡してもらい、気に入られれば買われる、という。いわゆる、「社内コンペ形式」というものだと思います。
僕は「数打てばあたる」精神で、とにかく量を出しました。1セット4~8枚のを、3,40セットほど。
そうすると、1案だけ買っていただくことができました。
他の絵描きさん達がどれだけ出してどれだけ買われたのかは不明ですが、とりあえず僕、壁サー子、Sさんの3人のなかで買ってもらえたのは僕の1案だけでした。
その状況で、「僕スタンプ向いてる気がする」と考えた僕は、また別のところでちょうど開催されていた「スタンプイラストコンペ」という、公募のようなものに応募しました。
そして光栄なことに入賞、賞金をいただきました。
その翌月には、とあるゲームのちびキャラのデザインのお仕事がありました。
守秘義務があるので詳しいことは言えないのですが、概要だけ説明すると、8頭身の人物の絵を、ちびキャラにデフォルメするというお仕事でした。そのちびキャラの「素体」のデザイン案をだしてください、というお話でした。
素体とは。
簡単にいうと、「裸の絵」みたいなものです。服を着ていないきせかえ人形とでも言いますか。1つのゲームのなかでキャラクターの外見が乖離しすぎてはいけないので、統一するために、まず全ての元になる「基本のかたち」をつくる。それが素体です。
スタンプの件があり、再び「これはいける」状態になっていた僕は、「これもいける」という自信の元に頑張って素体を制作。
で、当たり前に、落ちました。
そんなにうまく事が運ぶわけないです。現実は厳しいのです。
続く。